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2019-11

Simple 15 - 2008.10.29 Wed

なんか、重いって感じた。すぐにハルだって理解した。俺の身体の上にキレイに乗っかってるし、顔は俺のすぐ横にあって、髪の毛が頬っぺたに当たってくすぐったい。
「重い」って言おうとした。けど、言えなかった。俺の首筋に生温いものが当たっていて、それがハルの涙って判ったから…押し殺した声が聞こえた。肩が震えるのが判った。
なんで泣いてるの?…俺が寝ぼけてるの?
判んなかったけど、俺に出来る事といえば、ただ頭と背中を撫でてやることだけで…おまえの全部が俺に判ってやれればいいんだけれど…そんな事は無理なんだけど…

「…悪い、起こしちゃったな」
目頭を押さえながらハルが身体を半分起こした。
「んーん、もう起きたかったの」
「そうなんだ」
「…目、赤いよ」
「おまえも腫れてるからおあいこだ」
「…ん」泣いてた理由は聞かないよ。
「身体、どうもねぇの?」
「…」腰を動かしてみる。ハルが上に乗っかってるから動かしにくかったけど、別に…大丈夫みたい。
「どう?」
「…重い」
「えっ?」
「おまえが」
「…ごめん、そういや乗っかってたわ」
そう言うと、やっと退いてくれて、それでも横向きにされて又、抱きしめられた。
「ミナト、改めて誕生日おめでとう」
「うん、ありがと」
「大きくなったな」
「…そんなん…改めすぎだよ。久しぶりに会うどっかの親戚の叔父さんみたいじゃん」
「いやいやいや、せめてお兄さんって言えよ」…だって、おまえ、精神年齢、年より老けてるよ、絶対。
「それよりさ、夕方にはアキラん家行くんでしょ?今何時?」
「う…んと、九時半ちょい」
「そろそろ起きようか」
「うん」

そうやって昼までハルカの家で遅い朝食を摂ったり、洗濯、掃除やらをこなして、昼過ぎに家を出る。
アキラ宅までハルの家から五分とかかんないけど、ハルはケーキ担当という事で、美味しそうなケーキ屋さんを探しに繁華街まで足を伸ばしてみた。
街はクリスマス一色で、どこを歩いても流れてくる聞きなれたクリスマスソングと、色取り取りのイルミネーションで浮き足立っているみたいだ。
俺の誕生日はいつもそうなんだが、クリスマスの前にお祝いとかパーティとかあるんで、肝心のクリスマスがおざなりになっちまうパターンが多い。
昔からなんだけど、クリスマスの重要性が薄らぐつーか…プレゼントとかも、「誕生日に貰ったから要らないでしょ」とは家族の弁。ハルは…結構ちゃんと用意してくれるの。俺はあんまり…恥ずかしくて出来ないけど、今年はちゃんと考えるよ、おまえへのクリスマスプレゼント。あと四日しかねぇけど、根性でなんか見繕うから、楽しみに待ってろ。と、心中決意した。

「どんなのがいい?」
シャレたケーキ屋さんのガラスケースを覗く。
「…どれも美味そうで…決めらんねぇよな」
「おまえの誕生日だからな。決定権はおまえにあるよ。好きなの言えよ」
「そうだねぇ…」
結局、余りにも無難なイチゴの生クリームケーキとなる。定番過ぎるって笑われたけど、結局こーゆうのが一番美味いんだって。
「ろうそく下さい」ってハルが店の人に言うから、この歳でろうそくは恥ずかしいだろと、思ったけど、ハルは構わずに「二十一本下さい」と、堂々と言うので、さすがに店の方も唖然としていた…。

その後、街中をぶらついてて、たまたまに寄ったお店で「おまえに似合うから」と、どっかのブランドのセーターをプレゼントされた。
「いいよ、もうたくさん貰ってるから」
「これはクリスマスプレゼントだよ」
「…ありがと」悪いなと思ったんだけど、ハルの嬉しそうな顔見たら断りきれなかった。
俺は、プレゼント、全く決められなかった…ごめん、ハル。

夕方、アキラの家に行くと、すでにカイは来てて、ふたり揃って出迎えてくれた。
「なんだよ、新婚さんみたいじゃん」
「うるせ、寒いから早く中に入れろ」
「何言ってんの。寒い訳ないでしょ。このアツアツめが」
靴を脱いで部屋に入る。暖房が効いてて暖かい。
「昨日は…お泊りですか?」
カイがジャケットを脱ぐ俺を見ながら、自分の首筋を指差す。
「えっ!」と、瞬時に両手で首押さえたけど、ハルもアキラも俺の方見るから、一瞬にして顔が火照った。
「なんだよ、見せ付けんなよ、昨晩の情事の痕とかさぁ。こっち日照り状態なのにぃ」」
「み、見せ付けてねぇもん。アキラのエ、エロ」
「エロゆう方がエロいの」
「あんま、ミナトを苛めんな。今日はこいつの誕生日だろうが」って、ハルが庇ってくれたからホッとしたよ。でも良く考えたら、起因はハルなんだから、俺だけ責められるのはズルイ気がする。

「ミナト、誕生日おめでとう!」
「ありがとっ!」
わざわざ部屋を暗くしてもらって、ろうそくの灯りだけで皆の顔を眺める。…なんか、嬉しくてたまんなくなってくる。
「早く、消して」
ふぅーっ…って頑張って、二十一本のろうそくをひと吹きで消して見せた。
同時にパチパチパチとなる拍手と「おめでと、ミナト」と、連呼される祝福の声に包まれた。

テーブル一杯に載せられたご馳走は、どれも俺の好物で、どれもすげぇ美味くて、アキラの優しさが嬉しくって…胸いっぱいであまり食べられなかった。
「じゃあ、そろそろケーキ入刀とでも行きますか」
「へっ?」アキラのセリフに首を傾げる。
「やっ、せっかくだから、ほら、でかいケーキなんかこんな時じゃないと買わないし、なっ、カイちゃん」
「ん、おまえらも、まあ、契りを交わして夫婦になったって事で…」
「なってねぇよ」
「だからさ…まあ、結婚式とか大袈裟にできねぇからさ。こんなんでも、祝福してあげたいって思うじゃん。いいから、コレふたりで持ってごらん」って、赤いリボンの付いた普通の包丁を、ハルと持たされた。
「…」
ハルとそれを見て、ちょっと固まった。ケーキ入刀なんてやった事ねぇし…でもハルが「おもしろいからやろうか」って言うから、俺も反対なんかする気も起きねぇよ。

チャンチャカチャーン…って、結婚式の定番の行進曲を、カイとアキラがふたりでハモるから、遊びって判ってるのになんか緊張するよ。
ハルの右手と俺の右手を重ね合わせて…柄が短いから持ちにくい事この上ねぇし…正面のケーキ、向こう側からゆっくり切っ先を入れて、せっかくだから綺麗に切ろうと、頑張った。ふたり同じ力を合わせて、四等分に切る。
「結構難しいな」って、ハルが真面目な声で呟く。
俺も可笑しくなって「ホントにね」って笑う。
ああ、だから、結婚式でよく聞く、夫婦初めての共同作業なんだなってヘンに納得してしまった。
「じゃあ、誓いのキスを」
「えーっ?…やだよ」
「やれ」なんで命令なの?カイちゃん。
「やるか」や、やるのか?ハルぅ…
近づくハルの顔を止める間もなく急いで目を瞑った。前髪を上げられてオデコに…キスされた。
「これ以上、おまえらに見せつけるのは勿体無ぇし。なあ、ミナト」
「…うん」
「あ~あ、なんだかねぇ、カイちゃん」
「アキラ、暖房切っとけよ」
ハルと一緒に切ったケーキは美味かった。

「それからさ、これは俺とカイからのプレゼント」と、有名ブランドの包みを渡された。
「ありがと…開けていいの?」
「うん」
急いで開けてみると…毛糸のマフラーがふたつ。エンジと深緑の奴。
「なんかな。やっぱミナトだけのものよりさ、ハルくんとお揃いのが今のミナトには嬉しいんじゃないかなって思ってさ。これでもカイくんと考えたんだよ、色々」
「まあ、今のおまえらには、何やっても喜ぶとは思ったけどな。赤と緑のお揃いのマフラーしてたら、クリスマスバカップルみたいでおもしろいんじゃねぇかと…」
「カイちゃん、それ言いすぎ」
「ああ、悪ぃ。まあ、深い意味は無いから、使ってやってくれ」
「…ありがと、アキラ、カイくん…」
「おまえら、色々気ぃ使ってもらって…ホントありがとな」

「ハル、あのさ」神妙な顔でアキラが口を開く。
「頼むからさ…ミナトを泣かしたりしないでくれよな。ミナトは、おまえと違って純情なんだから」
「な、なんだよ、アキラ。ヘンだろ、それ」
アキラの場違いに真面目な物言いにこっちが動揺する。
「ヘンじゃねぇよ。色々と…俺達も心配してんの。ハル、モテるし…」
「…」それは、俺も心配だけど…そんなの心配しても仕方ない事だし…
「ミナトは…こーゆー性格だし…」
おまえらの言うのはわかるけど、俺、ハルの事信じてるし、大丈夫だよ。
「あ…も…断言しちまうけど…」
突然ハルが背筋伸ばして、真剣な声で話し出した。
「ミナトの気持ちとかはっきり聞いてないし、これは俺の勝手な思い込みでしかねぇんだけど…俺は、ミナトとずっと一緒に居たいって…思ってる、つか、願ってる。俺自身の未来がさ…どうなるかってそんなん全くわからんし、わかりたくもねぇけどな。何があってもミナトと離れる気は全然ねぇし…ずっと、一緒に生きていきてぇなぁって思ってる、俺」
「…」
「すっげぇ、ハルくん…究極の告白したよ」
「さすがだわ、ハルカ…まあ、ハルがここまで言ってくれたんだから、ミナもなんか返してやったらどうなんだ?」
「えっ?なにを?」
「…なにって…」
「俺もずっと一緒だよとかゆうんだろっ!」
「おいおい、アキラ、おまえが怒ってどうする」
「…」そんなの…恥ずかしくて言えねぇつーの…
「いいの、ミナトはシャイなんだから、熱い告白はふたりの時に聞くから」
「うん、まあ…ハルが本気だってのはわかったから…なんか安心したよ」
「まあ、色々と周りの状況とかあるけどさ、俺もアキラもフォローしていく覚悟はあるから。困った事とかあったらな、ふたりだけで考え込むんじゃなく、遠慮なく申し出なさいっていう事で…」
「なんかな…おまえらには絶対幸せになって欲しい…ってゆうか…さぁ…ミ、ミナトぉ、泣くなよ…」
…駄目だ…込み上げてきた涙、止まんなくなるし…

カイとアキラの思いもよらなかった心からの祝福とか思いやりとか…友情にただ感謝するとかじゃ言い表せ様も無い深い…優しさで胸いっぱいになって…俺、なんも返せねぇのに、本当にゴメンな、ありがとな…



☆彡次でやっと終り^_^;

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