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2019-11

宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 6 - 2009.02.27 Fri

6.
 八月も半ばで、世の中お盆の帰省で街も少し閑散とした頃、俺は隣町の書店へ買い物に出向いた。
 
 二階の輸入書の写真コーナーで目的の本を探し出す。
 西欧を中心とした小さな教会ばかりのフォト集で、どうしても見たい建物があった。

 教会はゴシック建築の壮麗さが見ごたえのあるものだが、地方によって、建築方法も様式も変わってくる。キリスト教の教会と言っても宗派により独自の多様性に満ちたものになっていてそれぞれに面白いんだ。
 俺はロマネスク様式からゴシックに変わる境目のクリアストーリや内陣に興味があり、その諸々の時代の貴重な写真集を探していた。

 輸入書物なんて、人気のない場所だ。
 誰もいない静けさの中、ぱらぱらとページを捲っていると、後ろから「あっ」という声がした。
 振り向くと…なんと!水川青弥が目をぱちぱちしながら立っている。
「ミナ…川…何?おまえもここに用?」
「う、うん。え…と、…そ、その本…」
「これ?」俺は持っていた写真集を閉じて水川の目の前に差し出す。
「やっぱりこれだ…」
「おまえが探してたの?」
「うん。この写真家のフォト好きなんだよ」
「教会の写真だよ?」
「うん、でもなんか心象風景ぽいでしょう。彼の撮り方はいつも何かを観る者に感じさせるんだよね」
 おい、結構ロマンチストじゃないか。益々俺好み。

 待ち焦がれた物に再会するみたいに上気する水川を見て、いいアイデアが浮かんだ。
 思わず口端が上がる。
 この機を逃すバカなんているかよ。
 こういう運命的な接点は遺憾無く利用しなきゃならない。だろ?
「欲しい?」
「え?ああ…この本?」
「何と思ったよ」
「べ、別に…宿禰が先に見つけたんだから、おまえが買えばいい。おれは他で探すから」
 本を閉じ、俺に無理矢理押し付けて踵を返す水川の腕を俺は掴んだ。
 …細い…いや、俺もかわらんから人のことは言えねえんだが。
「待てよ。水川」
「…」
 掴んだ先を睨むから、慌てて離した。
 まだスキンシップは早かったか…
「これ譲るから、おまえが見た後、俺に見せてくれない」
「え?」
「ゆっくりでいいよ。待ってないから。どう?」
「でもそれじゃあ、宿禰に悪い」
「そう思うなら昼飯付き合ってよ。俺まだ食ってないんだ」
「…いいよ。おれも食べてない」
「じゃあ、決まりな」

 俺たちは駅の近くの店で膝を突き合わせてそう美味くもないファーストフードを食べた。
 お盆は実家に帰るのかとか、寮は楽しいのかとか様子を伺うが、水川は短い返事だけで、どうも会話が長続きしない。
 俺に視線を合わせようともしないし、このままじゃ埒が明かない。
「水川」
「なに?」
「俺の事、嫌い?」
「え?…嫌いじゃないよ」
「そう?俺、避けられてる気がする」
「そ、そんな事ない」
「じゃあ…友達にならない?」
 まずは友達からでいいだろ?
 俺の方は早急にでもそういう関係を望んでいないわけではないが、こいつはどうも経験は無いと見た。
 いきなり恋人として付き合ってくれと言っても戸惑うばかりだろう。
「と、友達って?」
「あの温室、俺達だけの秘密にしてさ、色んな話でもしねえかって思って」
「色んな?」
「例えば…この写真集の話とか…どう?」
「…いいけど」
「じゃあ決まりな。来週は…おまえ実家に帰るんだったな。じゃあその後、金曜の夕方、どうかな?」
「…いいけど」
「ミナから借りたタオルも返さなきゃな」
「み…な?」
「ごめん、嫌だった?」
「いや、いいけど」
「じゃあ、俺の事リンって呼んでよ」
「え?」
「凛一だからリンだよ。言ってみろよ」
「…り、ん」
「そう、ミナはいい奴だね」
「…なんかバカにされてる気がする。宿禰は…いつも誰にでもそうなのか?」
 お?それって俺に対する独占欲の兆し?面白い。確かめてやる。
「…」
「なに?」
「リンってゆえよ」
「…ばかばかしい。おれ帰る」
 その反応は計算済み。ミナの行動は案外わかりやすいかも。

「ミナ、約束忘れるなよ」
「…気が向いたらね」
「待ってる」と、片手を振る俺を、ミナは少し頬を赤くして俺を見つめ、そのまま階段を降りていく。
 ほら、ミナって呼ばれるのも嫌がってない。強い拒否も見当たらない。
 これはもしかしてもしかしたら脈あり?

 幸いなるかな この身を信じ 故に愛する者を知ること 光をもってその罪を許さんとす







5へ / 7へ

● COMMENT ●

幸いなるかな・・・リンーっ!!

なんて、なんて調子がいいの?計算高いの~?リンイチ~!!
「色男」で口がうまくて、頭が切れる。
これを受けて立つ朔田さん凄い!!

アドさん

書いてるうちになんだかリンが勝手に動いてしまってました。
でも彼は色んな経験をしてるから、普通の高校一年より大人だと思いますね。
初めのイメージとしては「トー./マの/心臓」のオ/ス/カーを意識していたんですが、リンの方が全然お茶らけていますね。
聖書は興味ないので、幸いなるかな~は勝手に書いてます。
なんでも勝手の妄想ですよwww

お疲れさま~

リンは完全に我が道いっちゃってますね~。
これを受けて書くのか…。が、がんばります…。
でも、4月頭くらいまでは無理なので、すいませんがそれまで
待っててもらえますか? ホントごめんなさい~!!

それにしてもサイさんは宗教建築や宗教美術にも詳しそうですね。
あ、九州だからかな? 
私も学校で西洋美術はちょろっと勉強しましたが、
どちらかというと日本の神社仏閣とか仏像とかのほうが興味あります。
ちなみに私が一番好きなのは奈良薬師寺の日光・月光菩薩立像です!
あれで妄想するんですから罰当たりな女です。
だって、日光と月光すごくセクシーなんだもん!
あんなの拝んでたらますます煩悩が膨らむって(笑)。

sakutaさん

わかりました~いやこの後も書いて良かったんだけど、一旦この編は終わりにして新しい編にしたかったので。
4月まで無理なら、じゃあ3月はこの後から二学期が始まるくだりまで私が続けましょう。
ちょっとした問題が起きてくるあたり…

仏像は好きですよ。広隆寺の半跏思惟像は色っぽいですね~奈良も一杯見たな~阿修羅臓も良かったけど、とにかく仏像全部が艶かしいんだよね~男か!というぐらいに細くて色っぽくてさ~
私は望都さんの「百億の昼/と千億の夜」が好きだったので、あの世界の方々が…とか思いつつみるんですね~
でも日本の仏教建築も好きですね~兎に角流線形だったり尖っているのが好きwww
宗教美術?…しらんよ、全然wwwルネサンスの絵はかなり好物だけどね。

ほー。

引用は聖書じゃなさそうだから、詩かと思いました~~。当方クリスチャンですので聖書は専門家よん。(しかし、今日は神社に梅を観に行きました。わは。)
しばらくリンの視点が続くのですね。
ここまでは朔田さんのお話の裏を埋める作業だったのでしょ?
今度は銅貨さんのリードで、あとから朔田さんが埋めていく側になるんですよね?
ナイス・バトン・リレー!
リンは策士っぽいので、今後のミナが心配です~~。
とか言いつつ、「頑張れリン!」と応援態勢の私です。

おふくさん

クリスチャンですか?良かった~変なこと書かなくて。
いや~「キリストなんざゲイの権化だろ?12人の弟子とっかえひっかえ好きにできて…あれじゃあ磔も仕方ないね~」とかいう台詞を入れようか~とか思ってました~Σ(^∀^;)

おふくさん達もリレー小説やってましたよね。読んでないですが<(_ _)>
私はリレー漫画も小説もやったことはあるのですが、持ちキャラを決めてその視点で書くのは初めてなので、楽しいですね~
さくさんとはおおざっぱなことだけで、前もってお互いの内容はしりません。ブログにアップして初めてお互いの文を読むということです。
何がでてくるかワクワクものですよ。
この先の出来事も決めてないです。
PCに向かう時に浮かぶ話が次回の話になりますね。
応援ありがとうございす。
3月もよろしくお願いします。

わはは。

書かなくて良かったって。書いてるし。(笑)
十二弟子は確かに男ばっかりだけど、女性のお弟子さんが多いことでも知られていて、ミュージカルや映画でマリアとの恋愛説も有名ですからねえ。
もしか、リンがそんなセリフを言ったとしたら、それはめっちゃゲイ視点であって、カミングアウトそのものって解釈になるかなあ。
リレー小説はリレー走者によってお話のトーンがまるっきり変わるので、それはそれで楽しいけど、作品の完成度から論じたら、どうしても「お遊び」「お祭り」になってしまう。
持ちキャラを決めて、というスタイルは、その点をクリアできるので、とてもいいアイディアだと思います~~~。
でもワクワク感は一緒ですね~~~。個人作業のお話書きを共同作業でやれるのは、やっぱ楽しい♪

おふくさん

いやいや凛じゃなくて先輩に言わそうと思ったんですよ。さずがの高1でそこまで言われたら、主もおみのがしにならないと…www
イエスとヨハネは間違いないだろうと…高校生の頃から思っていた自分ですが…
ヨハネ好物なんですよ~自分は~(^◇^)
だってかわいいんだもん~ミナに通じるとこあるかもな。つーことはイエスは凛か…あそこまでナルじゃねえし~

凛が滅茶苦茶であればあるほど、ミナの普通さが前に出てくると思うんですが…文章も正統派のさくさんと適当な自分とで変に面白いかもな~と思っていますが…果たしていかがあいなりますでしょうか~


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