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2019-09

「彼方の海より…」 6 - 2009.07.18 Sat

6.
もっと色んな話が聞きたくなり、回廊を歩くラシュマーをリュウのいない部屋に呼び込み、話を聞くことにした。

「リックに聞いたのだけど…聞きたいことがあるの?」
「メトネ、私は忙しいんだよ。今じゃなきゃ駄目なのかい?」
「う、ん。少しだけお願い、ラシュマー」
両手を合わせて拝むと、ラシュマーは呆れながらも聞く体制をとってくれた。

「魔界の男性と女性は別れて住んでいるって言うけど、ここの者が、女性の館に簡単に行けたりするの?」
「勿論だよ。でも、そうだねえ~結局自分の遺伝子を継ぐ者。子供が欲しくて伺うことになるのだから、あちらも手放しに喜びはしないさ。余程の魔力を持った者じゃなきゃね。だからあちらに伺ってすぐに子供を作るわけではない。魔族も人間と同じように、それ以上かもしれないが、愛を確かめ合うんだよ。突然に舞い上がったり、じっくりと育てたりとそれこそ詩的なほどに色々と…」
「ステキだ!」
思わず声を出してしまった。だって、ロマンチックだもの。物語でしか呼んだことの無いお伽話みたいで私は浮かれてしまった。

「それでも、まあ、無秩序な奴も結構いる。
男の魔族は好きなだけ種を蒔ける。自尊心のある奴は異世界の奴と目合うことはしないけれど、まれに地上の女、人間だね、そいつと交わって子が出来ることもある。でもこの場合は特別だ。子を作るかどうかはすべて男の魔族の意思で決まる」
「え?どういうこと?」
「セックスする際、子を宿す魔力を子宮に入れ込むんだよ。そうする事で子供を宿すか否かをコントロールできる。だから人間の女と交わってもそうそう子供を作ろうとはしないものさ。そもそも異種との間に出来た子供が、まともな魔族に生まれるのは難しいんだよ。人間か魔者かどっちつかずか、理性のない妖魔になるか…
もし魔族に生まれたとしても何かが違うだろうね。人間の姿をしていても魔界とは異なる神や自然のものに長年触れるうちに気が触れてしまうかもしれない」
「…そんなにリスクが大きいんじゃ…」
「それでも稀に…稀にだよ。人間と恋に落ちて家族になりたがる者もいる。そういう場合は、大体子供は魔界に連れていく」
「なぜ?」
「愛し合って出来た子供は魔力が強いからね。その子はより魔族に近いだろうし、人間界に置いておく方が不憫に思うのかもしれない。人間である母親も魔族の子を育てるのは難しいだろうしね。親心だよ」
「…子供は幸せになれる?」
「そうなるように私たちが育てるんだよ。女子は女の館で、男子は男の邸で、自分の子であってもなくても等しく育てる」
「ベビーシッターも兼ねるの?」
「リュウを育てたのは私とサイアートだよ」
「リュウも…?」
「彼の場合はかなり変わっているけどね」
サイアートという魔者の名前を耳にしたのはこれで二回目だ。どんな方なのだろう。それよりもリュウが変わってるって…

「…ねえ、一年未満で母親は死んじゃうって本当なの?」
「97パーセントという統計が出ている」
「じゃあ、あなた方は誰も母親の顔を覚えてはいないってこと?」
私の質問にラシュマーはふっと笑った。
「以前にも言ったと思うが、魔族は一度見たものを記憶する能力がある。
その能力と関係があるのかはわからないが、一度も顔を見たことがない親の顔をその赤子は記憶に刻み付けているんだよ。顔だけじゃないよ。その親の生き様まで鮮明に蘇らせる事が出来る。覚えたくなくても刻み込まれてしまっているからね~」
「ラシュマーも忘れていないの?もう随分と前のことでしょ?」
「親の顔を忘れる魔族はひとりもいないと言っていい」
「じゃあ、リュウも…リュウの親御さんってどんな魔族だったの?きっとすごく強くて綺麗で…想像もつかないけれど」
「…リュウは特別だと言ったろ?彼には親はいないんだよ」
「どうして?」
「私もリュウの出生は教えられていないんだが、リュウ自身の記憶には全く刻まれていないそうなんだ」
「だって、今言ったじゃない。親の顔を覚えていない魔族はいないって」
「…だから彼も悩んだ時期があったよ。ずっと昔の話だ。自分が誰から生まれたかを知るのは魔族にとっては精神の糧ともなる。血統というのはとても重要視される事だからね」
「…リュウは悩んだの?」
「ひどくね。それでもサイアートが…サイアートと言うのはこの魔界を形作った者なんだが」
「はい、リックから聞きました。」
「或る時、私の目の前に幼いリュウを腕に抱いたサイアートが尋ねて来たんだ。突然ね。リュウとサイアートは良く似た面差しをしている。だから彼が父親だと誰もが認識している。だけど、それは事実じゃない…」
「…」
どういうことなの?じゃあ、リュウの親って…

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「これ以上の話を聞きたかったリュウに直に聞きなさい。私も喋り過ぎたようだ。メトネは話を聞きだすのが上手いから困る。秘密裏な事までつい口が滑ってしまうよ」
「ごめんなさい」
苦笑するラシュマーに、しつこく聞いてしまった自分を恥ずかしく思った。

リュウは親の顔を知らない。すべての魔族が覚えているのに自分だけは記憶にないなんて…すごく寂しいことじゃないのかなあ。
リュウの魔力は恐ろしく強大で、魔界では絶対的な力と権力を持つ。
自ら身体を張ってこの魔界を守ろうとしている。
私はリュウが恐ろしいだけの魔者だと思っていたけれど、そうじゃないんだ。
人間と同じように魔族も恋をして命がけで子供を生み、その子を他の魔族に託して命を全うする。そしてその子たちを育てていくのも魔族の本性。
それを作ったのはリュウと言う。自分はどんな親かも知らないのに…

リュウのことを想うと、なんだか切なくなった。
リュウは寂しくなかった?孤独ではなかった?泣いたりしなかった?
…私はリュウの為に何ができる?


「…メトネ、なんて顔してるんだ?」
気が付くと目の前にリュウが部屋に立っていた。私の顔を見て、頭を傾げた。
外から帰ってきたようだ。いつものように服は破れ顔も埃っぽい。
「リュウ…」
自分でも驚いたが、気が付いたら彼の胸に飛び込んでいた。
「ど、した?」
私のリアクションに驚いたリュウが変な声を上げる。
私は構わずしがみ付き、リュウの汚れた頬にキスをした。
「なんだよ、おまえから抱きついてキスするなんて、天地が裂けてもありえんことだと思ったのに」
「…たまには…いいでしょ?あなたの色子なんだから…」
そう言うと、リュウは鼻で笑いながら、私を抱き返してくれた。

私はリュウが好きだ。私の故郷を大事な者を滅した破壊者であろうとも…
この方を好きになるのが私の罪であっても、甘んじてその罪を担うことにしよう。
私はこの方の為に生きたい。

その罪はとても甘い気がしてならなかった。





                                       text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
メトネ日記第二章  5へ / 7へ

エルミザードとの関連性を少しだけ匂わせました。
ちょっとした4コマ漫画を描きましたので明日うp予定。




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