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2019-09

Horizon 1 - 2016.07.26 Tue

 イラストはサムネイルでアップしております。
 大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。
 

horizon1.jpg

滅多に二次創作はしませんが…と、言うかこのブログでは初めてなんですが、アニメ「ジョーカー・ゲーム」に嵌ったので、記念に書いてみました。
一応、田崎視点で、あまたざですけど、BL臭は薄いです。
好みでは無かったらすみません。
前後編の予定です。
それでは、どうぞ。


Horizon

田崎が三好の死を知ったのは、欧州から帰国した結城中佐からの呼び出しの時だった。
D機関本部には田崎と神永、そして任務を終え、本部に帰り着いたばかりの甘利が居た。
三人が並んで中佐から具体的な三好の死に様を聞かされた時、田崎は顔には出さなかったが、自分でも驚くほどの衝撃を受けていた。
隣に立つ神永が、顔色一つ変えずに「三好は任務を遂行したのですね」と、平然と結城中佐に問うた。
中佐は黙って一度頷いた。
そして、田崎は後に続く言葉を持たなかった。

結城中佐の執務室を出た直後、甘利が「大丈夫か?」と、田崎の肩を叩きながら一言だけ声を掛けたが、田崎は当然のように「別に」と、返しただけだった。

スパイが任務により命の危険に晒され、もしくは「死ぬ」事など、珍しくは無い。況や、このご時世では尚の事、世界中どこにいても命の保証などあったものではない。だから三好の死も別段驚くものではないはずだ。
だが、「D機関」の基本理念は「死ぬな。殺すな」だった。
選ばれたエリートであるD機関員の中でも、飛びぬけて優秀だった三好の死は、田崎には簡単に受け入れかねる知らせだった。

その夜、本部の食堂で田崎、甘利、神永の三人は、三好を偲びながら飲んだ。
スパイ養成所で過ごした過去を懐かしみ、その時から、三年しか経っていない現実に驚き、そして刻々と変わっていく世界の状況に自分たちの任務が益々困難を極めるだろう未来に、頭を抱えた。
と、言っても、彼らは危険な状況を楽しむコツを知っている。
つまり危機が迫るほどに「腕が鳴る」わけだ。

問題は上が馬鹿な奴らしかいないって事だ!

と、神永がストレートのスコッチウィスキーを飲み干しながら喚いた。

おい、神永。声がでかい。どこに陸軍の諜報機関が聞き耳を立てているか、わからんぞ。

と、甘利。

俺は明日から、イタリア行きだ。三国間条約など、日本に何の得があるのかと思うがね。

いいじゃないか。イタリア女は陽気でいいぞ。

他人事だと思って、いい加減な事を言いやがる。

まあ、この状況じゃ、いつ日本がアメリカに宣戦してもおかしくない。

まさか。軍部もそこまで馬鹿じゃないだろう。

窮鼠猫を咬む…ってねえ。どうなるかわからんよ。

そう言えば、田崎の次の任務地は…シンガポールか?

何故わかる?

顔に書いてあるよ。おまえは自分で思うより、ポーカーフェイスじゃない。

昔から、甘利は人の顔を読むのだけは、上等だよな。

だけとは失礼だね。そういう神永は昔と違って、すっかり温厚になったものだ。

温厚と言うか…諦めるしかない事象が多すぎてね。いつ三好の二の舞になるかと考えると…頭が痛むわ。

三好は完璧なスパイマスターとして、誰にも気づかれずに死んでいった。簡単に真似できるもんじゃないさ。

死んで褒められても、三好が喜ぶものか。スパイだって死んだらおしまいなんだよっ!くそっ!なんで死んだんだよっ!三好の奴…ふざけるな!

幾つかの罵倒を繰り返した後、酔いつぶれた神永はテーブルに突っ伏してしまった。

珍しいものだ。

と、田崎は思う。
「D機関」の者たちは相当に酒には強く、演技ならともかく、本気で酔いつぶれたりは絶対にしない。

三好の死が、神永を本気で酔わせたとするならば…

中佐の前での神永が、芝居だったというわけだ。
他人事じゃないけどな。

田崎と甘利は神永を抱え、寝室へ運んだ。
上着と靴を脱がせ、ベッドに寝かせると、神永はすぐに気持ちの良い寝息を立て始めた。その様子を眺めたふたりは、互いに顔を見合わせ、苦笑した。

共同の寝室は養成期間中と変わらず、十のベッドが置いてあるだけの殺風景な場所だ。
一年もの間、住み続けていたと言うのに、自分の趣味趣向で彩りを添えようとする者は誰も居なかった。
同じ訓練をし、同じ釜の飯を食っていても、皆、自分の趣向さえ見せることはしなかった。「何事にもとらわれるな」とは、孤独に生きる事なのか…と、田崎は幾度となく疑問視したものだが、それについては、誰とも論ずる事は無かった。
他人に何かを相談することは、自尊心を傷つけることだと、いつかの三好が言っていた。

背広を脱ぎ、夜着に着替えようとする甘利を横目に、田崎は「少し酔いを覚ましてくるよ」と、ひとり部屋を出た。

狭い階段を昇り、屋上へ出ると、十一月の乾っ風が酔った頬を一瞬で凍らせた。
真正面を見据えると、金星と火星が低い南の空に一際輝いてる。

田崎は煙草に火を付けた。

間もなく夜明けだな。

音もなく田崎の背後から、甘利の声が響いた。

なんだ。寝たんじゃなかったのか。

三好の事を考え始めると、眠れそうもないのさ。

貴様でも…そうなのか?

当然だ。仲間が死んだんだからな。

そう言って、柵にもたれながら煙草に火を付ける甘利を、田崎はじっと見つめた。




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