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2019-09

宿禰慧一 「イリュミナシオン」 11 - 2009.07.28 Tue

11.
俺の声に応答はなく、一瞬いたずら電話なのかと疑った。
だが、微かに感じる呼吸が凛一だと確信し、俺は凛一に訴えるようにゆっくりと言葉を続けた。
「凛…どうした。頼むからおまえがどこにいるか言ってくれ。おまえが旅行に行くと言ってもう十日も経つんだ。連絡しようにも…携帯の電源を切っているんだろう?凛」
『慧…は俺が死んだら泣く?』
望んでいた凛一の声音。だが「死」という言葉が俺の頭の中に張り付いてしまった。
「…何言ってるんだ。いい加減にしろよ」
凛一の冗談だと受け流したい気持ちで応答する。
『俺、殺されるかも知れない…けど、恨まないでよね。その人が悪いんじゃないんだ。俺が救えなかった罰だと思ってくれよ、慧』
何をバカなことを言ってる…そう言いたいのに言葉に出ない。凛一は何を言っている。
凛一は本気で…本気で俺に遺書めいたことを口走っている。

バカなことを言うな!おまえが誰かに殺されるものか!殺させやしない。
俺が絶対に。

「おまえが死んだら、俺は許さないから。そいつもおまえも、世の中の奴全てを許さないからなっ!凛、帰ってくるんだ。おまえが居ないと俺の生きる意味はないって…そう言ったはずだ。覚えているだろ?」
俺の傍で聞き耳を立てている嶌谷さんの事など構わずに叫んでいた。
『ごめん、慧』
泣きそうな凛一の俺への謝罪。
そんな声を聞きたいんじゃない、凛一、俺は…
俺は…
「…俺が守るから、戻ってきてくれ、凛…」
俺は祈るように言った。
何もいらないから。おまえが無事であれば、それだけでいい。姿を見せてくれ。
だが、凛一からの通信は俺の思いなど関係なくプツリと途絶えた。

「なんで勝手に切ってしまうんだ、凛一!」
俺は携帯を睨みながら口走った。
殺されるかも知れないって…どういうことなんだ。
どこにいるのかも、誰と居るのかもわからないままで、おまえをどうやって探し出せばいい。
頼むから早まらないでくれ、凛。

「場所がわからないとしたら、この葉書の差出人を片っ端からあたるしかないな…」
独り言のような嶌谷さんの声で俺は我に帰った。
「凛は月村の名前を言ってないのに、何故そんなに自信があるんですか」
「じゃあ、慧一君は他に当てがあるのかい?凛一は誰かを救いたがっている。それは月村以外に考えられない。だったら、月村の知り合いからその場所を割り出すしかないだろう」
「…」
「大丈夫だよ。月村も凛一を巻き込んで無理心中するようなバカなことは考えないだろう」
嶌谷さんの言葉に俺はぞっとして嶌谷さんを見つめた。
「無理心中って…」
「悪い。脅すつもりはないんだ。月村もいい大人だし、そんなバカなことは絶対にないって話だよ」
「だって…凛はそいつに殺されるかもって言ってました。そんな奴を俺は信用できない!警察に連絡しましょう。凛が心配だ」
「落ち着いてくれ、慧一君。警察沙汰になって困るのは凛一だよ。それに月村にそんな度胸もなけりゃ、凛一を手に掛けるなんてできる男じゃない」
「どうして、あなたにそんな事が言い切れるんですか。死を覚悟した人間は、傍にいる誰かを巻き添えにしたがるって言いますよね。そいつもその限りじゃないんですか」
「月村は凛一に救いを求めてる。だけど、それは一緒に死にたいってことじゃない。月村は死ぬ。それは確かだし、その命を誰も救う事はできない。だけど、彼の心は凛一で救われるかも知れないんだ。月村は凛一を見ていると生きている喜びを知ると、俺に言ったんだ。だから…それを信じたい」
凛一を見ると生きている喜びを知る…そんな事を言う男がその好きな奴を手にかけようとしたり、殺されるかもしれないと怯えさせるのか。それは殺したいほど凛一を自分のものにしたいという欲求に他ならないことだろう。
俺はその月村という男に憎悪を覚えた。

「無理だ…俺はそんな、月村っていう男は知らないし、凛一は確かに殺されるかもしれないって言っているんだ。一刻を争う事じゃないんですか?あなたのように悠長にしていられない。凛一はかけがえの無い俺の、たったひとりの弟なんだ」
「俺にとっても大事な…友人だよ」
嶌谷さんのためらいがちな言い方が気になった。この人も凛一を愛しているのだろう。だから尚更…
「だったら止めないで欲しい。俺は凛を失いたくない…」
「月村は慧一君が考えているような軽はずみな男じゃない。だけど、凛一はまだ15歳だ。慢心しているところもある。だから急ごう。俺もしらみつぶしにあたってみる。警察に連絡するにしても居所がはっきりしてからの方がいい」
「わかりました。でも俺は月村って男を信用もしないし、同情も一切しない。その男がどう死のうと俺は構わない。だけど、凛一に何かあったら、凛一が許しても、俺は決して許さない」
静まらない俺の怒りを嶌谷さんは黙って受け止めた。



                                          


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


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Re: おはようございますっ!

内緒さん>連載完結お疲れ様でした。
3ヶ月も篭るのですか…いやそれぐらいしっかりとプロットを練った方がいいのでしょうね~
自分は行き当たりばったりで…まじでこの先どうなるのかわかりません。
そのキャラの感情になるとそのキャラが勝手にうごきだすのです。

実はもうここから先は昨日考えていた話と違ってきているんです。
自分でも驚きです。
慧一と嶌谷が動き出しているんですね~
そういう感覚でこの先も書いていきたいと思ってます。
完璧な物語を書こうとは思いません。その知識も技も持っていない。
ただ欲するままに書き連ねるだけ。
それをこうして読んでいただけることは、本当にありがたいと思っています。

読み返していただけたらめっちゃうれしい。
この事件の裏と表が同時にわかるから。
ゆっくり楽しんでもらえたら幸いです。

あの事件を違う側面から見ることができて興味深いです。
あのとき慧一と嶌谷さんはこう動いてたのね~と。
長丁場になってきましたが、がんばってくださいね。

私はすっかり夏休みモードでだらだらです。

Re: タイトルなし

おこちゃまがいると集中できないよね~
まあ仕方ないしっかり可愛がってあげて~
うちはまだ前期の試験中ですなあ~
まだまだお勉強が大変な模様です。
すぐ初盆がくるからだらだらは出来そうもないな~
つかお盆までにはこの話終らせたいんだがねwww
後はよろ~o(*^▽^*)o~♪


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