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2019-09

「彼方の海より…」 3 - 2009.07.09 Thu

メトネ日記第二章
3.
手伝いといっても、魔力も腕力もない私ができることと言えば、部屋のお掃除や片付けぐらいだった。
リュウにもラシュマーにも言われていることだが、部屋以外にはあまり出歩くなと念を押されている。
他の魔族は私のような非力な人間をリュウが構っていること自体が許せないらしく、彼らから守りきれるか責任を負いかねるということらしい。
それほどまでに魔族が嫉妬深いとは思わなかったけれど、この邸はリュウを頂点にした一個の国みたいなものだから、その王が私みたいな者を遊びといえども色子にしているのが許せないのだろう。

取り敢えず、部屋でできることはできるだけ自分でやる。
着る物は自分で繕う。食事は毎回リックやリュウの世話係りが運んでくれるけど、それも私ひとりの時は自分で片付けるようにした。

着る服といえば、リュウは同じ服を着ない。
仕事から帰ると着ていた服は大概ボロボロになっていて、戦いの凄まじさを十分に想像させるものだった。
そのくせリュウ自身の身体には傷ひとつない。
治癒能力が他の魔族と比較にならないほど、早いのだという。

関係ない話だが…
いつも彼は私を抱き傷つけてはその後治してくれるのだが、だったらあんなことしなければいいのにと思うほど、リュウは私を容赦なく痛めつける。
私は苦痛に何度も気を失ってしまうのだが、気がつくと痛みはなくなっている。
リュウは私が苦しむのを楽しんでいるのだ。
最低な魔者だが、心の底から憎むことはできない自分が不思議でたまらない。
リュウが私を愛してくれているとは思わない。だけど、彼の中に私への執着と言えるものを時折感じるのだ。
ただの思い込みかもしれないけれど…

リュウの服はミズキという魔者がすべて作っているのだという。
食事を作る者はカンナと言う。リックの他にリュウ専用の世話人はふたり。
主に仕事を取り図っている。
そういうひとりひとりの魔族がリュウを崇拝し、彼の為に尽くして働く。
だったら、私もなにかリュウの為に働くのは当然だと思う。

リックに頼み込んで刺繍を教わった。
刺繍なんてやったこともないが、兄エーギルから頂くお守りにはいつもどこかに綺麗な刺繍が施されていたことを思い出しだのだ。
ラサイマ国の北方のリヤックは独特な編み方で編んだリヤック刺繍が名高い。
それには程遠くても、自分で刺した刺繍で何かを作ったら、それは自分が生きているという証拠にもなるんじゃないかなと、思うんだ。

公主だった自分が刺繍なんぞしているとは、エーギルも夢にも思わないだろう…なぜか可笑しくて声をだして笑ってしまった。
向かいのリックは驚いて見ている。
「ゴメン、まだ人間界の自分を捨て切れていないみたいだ。ここでは私はなんの価値もないものなのに…」
「メトネはいい人間だと思う。一生懸命自分のできることをしている。それだけで十分じゃない?」

リックは魔力が弱いというが、他の者を思いやるという点ではどの魔者よりも勝っているのではないかと思う。
「リックが居てくれるおかげで私はここで生きていく自信がなんとなくでも沸いてくる気分だよ。ありがとう」
「…君はいつもそうやって礼を言うけれど、本当に礼を尽くさなきゃならないのはリュウに対してだと思うよ。僕らがこうして平穏に暮らしていけるのも、リュウが命を懸けて戦っているからだ。彼は僕らが考えもつかないほどに大変な労力でこの混沌の魔界をひとつの形にしようとしている。その途方もない戦いを彼は担っているんだよ」
「…」
熱弁するリックの言うことはなんとなく理解できても、私にはやはりリュウは怖い魔者でしかない。


「何をやっているっ!」
突然の怒号に、私とリックは弾かれた様に椅子から立ち上がった。
振り向くと、リュウ・エリアードが部屋の入り口で鬼人の如く立っていた。
「リ、リュウ…」
彼は…彼の服はどこもかしこもひどく破れ、身体中が赤い血や灰まみれ、プラチナの髪は血塗れて顔にまで飛び散っていた。
私は驚いて声も出ない。

「あ、あの…」
「何をしているっと言ってんだよっ!」
「リ、リックの手伝いを…させてもらっていたんです」
「誰がそんなことをしろと言った」
「…」
「リック、俺の色子と仲良くしろと俺が命じたか?」
「いえ…あの…申し訳ないです。僕が軽率でした」
リックも突然の事の成り行きに狼狽している。

「リックの所為じゃない、私が頼んだんだ」
事がリックに及ぶのを警戒して、私はリックの前に立った。
「メトネ、お前は黙っていろ」
私の身体を手で払い、リュウはリックと向かい合った。
怯えているリックを見ていると可哀想でならない。

「リック、俺の世話はもうお前に頼まない。他の奴の仕事をやれ」
リュウの言葉を聞いて私は狼狽した。
「待って!リックは、違う。リックはあなたの為に懸命に仕事をしています。彼が悪いんじゃない。私がリックの仕事を手伝ったのが気に入らないなら、私を罰して下さい」
「…おまえに罰だと?ここの住人でもないおまえに罰など与えるか。何の価値も無いくせに。抱かれる以外に何かできるものがおまえにあるのか、言ってみろ?」
「…」

「とにかくリックは解任だ。さっさと消えろ。メトネ、おまえも早くそのくだらんものを片付けろ」
リュウの言葉にリックは足早に部屋から出ようとする。その目には涙が光っているのが見えた。
私はひどく憤りを感じた。
なにがプレシャスハイガーディアンだ。私に対する小ざかしい苛めじゃないか!
私が必要ないのならもっとはっきり言えばいいものを!

「リュウ・エリアード。あなたを見損ないました。あなたを尊敬してやまない仲間をそんな風に粗略に扱うなんて。上に立つ者としての器量が足らないんじゃないんですか?私はこういうやり方は否です」
「はあ?」
「もういいです。あなたにとって、私はなんの価値もないモノなのだからここにいても邪魔なだけでしょう。私も出て行きます」
「な?おまえ、ここから出て行くって…どういうことかわかっているのか?おい、メトネ!」
リュウの言葉を聞かないまま、私は部屋を出て行くリックを追った。




                                         text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから
プロローグ
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何故に刺繍…ww
そしてお掃除と言うメトネが…かわいいww
時折キレるメトネ…そういうのも新鮮に萌えってなるであろうリュウwww




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● COMMENT ●

メトネかわいすぎる><

切れちゃったメトネどうなるんでしょうか~~
リュウはどうするんだろう~~
楽しみ~♪

まりさん

メトネは書いていくたびにかわいくなってしまいますね~
もうこの子はなにしても許せるわ~ってなるの。
リュウがこの子をどうしたいのか…これから少し動きがあるかもです。

メトネ!エライ

誰もが恐れ敬っているリュウに、あのラフ画みたいなことされて
O(≧□≦)o
それでも立ち向かっていくメトネ!エライ
しかし、可愛い❤
リュウ、独占欲にかられるのかなぁ~?
でも、かれも独特だからなぁ~?
どんな動きか想像もつきません。

アドさん

メトネはえらくないんですが…wwお子様なので(;´∀`)

リュウは独占欲の塊ですからね~まだわかってないだけで。

あのラフの相手、リュウじゃないんだよヽ.......((((((ノ゜⊿゜)ノ 内緒だけど…


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