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2019-09

「彼方の海より…」 メトネ日記 6 - 2009.02.10 Tue

メトネ日記 6

浴室に連れてこられたのはいいが、とてもゆっくり身体を癒すことなど出来るわけも無く、誰かが入ってこないかと不安になりながら、入ってこられても抗うことも出来ない自分の非力さも思い相まって、そそくさと浴槽から出る。
部屋着も揃えてあったが、私は着ていた自分の服を着た。
この世界のものに袖を通すのは、こんな身になっても憚われた。

リュウの部屋に案内され、その殺風景な設えに少し面食らいながら、辺りを伺っていると、ラシュマーと呼ばれた魔族が、銀のトレイを持って現れた。
「食事だ。これを食べてリュウが来るまで、ここにいなさい」
「…いりません」
「うむ、人間は一日に2、3食摂るものと見知っていたが、おまえは腹が減らない性質なのか?」
「こんな目に合わされて…食べる気になど…ならない」
「困った貢物だね。しかし…我が主も変わり種に手を付けられたか…物好きなのは親譲りなのか?それにしても服も着替えていないとは…人間は汚いのも平気なのか?…ちょっと近寄りたくないな…」
ブツブツと独り言を呟くラシュマーに何故か親しみを覚えた。
緊張が薄れたのと食べ物の匂いの所為か、私のお腹が音を鳴らした。
「…腹が減っているんなら、素直に言えばいいのに」
「言えない場合もあります」
「この場で強がりは意味がない。おまえは自分の立場をよくよく考えるんだね」
「…」
「おまえの為にひとつ言っておくがリュウを怒らせるなよ。顔はあんなだが、気が荒くて短い」
「知ってる。あんな悪魔か死神みたいな奴を、あなた達は主として認めているなんて、私には信じられない」
「そこそこの世界で者の名は違うものだよ。おまえ達が信仰している天上の神に邪悪な死神はいないのか?彼等はいつもおまえたちを身を挺して守ってくれるか?」
「…」
「リュウ・エリアードはこの魔界の秩序を安寧とする為に、戦っているだけだ」
「…嘘だ」
「ここに居ればいずれわかるだろうが…あの魔宝珠が無くなった所為で、色々と面倒になったのは確かだし、それを人間界から取り戻し得たのはリュウ・エリアードだけだ」
その所為で私の国の何の罪もない人々が命を失った。
その事実はあなた達には何も関係していないと言うのか。
大事なものを取り戻したからあの悪魔の所業は善だと言うのか…

「おまえ達人間がリュウ・エリアードをどう思おうと構わないが、私達は彼をこう呼ぶのさ。
『魔界の守護者』プレシャスハイガーディアンと」


ラシュマーが去ってひとり残された私は、冷めた食事を取った。悔しいが冷めているにも関わらず、その味は気持ちのこもった優しい味がして、驚いた。
驚いたのはこれだけじゃない。食器にも調度品にも派手さは微塵もないが、すべて調和と安定さに満ちている。
あの男から感じる印象とは全く違うものだ。
それでも怖い。
私は…あのリュウ・エリアードの貢物としてここにいる。
どうなってしまうのだろう。
あの男に酷い目に合わされるのだろうか…
それは、どうやっても抗えない運命なのだろうか…

天蓋付きのベッドに身体を預けた。
優しい肌合いと水面にも似た淡く青い織柄が、昔泳いだレミクスの海を思い出させた。

兄上はどうなされているだろうか…
私を心配して臥せっておられないだろうか…
国を出る時、兄上から頂いた藍晶石の首飾りを手に取った。
兄上が神官長に就かれる折に、前神官長より賜ったものと聞いている。
一時も肌身離さず身に着け、大事にされていた。

天上の神々の御加護があるようにと、兄は昔から側近の者達にだれかれ構わず護符を贈る方だったけれど…困った顔をしながらも、皆一応に兄上のそういう様を愛していた。

寒い日も嵐の夜もひとつのベッドで兄様と手を繋いで眠った幼い頃。
『メトネ、大丈夫だよ。私が傍にいるからね』
彼の声が今でも聞こえてくるようだ。

今はもうエーギルの傍にはユエが居て、私の眠る場所はなくなったけれど…エーギルは変わらず私を愛してくれた。

…戻れないのだ。あの場所には。
そう思うと涙が溢れ、止まらなくなった。

もう…誰も私を慰めてくれる人はいないのだ…








すんません、何も起きませんでした~(^◇^)
これは果たしてBLなのか?ジャンルにも不信感が漂ってます~

こういうシーンは大事に描いていきたい性質なのですが、昔よりは言葉を簡素にしています。
あんまりごちゃごちゃ説明してたら先に進めませんからね。



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● COMMENT ●

こういう語り好きですよ~
こんなシーンがあるからこそ山場で盛り上がるのだと思います。
納得のいくまでじっくり描写してほしいですね。
なにか引き込まれます♪

ありがとう!ワーイヽ(゚∀゚)メ((゚∀゚)ノワーイ

状況説明とか、細部の描写とかかなり簡略してます。そこに力入れすぎてもネットの小説としては成立しない気もして…

細かく説明するより、読み手に想像させる…そういう空間も必要なのかな~とか、書きながら色々試行錯誤ですよ(^_^;)

ゆっくりですが、前に進んでいけたらいいですね~
ふたりが出来上がっても色々なエピソードを入れるべきなのか…そういう事も考えつつ…

最後は決めているので、そこまで辿り着きたいんですが、絵も描きたいので、毎日更新出来ないですね~

最後までお付き合い願えたら幸いです。

いい、いいですよー

とってもいいペースで進んでいると思います、メトネの乱れる気持ちと周囲の妙に落ち着いた状況が臨場感あります。
出された食事とか、結局おいしく食べちゃうメトネ、可愛いよー。

アドさん

ありがとうございます。

本当に他の方々の小説をちらと伺ったら、濃厚なシーンは当たり前に書かれているのに、うちのは本当に何もなくて、恐縮です。
確かにHシーンというのは、引き込まれますからね~

私はすべて頭に浮かんだ映像を文字にしているので、本当は細かいところ、食器のひとつひとつの形や色彩、紋様とか部屋の様子などこと細かに書きたいんですが、多分そういうのは望んでないだろうと略していますね。
漫画だったらひとつの絵で表せるのにと思いますが、これもなかなかの画力が必要ですので易々とはいきませんがね~

今後もよろしくです( ^^) _旦~~


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