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2019-09

Simple 7 - 2008.10.27 Mon

一週間以上、アパートに篭ったままの俺を見かねて、アキラが様子を伺いに来てくれた。
時々、俺は創作に入ると引きこもり状態になっちまうから、他のメンバーに迷惑をかける。
埃のたまった部屋の掃除と、まともな料理にありつけていない俺の為に、今、アキラが昼飯を作ってくれている。
「…ったくさぁ、世の中はクリスマス一色だってのにさ。ハルくんもそろそろ人間界に戻れば?」
「…ん~」そっか、クリスマスって事はミナトの誕生日が近いって事だな。…何しようかな、プレゼント…
「ほら、出来たよ。食べな、ハル」
「サンキュ。いただきます」両手を合わせ頭を下げて飯にありつく。
「…んまいっ!」
「なっ、美味いだろ?冷凍庫にあった鮭を使っての、アキラ特製シャケチャーハンなんですよ」
「そーゆー使い道あるんだ、鮭に…」
今度ミナトに作ってやろ…
「なあ、アキラ。後でレシピ教えてくれな」
「何?彼女にでも作ってやるの?それとも作らせるのか」
「…」
「つーかさぁ、その彼女に頼めば?掃除とか料理とか全部さぁ」
「…あいつも忙しいつーか…」掃除はなんとかなるけど、料理の方はさぁ…俺より酷いかもしんねぇし…
「どんな子なんだろうね、おまえの彼女」
「…」どんな子ってさ…俺らの幼馴染みのミナトだよ。
「そのうち紹介してよ」
「…」紹介するも何も…お前も幼稚園の頃から知ってるミナトなんだ…けどな…
「楽しみにしてるよ」
「…」いやいや、楽しみにされてもなぁ…あのミナトだし…
驚くだろうな、恋人がミナトって知ったら…
なんか不思議な気がしていた。目の前のこいつはずっと一緒にいて、ミナトと同じくらい大事な友人なのに、なんでこいつじゃなくてミナトなんだろう。

ミナトとこいつの差は何なんだろう。
…わかっている。そんな事。だって…だって、それはミナトだから…あいつだから俺は好きなんだ。そんなの他に言いようがねぇよ。
ミナトが俺の側に居てくれて、ちゃんと俺の存在を受け止めてくれていて、笑ってくれる。それだけで…なんだろ。心安らげる。何処に行っても還ってこれるって…そう思わせてくれるミナトの存在。物凄い大事な事じゃねぇ?そういうのって…
あいつが居てくれたおかげでどれだけ…どれだけ荒んだ俺の心を癒してくれたかわかりゃしねぇよ。どんなにこの世の中のすべてに絶望しても、尖った見方をしたりしても、ミナトの中に、ミナトと一緒に、救いや光を見出して、それを信じて、俺は俺自身を見失わずに生きてこられたんだ。

ミナトの匂いを嗅いだ気がした。
目を瞑っても開けても、ミナトの笑った顔が浮かんで仕方なかった。
ミナトに会いたい…と、願った。

アキラが帰った後、居ても立ってもいられず、携帯に手を伸ばす。
急いでミナトに掛ける。呼び出し音の間、ふと我に帰って…しまった、まだ授業終ってなかったかもしんない…と、思って切ろうとした…瞬間、声が聞こえた。
『もしもし、ハル?』
「ミナト?」
『ん』
「ごめん、授業中だった?」
『んーん、今、終ったとこ、で、帰るとこ、なんだけど…なんか用?』
「用はねぇ…けど」
『…ハルくん?』
「会いてぇの、ミナトに」
『…』
「すげぇ会いたくて…なんかわかんねぇけど、おまえの顔見たいの」
『…わかった。今からそっち行くね』
「うん」
『晩飯のおかずでも買ってこようか。何がいい?』
「ミナト」
『なぁに?』
「あんな…おかずとかいいから…今すぐ…会いてぇの…」
『…わかった。すぐ行くから待っててよ』早口で言い切って、ミナトが通話を切った。
…語尾の方、なんか切羽詰ってた気がするけど…それは俺の所為?

三十分後、チャイムも鳴らさずに乱暴にドアが開けられた。ミナトだ。息を切らしてハアハアしてる。
「おい、どした?」
「ど、どしたって…お、おまえ…あんな声出すから…俺…なんかあったんじゃないかって…心配で…」
「ご、ごめん。焦らせた?そんなつもりじゃなかった、わりぃ」
「駅から…猛ダッシュで…も…なん…バカッ!」
「ゴメン…ごめんね」
「心配して…損したっ!」
息を切らしながら横向いて不貞腐れるミナトを見て、悪いと思うけれど、嬉しくてしかたねぇのは隠せそうもない。

「ごめん、ミナト。怒んないで」
「…」
「ほんとにおまえに会いたかったの」
上着を着たままのミナトを抱きしめれば、ひんやりとした冷たいコートの感触。少し汗を掻いたミナトの額を手で拭いてやってキスをする。
「すげぇ会いたくて…ね」
「バカ」
「怒んなって」
「怒ってねーもん」
「ホントに?」
「ん…でも晩飯おまえのおごりな」
「ん…ミナト」
「ん?」
「俺さ、お前の事、すげぇ、好きかも」
「…バカだ、ハル…もう…」呆れたように愚痴って…そんな風に笑って…そして、優しいキスを返してくれるんだね。
…もう、たまんなく愛しくて…

ずっと前、おまえが「運命の人」ならって…思い描いたりした事があったよ。何度も否定したけれど…だけど、今はもう、そんな夢は見なくていいって事だ。
然るに、本当に、これは「運命の恋」って奴なんだろ?





メンバーは4人で同級生で21歳ぐらいで、メジャーデビューしたばっかで…そんな感じ。


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