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2019-09

宿禰凛一編 「密やかな恋のはじまり」 9 - 2009.03.07 Sat

9.
 慧一といるのは心休まる。
 父親は外国で単身赴任、母親は早くに亡くなっていたから、8つ違いの姉、梓と9つ違いの兄、慧一が俺の親がわりだった。
 俺は小さい頃、夜中によく泣く子だったから、ふたりに挟まれて添い寝してもらっててさ。
 よく考えりゃかなりの甘ったれだったよ。
 大学が決まった慧一が家を離れることになった時、俺は大泣きした。本当に悲しかったから。
 慧一がゲイだと知っても俺も姉貴も偏見とか無かった。
 慧一は俺にとって綺麗で頭が良くて頼れる自慢の兄だから。
 兄貴が家を出た後、俺は姉とふたりで暮らした。
 梓は…一風変わった人で、彼女といると現実感のない世界に入り込んでいる気がした。

「凛は早く大人にならなきゃダメだよ」「なんで?」「凛は…綺麗だから色々苦労すると思うよ」「梓だって綺麗じゃん」「凛はね、ちょっと違う綺麗さだもん」「ふーん、俺にはわかんないけど」「だから変な人に騙されないように早く大人になって頂戴ね」「俺、大人になったら梓の騎士になって悪人から守ってやるよ」「ふふ…王子様の役は凛には不向きだね」「どうして?」「凛は…塔に閉じ込められたお姫様だもん」「え~ヤダよ。俺、男だし」「でも素敵な王子さまが助けに来るのよ?いいじゃない」「いやだよ。俺は戦って好きな子をものにしたいもの」「バカ…お姫様だって戦うのよ。好きな人の為に命がけで…」

 姉は寓話的な話を俺に読み聞かせた。俺の妄想好きは姉貴譲りだ。
 俺の骨格の大方の気質は姉貴によるものだと思う。姉貴は俺の師であり、恋人のような存在だった。
 だから…梓が車の事故で死んだ時、俺は…あまりに悲しくて苦しくて…死んでしまいたかった。
 慧一がいなければ、自殺していたかも知れない。

 俺は少なくとも慧一に二度は命を救ってもらっている。
 生きのびる気力と意味を教えてくれたのは慧一だ。
 彼を失ったら今の俺は生きてはいけないかもしれない。
 それでも、いつかは兄の手を離して、自分の足で歩いて行かなければならないことはわかっているつもりだ。


 夜中近くに俺の携帯のメールが鳴った。
 水川からだった。
 携帯番号と「今日はごめん。友達としてこれからもよろしく」と添えられた短いメールだった。
 …教えてもらわない方がよっぽどマシじゃないか…

 そして、俺はあの温室に行くのを止めた。


 新学期が始まっても俺は温室には行かなかった。
 理由はふたつある。
 自分の頭を冷やすのと、会わないことで水川が俺に対して何かアプローチを仕掛けてこないだろうかだとか…
 …まだどっかで期待しているなんて俺も大概諦めが悪い。

 たまに廊下で顔を合わせたりすると、一応俺は友達として手を振ったり、一言かけたりするが、水川は黙ったまま俺の顔を見るだけだった。
 ミナが何を考えているのか俺にはさっぱりだ。


 二日後にシカゴに帰る慧一の餞別を探しに一人街に出て、慧が気に入るようなセーターを買った。
 朝から何も食ってなかったので、昼飯でもと前に慧一と行った事がある洋食屋に向かった。
 お昼時より少し前だったのもあって混んではいなかったが、一人だったからカウンターに座り、ランチを頼む。
 何気に辺りを見回した時、柱の向こうに見たような服を目に留めた。
 よく見ると…慧一が店内の隅のテーブルに座っていた。
 なんだよ、兄貴もいたのかよ。やっぱり兄弟だよな。他に店は沢山あるのに同じ店に来るなんて。と、兄のところに向かった。

「慧も来てたの?丁度良かった。俺、奢ってもら…」
 テーブルに近づいた俺はギクリとした。
 カウンターからは見えていなかったが、慧一には連れがいたんだ。
「…こんなところを見られるとは…如何なる錯乱に掠められているのか…」と、眼鏡の奥が嗤った。

 キリストの言葉がよぎった。
 …汝が為すことを速やかに為せ…
 俺が命じてやる。
 …いっぺん死にやがれ!藤宮紫乃!



                            


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先生!こんなとこに!!

今までのリンの生い立ち、兄への思い・・姉への悲しみ・・・ミナとの確執・・・切ないなぁと、思ってたら・・・出た!!藤宮教諭・・・どして??

内緒さん

紫乃お気に入りですか~(*^_^*)
では明日は色気たっぷりの紫乃のイラでもアップしますよ。
惚れるなよ~(^◇^)

アドさん

どうして?…次を読めばわかりますよ。
ああ、凛のモデルがひとりいた~
あれだ!アッシュ・リンクスだ。
どっかであのイメージがあるんだ。
あんな金髪じゃないけどね。

おお~~。

どんどんお話が進んでる♪
展開も早くて目が離せないよ!わくわく。
ミナが何を考えてるのか全く分からないのも気になって仕方ないし~~~。

おふく

わくわくしてくれてありがと~!
まだ次は全然書いてませんが~まあ、いつもの事です(^◇^)
ある程度の先だけは決めて、でもその場面のノリでどんどん替わりますね~
手の甲に書いたのも、書きながら浮かんだし、姉との会話とか、もうアドリブもいいとこですよ。
投稿したりする作品ならこんなデタラメじゃいけないんでしょうが、ブログ物語だから、雰囲気でいけるとこまでいってみようと思います。
次回もよろしくです。


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