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2019-09

ユーリとエルミザード  「黎明」 1 - 2009.07.01 Wed

ユーリとエルミザード

「黎明」
1.

ユーリ・サラディスは、母の弟であるヴァレリアウス・レイヌと並んで、夏の草原を馬で闊歩していた。
目指すはここから見える山間の向こうの小さな村の離れに住んでいる、ヴァレリアウスの師匠の邸だ。

ヴァレリアウスは、エイクアルド大帝国の重臣として長い間信頼され仕えてきたレイヌ家の跡取りで、今も皇太子の世話係として忙殺された日々を過ごしている。にも関わらず、首都イルミナスとは遠く離れた北方まで足を向けている。
ヴァレリアウスには秘密情報の特命も担っており、時折、こうして国の隅々までをも徘徊する仕事に従ているのだ。

「良く重臣の叔父上を自由にさせてくれますね、宮廷の皆さんは寛大だ。それとも大帝国の恩寵に胡坐をかいているのかな」
「ユーリ、来年の士官学校に入りたいのなら、その口の悪さをなんとかするんだね。私も試験官だけど、甘くはしないからね」

今年で12になるユーリ・サラディスは、この気さくな叔父が大好きだ。
性格だけではなく、彼は力のある魔術師、そしてこの地上の大帝国エイクアルドの重臣の中でも極めて重要なポストに位置する第一騎士団長兼軍師といういくつもの肩書きがある。
それなのにヴァレリアウスは、少しも気取らずにこの年少の甥にも礼を尽くす。
自分の知らない豊富な知識は底を知らず、そしてひとつひとつに感銘を受け、学ぶものも多い。

ユーリはヴァレリアウスを尊敬する。いわんや両親よりも信頼は厚く、できるなら傍に付き従い、彼に学びたいほどだ。
将来は彼の元で働きたいというのが、ユーリの希望だが、彼の家はこの地の名だたる魔道士の一族であり、彼はその名を継がなくてはならない身でもある。
それが窮屈なユーリは来年、エイクアルド国の宮廷士官学校の試験を受けるつもりだ。
「叔父上は講師も兼ねているんでしょ?大丈夫なの?皇太子だけじゃなく、その従兄弟のお守りまでしているそうですね」
「お守りではないさ。アルスは育ての親がわりだよ。両親がいないんでね」
「…奇特な人だなあ~忙しい身なのにそんなのまで背負い込んでいちゃ自分の楽しむ暇なんて無いじゃないですか。いくら皇太子の従兄弟だからって叔父上が世話役を引き受ける責などないでしょう。奉公するにも程ってもんがある。自分の幸せは考えていないの?」
「何を持って幸せというかの問題。私はね、レイ・ラシードとアルスの傍でお使えすることが一番の幸せなんだよ」
「じゃあ、なんでこんな辺鄙なところまで情報収集活動なんかやらなきゃならないの?他に沢山人材はいるでしょうに」
「それこそね、好きだからだよ、ユーリ」
片目をチャーミングに閉じて笑うとヴァレリアウスは馬に鞭を打つ。
「さあ、ユーリ、急ごう。日暮れるまでに着かなければ、野宿をする羽目になる」

ヴァレリアウスの師匠というライラス・ジレムの邸に着いたのは、山に落ちる陽が一日の最後の陽光を輝かせる時の頃だった。
ライラスは老人というわけではなく、ユーリの父親よりも若く見えたので、初めて出会うユーリは少し驚いた。
小声でヴァレリアウスに「あなたの師匠というから白髪のおじいさんを想像していたのに、まだ現役じゃない」
「当たり前だ。彼の闇と火の魔法の術に敵う者はいないよ」
微笑んだ後、ヴァレリアウスは師匠に甥を紹介した。

ユーリはその師匠の影に隠れるように佇むひとりの少年を見た。
見た目はユーリと変わらない年の頃。
ああ、あれがヴァレリアウスの言っていたエルミザード・アールか…と、ユーリは思った。
「初めまして、こんにちは。ユーリ・サラディスです」
人見知りという事をあまり知らないユーリは進んで、彼の前に歩み出で、握手を求めて手を差し出した。
暗い部屋の灯りでは灰色にしか見えない銀色の髪が、少し揺れ、彼はユーリをじっと見つめた。
「怖がらなくていいよ、エルミ。彼はおまえと友達になりたいのだよ」と、ライラスが言うと、エルミザードは頷き、おずおずと手を差し出した。
「…エルミザードです。よろしく…」
まだ声変わりしていない澄んだ高い声に、ユーリは容姿に違わずかわいいと思った。



                 text by saiart


2へ


実験的にやれるもんはやっていこうかと、思ってます。
この話は「彼方の海にて…」にも続くし、できるならレイ・ラシードとアルスの方にも手を付けたいと思っているので。
基本この話の更新は週一回ぐらいにしたいです。メトネ日記の方も。
どこまでやれるか…自分でも楽しみです。




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