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2019-09

宿禰慧一 「イリュミナシオン」 4 - 2009.07.02 Thu

4.
俺は13で性を体験した。中2になる春だった。
まだ母は生きていた。
その頃の凛一はまだ幼く、さすがに性の対象にはしかねる存在だったが、さりとて彼以上に興味そそるものは少なかった。
俺は自分をもてあましていたこともあり、また思春期特有の反抗心も高じて、日頃の優等生の自分を壊すものになりたがった。

塾に行く必要はなかったが、春の特別受講を友人から誘われ、俺は家から少し離れた塾に二週間ほど通った。
俺のクラスの数学教師は色白で眼鏡をかけた優男風の男で、有名大学のアルバイト講師だった。
教え方も上手く、俺はわからない事があったら授業が終わっても納得するまでしつこく粘った。
勿論、裏はある。
彼はゲイだと思ったからだ。何故そう感じたのかは判らないが、後から考えれば同じ穴のムジナという事になろう。
彼もまんざらでもなく、夜遅くなると家まで送ってくれたりした。
特別受講も終わる日に、俺は授業が終わるとお世話になったお礼を言いに、事務室に向かった。
彼はこのまま塾を続けないかと引き止め、俺は残念だがと、はっきり断る。
彼は暫く考えた後、「ちょっといいかな」と俺の手を掴み、外へ連れ出した。
外は暗く丑三つ時とは言えないまでも、人通りは少なくなっていた。

「考えたんだけど…」
「何を?」
「…宿禰君の事、このまま離すのは辛い」
「…どういう意味かわかりかねますよ、先生。はっきり言って下さい」
「君が好きだから…寝たいってことだよ」
「…いいですよ」
「…本当?」
「でも僕は、下にはなりませんよ。ご覧のとおりプライドが高いんですよ、俺は」
「…わかってるつもりだよ。でもいいのかい?」
「二言は無しですよ、先生。あなたがそういう目で俺を見ていたのは知ってたからね。正直俺も初めてだから判らないことが多いんだ。それもご教授していただけたら、嬉しいね」
「…君って子は怖いね。その美貌に惑わされたのは間違いないけど…つかまったのは僕の方ってわけだね」
「それではあなたの立場はないでしょう。僕はかよわい中学生ですよ、先生」
揶揄するように笑うと、それを見た彼は自分の白い顔を手で撫でた。
俺はその夜、この男を抱いた。

俺はこの男と半年程付き合った。
それ以上付き合うと向こうが本気になりそうだったので、頃合を見計らって後腐れなく別れた。と、言っても彼と付き合っている間は、彼の友人の大学生の女や男どもを紹介していただき、いい経験をさせてもらったので、それなりに感謝している。
自分の性癖もはっきりとわかった。
結論としては女とやるより男とやる方が、断然に快感を得られる体質であり、俺はゲイなのだと自分で悟った。
少なからずショックはあったとしても、そう悲観することでもない。
元々結婚にも恋愛にも夢を見てはいない。
俺にはもっと目の前にあるものを守りたいという生き甲斐がある
生き甲斐…もはやそれしかいいようがない。

学校では人当たりもいい誰にでも親切な優等生を演じていた。
何の苦労も無くイイヒトを演じられる自分自身を嘲りながら、見事に人を欺くことを嬉々としてほくそ笑む自分が居た。
部活や生徒活動を勧められても、家庭の事情という事で免除された。
事情を話せば納得どころか同情さえ買うことができる。
俺は凛一以外の奴等にはなんの興味も沸かなかった。

校内の修了のチャイムと共に学校の門から飛び出すのが俺の日課となっていた。
俺は母とその傍らで無邪気に遊ぶ凛一と観ているだけでうっとりとし、俺を見て駆け寄る凛一にこの上もなく高揚するのだ。

或る日、母の傍らで眠る凛一を眺めていると、凛一の頭を撫でていた母が俺に言う。
「慧一はいい子になりたいわけじゃないのに見せたがるのね。長男だから周りの期待に応えようとしちゃうの。でもね、私はわかっているの。あなたが導く者ってことを。だから自分の思い通りに生きていいのよ」
俺は驚いた。今まで母がこんな核心めいた言葉を俺に言ったことはない。
俺は思わず許しの言葉を口にした。
「俺は…間違ってない?」
「全き正しく生きる者よ。手の中の炎を決して消さないでね」
母はそう言うと、眠る凛一を抱き上げ、俺に渡した。
「少し眠るから、凛一をお願い」と、ベッドに横たわり目を閉じた。

それから少し経った後、母は眠るように亡くなった。

あれは俺への慰めだったのか、指針だったのか…腕に眠る凛一の寝顔を見つめながら俺は何度も思い返していた。
俺はこの腕に眠る凛一を愛している。
この子の幸せの為なら、自分の身を犠牲にしても構わない。
何もいらない。この目も耳も足も…この子を抱きとめる腕が残ればそれでいい。
そう願うのは間違った愛なのだろうか…
いや、母は正しく生きるものと言った。ならば…

「大丈夫?慧」
まだあどけなさを残した7つの凛一が、俺の顔を覗いて首を傾げる。
「大丈夫だよ、凛」
「じゃあ、ここの計算問題教えてよ」
当たり前に繰り返される平穏な日常にさえ、俺は抑えきれない感覚に陥ることがある。
こんな幼子に抱く感情じゃない。
どんなエロ本や映画を見たって興奮しないのに、凛一が近づくとただならぬものを感じてしまう。
この信頼を裏切るくらいなら、俺は凛一の前から消えた方がまだ救いがあるんじゃないのか?
なにより梓に知られるのが怖かった。
あの聡い妹は俺が凛一に肉欲を感じていると知ったら、決して許さないだろう。
いや…それは梓も同じなのかも知れない。
あれは兄弟というより同志と言った方が近い。

「兄さんは凛一をどうしたいの?」
「どうしたいって…?」
「…抱きたいの?」
「馬鹿なこと言わないでくれよ」
「別に良いけど…兄さんの想いがどうであろうと構わない。でも凛一を傷つけたら私は許さない」
「…」
「私を失望させないでよね」
「わかっている!」
全うな正論に腹が立った。知っているのなら口に出すなっ!

梓の存在が俺を苛立たせた。
俺と梓は、凛一を取り合うライバル同士と言っても良かった。
最終的にどちらが勝つのか…そんなひどい考えまで頭を掠める時がある。
俺は梓を妹としては愛しつつ、どこかで憎んでいた。
そう感じる自分が嫌でたまらない。

俺は凛一と梓から少しでも距離を取ろうと、家を出ることにした。



                                                text by saiart


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


慧一の暗さにこっちがめいるんだが…ww
でもそういう慧一が好きってことは、自分もかなり歪んでいる。




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