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2019-11

Simple 9 - 2008.10.27 Mon

朝からあまり体調は良くなかったけれど、ライブがあったから我慢してた。それで、なんとかライブは乗り切って、急いで楽屋に戻った…ところまでは良かったんだけど…
俺の様子に慌てたハルの「どうした、ミナト」って声を聞いた途端、軽く意識が飛んだ。
…貧血だ。
気を失ったのは二、三秒だったとは思うけど、気がついた時は、ハルに凭れたまま、抱き合う形になってた。
「大丈夫か、ミナト」
「…ん、気持ち悪い」
「顔色悪い…風邪?熱あるんかな」額に手の平を当て、そして唇を当てて伺うハルを、普段なら抵抗するけれど、そんな力は無かった。
「…熱はないな。とにかく、横になって休めよ」
「ん…」と、言いながらも、抱き合ったままハルから離れなかったのは、完全に俺の方だった。

「おつかれ~…」と、大声で入ってくる声が聞こえた。
アキラだ。ヤバイと思ったけど、身体が全く動きそうもなかった。
「ミナト、おまえ、大丈夫か?…」カイの声もした。…そして、暫くの沈黙。この態勢が、視角に入ったのだろう。俺は背中を向けてて、ふたりの様子は伺いようも無いが…次の言葉が怖い。
「お、おまえら…で、出来てたのかよっ!」アキラが叫んだ。
…そんな大声で言わなくても…
冗句のひとつでも言って、この場を凌げれば良かったんだけど、身体がきつくてビクともしねぇし、気分は最悪だし…冗談どころが、声すら出ねぇよ…
ハル、頼むからなんとか誤魔化してくれよ…
「出来てるって言い方は語弊がある。俺達はちゃんと付き合ってる。ミナトは俺の大事な恋人だ。なんか文句あるか」
抑揚の無いドスの利いた低い声で、ハルがはっきりとふたりに宣言した。
一瞬…眩暈がした。身体の力が抜けた。
「…恋人っておまえら…」アキラの声が有り得ないって、愕然としたニュアンスを含んだ響きをしてたから、俺は…どうしていいかわからない…吐き気がした。
「…吐き…そう」
「わかった。洗面所行こ…悪いけど話は後だ。おまえら、ここで待ってて」そう言って、ハルが俺を抱えるようにして隣の部屋のシャワー付き洗い場に連れて行ってくれた。

吐くにしても何も食べてないから、胃液しか出て来ない。待てよ、何も食べてない?…そういや朝から食った覚えねぇし…なるほど、体調の悪さは、空腹の所為か…なとど、ひとりで自己分析してみた。ずっと背中を擦り続けるハルにちょっと申し訳ない気分になった。空腹で倒れるなんて…子供だって又笑われるし。
少し落ち着いて、顔を上げてみると、鏡の中、青ざめた俺の顔と、心配そうに俺を見るハルの顔が映ってて、目が合って…お互い笑った。
その時、初めて考えた。
俺達が恋人になったのはいいけれど、バンドの事を忘れていた。
ふたりの事ばっかりで、あいつらがこの事をどう思うかとか、これからどんな意識でやり続けていくかとか…そういう大事な事を全く…忘れていた。
あいつらが認めてくれなければ…俺達はどうなる?別れるのか…それとも…
四人でバンドを続けるのが困難なら…俺が辞めるしかないんじゃないか…

「ミナト、何考えてる?」鏡の中のハルが俺に問う。
「何って…」
「あいつらにどう言うか…考えてる…違う?」
「…そう…だけど」
「それで?」
「…駄目だって言われたら…俺、バンド…抜けようって…考えた…ん…だけど…」
「…ちょっと待てよ」
肩を抱かれて、簡単にクルッと回された。凄い力。向かいあう形になる。目の前のハルの視線が痛い。
「…わかんないけど…そんな事…思った」それしかないような気がした。
「…おまえ…ねぇ。それがどういう意味かわかって言ってんの?」
「へ?」
「ミナト…おまえね、すげぇ嬉しい事言ってくれてんだよ、わかる?」
「は…あ」何だよ、嬉しそうな顔して…
「…バンドより、俺と付き合う方が大事って言ってるんじゃん」
「…」…そうなのか…?…そうだ…な…それもなんかマズイよな…
「嬉しいけどさ、おまえが辞めるのはもっと困るから、辞めるとかゆうな」
「…はい」
「とにかく、俺がなんとか話つけるから、辞めるとか絶対ゆうなよ」
「…わかった」
「嬉しいけどな。ミナトにそんなに愛されてると思ったら、ねぇ」
「…」無茶苦茶嬉しそうな顔して、俺の頭撫でんなっ!
…墓穴掘ったのは確かに俺だけどね。

「気分は?」
「大分良くなった」
「じゃあ、いいね」
「うん」
アキラとカイに説明するために、さっきの楽屋に戻ることにした。
何故かお互いに手を差し出して、そのまま繋いだ。ひとりじゃない気分になる。大丈夫だ、きっと。




☆彡次のチェックポイントはパン!(*^_^*)


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