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2019-11

Simple10 - 2008.10.28 Tue

楽屋に入ると、横並びに腰掛けているふたりが神妙な顔で俺達を見た。
テーブルを挟んで、ハルはアキラの前、俺はカイの前に座る。俺とハルの手は繋いだままになっている。
重苦しい沈黙の中、ハルが口を開いた。
「隠してて悪かった。話そうと思ってたん…だけど、もうちょっと、落ち着いてから…って思っていたので…」最後の方で不自然に丁寧になるのを聞いて、緊張したハルを感じた。よく見ると、繋いだ手も少しだけ震えている。わかるよ…大丈夫、俺も居るから…
ハルも俺も真剣だ。どうか、アキラもカイも判って欲しい。
「許してもらえないなら…許してもらえるよう頑張るから…あの…許して欲しい…んですけど…」
「…」
沈黙が辛い…俺は何だが切なくなった。
「俺が…悪いの。ハルは悪くない。俺の所為…なの」
「ばかっ、ミナトの所為とかじゃ全然ねぇし…そんなんどっちの所為とかじゃねえし…」
「だって…」
だって、俺が冗談でも付き合おうって言ったから…
「…あんなぁ」
黙り続けていたアキラが口を開く。
「「はい」」
俺とハルが一緒に返事をする。
「俺ら別に反対してないけど」
「…そ…うなの?」
「ほんと?」
「なんでおまえらが付き合うのに反対するんだよ。べっつに今更じゃん」
「どっちかってゆうと、今まで付き合ってないつう方が、不自然だ」
「許してくれんの?」
「許すも何も…出来ちゃったもんはしかたねぇし、な、カイくん」
「そだな、出来ちゃったものは、戻しようが無い」
「…出来ちゃったゆうな…」まだ出来てねぇんだけど…ね。
「良かったな、ミナト」
「う…ん」良かったよ、マジで…ホントにどうしようかって思ったもん。

ほっとしたら空腹な事に気づいて、目の前に無造作に積まれているパンが気になった。
事務所からの差し入れか何かなのかな?
「で、おまえら、お手手繋いでなんかのおまじない?それともゲームかなんか?」
ふたり手を繋いでいるのが見えたのか、アキラが突っ込む。
「まあね、今日は一日繋いでいようって、ミナトと決めたの。なっ」
「…そう…ね」口から出任せだけど、別にいいし…だって今更離しがたいし…
しかし、腹減った…
「…パン…食っていい?」目の前のカイに聞いてみた。
「ん?食うの?どれがいいんだ?」
メロンパン、アンパン、クリームパン、ジャムパン、etc…があった。取り敢えず、
「クリームパン」
「ほら」と、手渡された。手渡されたのはいいが、袋ごと渡されたので、片手じゃ袋開けにくいし…手も離したくないし…
歯で引きちぎろうとしたら、カイが気を利かせて袋を開けてくれた。
今度はパンを直に出されて、ちょっと躊躇したが、さっき手は洗ったから、きれいだろ、そのまま受け取って、口に入れた。やっとこさモノに有りつけた気分になって少し満足した。
「でさ、いつから付き合ってんの?」
「いつ…だったか」アキラの質問に、ハルが俺を見る。
「ハルが振られて自棄酒飲んだ日」
「そうだった」
「ふーん、まだひと月半ぐらい?…つーか、あん時ミナトが…そっか、そうだったの。騙されたね、俺達」
「なんかミナトの様子がおかしいとは思ったけどな…」
悪い、あの時は仕方なかったの。
「でも良いねぇ。今が一番ホットな時じゃん。もおぅ、なんか無茶苦茶ゃ熱いよ、ここ」
アキラが大袈裟に舌を出してシャツをパタパタさせる。
「ラブラブ過ぎて気分悪くなったんじゃねぇのか、ミナトは」
「ちげぇよ…」
好きに言ってろ。つーか、喉乾いた。四分の一辺り食ったところで、何か飲みたくなって、俺を見てるカイに飲み物取ってと催促する。
カイは黙ってペットボトルのお茶を紙コップに注いで、俺の目の前に置いた。
…飲もうとした…が、パンを持ってて…飲めねぇし。片手だけって案外不便だ。
「ハル、ちょっと持ってて」と、パンを渡す。
「ん、わかった」右の手の平を差し出したので、その上にパンを置く。
「…で、ハルくんはミナくんのどこに惚れたんよ?」と、アキラ。
「どこっつーか…」…そんな目でこっち見るな、バカ。
「敢えてゆうなら、可愛いとこ。こいつは見たまんまも可愛いし、喋りも仕草とかも…なんか…全部、全部いちいちかわいいし…」
「ハルくん…それは敢えてとは言わない」と、呆れ顔のアキラ。いや、わかる。
「だって、しょうがねぇだろ、可愛いもん、ミナトは」
…もうなんとでも言え。つーか、お茶で口ん中湿ったから、パン食いてぇし…
「ハルくん。パン」って、手を出したら持っていたパンが渡されて、又黙々と食う。やっぱ美味いな、クリームパン。…でも食べてるとやっぱり、お茶欲しくなる。
「ハル、持って」
「ん」
で、お茶飲んで、また受け取って…四分の一ぐらい残ったところで、んーと、次はメロンパンにすっかな。でも、パサパサすると喉渇くし、やっぱあれか、ジャムパンで…え…えっと…なんか忘れていた…あっ!今日、ジャンプ発売の日だった。やべぇ、忘れるとこだった。帰りに買わねぇと…
「ハルくん」と、ハルを見た。
「はい」と、ハルが間髪入れずに手を出す。手…違うって、パンじゃねぇの。
「帰りにジャンプ買うからさ、忘れずにコンビニ寄ろうな」
「へ?あ…ん、わかった」
妙な間があった…するといきなり、目の前のふたりが大声で笑い出した。あんまり突然でびくっとなったよ。
「ぶーっ!…ははは…なんだ、それっ!」
「おまえら、ばぁか!わはは…」
「カイちゃん、見た?今のハルの顔」
「見た見た…笑える…つーか、おまえら最高…ははは…」
「さすがはミナトっ!…天然だぁ…」
「これじゃたまんねぇよなぁ、ハルは」
「…」目の前でふたりして馬鹿笑いが止まらぬ様子を、俺とハルは?な顔して見てた。何がそんなに可笑しいのさ…ねぇ、ハル。

「もうさ、おまえらの幸せを祈らずにはいられねぇわ、ねぇ、カイトくん」
「そうだな。おまえらの幸せはバンドの未来、即ち、俺達の将来にもかかってるって事で、励めよ」
何に?とかゆう突っ込みは今はよそう。なんかヘンなところに行きかねないし…
「じゃあ、来週のミナトの誕生会は、俺の家でやるから、忘れないように。わかった?」
「はーい」
「わかった」
「じゃあ、解散!」


帰り道、コンビニに寄って目的のものとお菓子を買って、家路を急ぐ。傍らにはハルが居る。今日は俺ん家に泊まりたいって言うもんだから、そうする事になった。
繋いだ手は…お願いしてもらって離して貰った。だって、人の目が、ちょっとね…困る。
「良かったね、アキラ達に許してもらって」
「別に…大体付き合うのにお伺い立てるつうのがさ。許すも許さねぇもないつうの」
「そんな事言ったって、ハルくん、言う時手ぇ震えてたじゃん」
「馬鹿ヤロ、震えるかって」
「震えてたもん…でも、嬉しかったよ」
俺の言葉にちょっとだけ驚いたように顔を向けて、ハルは黙り込んだ。
…おまえがあいつらに宣言してくれた事、俺、ホントに嬉しかったんだ、ありがとな。

「…俺、考えたんだけど、おまえのプレゼント」
「えっ?いいよ、別に」俺、何にも要らないし、ハルには充分世話になってるし…
「うん、旅行行かね?箱根でも」
「あ、いいね」ちょっとご無沙汰だったからね。久しぶりに行ってみたいかも。
「だろ?そんで…ミナトの誕生日に箱根って手も考えたんだけど、初めての時は慣れた家がいいかなって」
「…」
「思ってさ」
「うん…」
「うち来てくれる?前日。ね?」
「…うん」
「で、誕生日はアキラが腕振るうってゆってくれてるから、アキラん家でパーティやって、翌日は箱根って事で…いい?」
「ん、わかった」
なんかもう、物凄くリアルなスケジュールを言われて、本当に俺達そうゆう事しちゃうんだと思ったら、やたら恥ずかしくなってしまって、顔が火照って仕方なかった。
暗かったからハルには悟られなくて良かったんだけど。

あと、一週間か…二十一歳か…ハルに抱かれるんだぁ…なんか普通に…妙な気分だよ。
「どうかした?ミナト。寒い?」
「ううん、大丈夫。なんでもねぇの」
いつものように俺の顔を覗き込むハルを見て…たまんなかった。
たぶん俺は今、世界中で一番おまえを、いとおしくて仕方がねぇって思ってるよ。



☆彡いよいよお次は…

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