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2019-12

「彼方の海より…」 7 - 2009.07.30 Thu

リュウメトネラブ1

7.
この魔界では昼と夜の区別が付けにくい。
すべての部屋には窓など無く、外の様子はうかがい知れない。
ただ敷き詰められた磨り硝子のような天井が暗くなったり、明るくなったりして、それが夜と昼を区別する手段だろう。
一日の食事は二回で、それは地上と同じなのだが、料理の内容はというと…、殆どが食材の原型をとどめていないので、何を食べているのかわからない。
美味しいから文句は無いのだけれど、この間、リックに赤いスープが美味しいと言ったら「妖魔の血で作ったスープだよ」と、教えられ吐きそうになった。
もう二度と食材を聞くのはよそう。
リュウの為に何か作りたいと思って、料理でもと思ったが、さすがに尻込みしてしまう。

リュウと言えば、近頃は私が素直になったのを訝しがってか、時折疑惑ありげな顔で私を睨む。
私はリュウに抱かれるのが段々と嬉しくなってしまい、思わず甘えてしまうのだが、リュウにはあまり伝わっていないようだ。いや、もしかしたらそういう甘え方をする私を気に入らないのかも知れない。

ある晩の事、リュウが私をひどく痛みつけた。
今までに無いほどに酷いやり方で、私は怯え、泣き叫んで、必死で許しを請う程だった。
それでも、許してもらえず、何度も失神してしまい、その度にリュウは私を起こし、また責めるのだ。
身体中がバラバラになるほど戦慄き、このままでは死んでしまうと遠くなる意識の中で何度も思った。

暗い天井が次第に明るくなっても、拷問のようなそれは続き、終に私は屍のようにベッドに沈み込んだまま、指一本動かせなくなってしまった。
いつもなら傷ついた私の身体を必ずと言って良いほどに、魔力で治癒してくれるのに、リュウは何もせず、痛みで動けない私を冷たく見下すと、ベッドから離れた。
私は無言で部屋を出て行くリュウの背中を見送った。
何故だか、自然と涙が溢れてくる。

赤く鬱血した手首の跡を見た。縛られたわけじゃない。リュウは道具なんて使わないもの。
リュウが…私の手首を骨が折れる程に掴んで離さなかったのだ。なぜこんな事をするのだろう。私が抵抗するはずも逃げるはずもないのに。

もしかしたら私はリュウに嫌われたのだろうか…
それとも私に飽きたのだろうか。
だから私の傷を癒すことすらしなかったんじゃないだろうか…
そう考え出すと、それ以外にはリュウの行動の目的が浮かばず、私は酷く狼狽した。

いつかは飽きられるかも知れない、捨てられるかも知れない。それは覚悟していた。
だって何も取り得の無い人間の私に、リュウを引き止めておく魅力などあるはずも無いのだし、どうせ魔族みたいに長生きも若さを留めておく魔力もないんだ。
リュウは私を見限ったに違いない。
そう思うと、身体だけじゃなく心まで軋むようで辛くてたまらない。
私はそういう風に思いつめる自分が嫌になる。
もうやめよう…そう思い、暗い闇の眠りに誘われるままに眠りこんだ。
見るのは悪夢ばかりであったが…

「メトネ、大丈夫かい?」
私を揺り起こすリックの声で目覚めた。
「…あ…リック」
「酷くうなされてたよ」
「…そう」
「声もガラガラだね。昨晩は凄かったよ、君の声が辺りに響いていたもの」
「…」
羞恥を通り越して青くなった。あんな醜態の声を誰かに聞かれていたと思うと、死にたい気分になってくる。
「身体の方も凄いけど…起き上がれる?」
「…相当な努力がいるけど無理じゃないよ」
私は仕方なしに笑った。ここまで恥を晒してしまえば、隠すものなどないだろう。
裸のままゆっくりと起き上がる。
動くたびに身体のあちこちの骨や筋肉が悲鳴を上げているみたいに痛みが伝わって、思わず声が出る。
「可哀相だな…どうしよう…僕の弱い魔力でもこれくらいなら治癒できるんだけど…」
「かまわないで、リック。そんなことをしたら君がリュウに叱られてしまうよ。いいんだ、リュウが私をこうしたいのなら…それが主人の命なら、受けるしかないのでしょう?」
そういうことなのだ。
私はリュウの下僕でしかなく、私にリュウを愛する権利などないのだ。

「…リュウは何か別の考えがあるんだと…思うよ。君はいい子だから、大丈夫。そんなに思いつめるんじゃないよ」
「ありがとう…」
「実はね、ここに来たのは…リュウに君を呼んでくるように言われたんだ」
「リュウに?」
「リュウに来客があるんだ。君を見たいんだって…それで僕が使わされた。でも歩けそうもないんじゃ…」
リュウの命を果たせないとリックがどんな仕打ちを受けるかもしれない。
「だ、大丈夫だよ。待って支度するから…っ!」
私は急いで立ち上がろうとしたが、身体中に激痛が走りその場にへたり込む。
「薬湯に浸かって身体を温めよう。そうすれば痛みは取れるし、大分楽になるよ」
「でも時間が…」
「それくらいは大丈夫だ。どっちにしても君、全身を洗わなきゃ見られたもんじゃないよ」
私の返事を待たずにリックは裸の私を横抱きに抱え上げた。
突然のリックの行動に、私は一瞬痛みを忘れた。
私よりも背は低く、華奢なのにあまりにも軽々と私を抱き上げたからだ。
「リ、リック!降ろして!ひとりで歩けるから」
「なに言ってるの?」
「だって…」
いい大人が年下の子に裸のまま抱きかかえられてる様っていうのはさすがに忍びない。
「メトネをちゃんときれいにしてつれて来いって、言われてるんだ。遠慮しないで」
「そうじゃない…君より身なりの大きい私が抱えられてるっていうことが、幼い子供みたいに思えて身の置き所がない感じなんだ」
「僕にしてみりゃメトネは子供だけどね」
確かにリックも50年以上生きている魔族なのだから、私に比べれば随分大人なんだろうけど…。

始終身を竦ませる私を、あれこれとリラックスさせながら、リックは湯屋へと連れて行ってくれた。




                                         text by saiart  


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから
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この章の目的地はふたりが恋人になるまで。
さっさとそこに行きたいなあ~そこからまだ長いんだからさあ~ww







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● COMMENT ●

リュウ何!考えてるのっ?

こちらの方の、お話はホンワカですが、今回はリュウが怖かった!
何か気に入らないみたいだけど、メトネの方は、だいぶこちらの生活にもリュウにも慣れた様子なのに、却ってリュウがおかしい!?
誰に会わせたいのか気になります。
リック50代なのよね、すっかり忘れてました。

Re: リュウ何!考えてるのっ?

50代なのですがみかけは…次に挿絵を入れますので、それでリックの外見がわかるよん。

リュウはね~まあ、色々と葛藤中なのですよ。恋の初めってどぎまぎしちゃうもんね~
…まあ、自分は二次元にしか恋しないけどさwww

うおおお~~><

魔族の恋愛とか出産とかすごく面白かったです!
こういう設定が思いつくなんてすごい>▽<
リュウの生い立ちもすごく気になりますね~~
今回もぐいぐい引き込まれてしまいました~!!

まりさん

ありがと~
こういう設定って興味がないと読んでもらえないのはわかっているけれど、自分で納得しないと先には進めないから、頑張って考えました。
自分は思うに、大勢の人たちに向けては小説を書こうとは全く考えていないんですよ。わかる方だけわかってくれりゃもう十分に嬉しいんですね~
だから、まりさんみたいにこの設定を楽しんでくれる方は貴重でとてもありがたいです。
人に読ませる作品ではなく、自分が書きたい作品。それを楽しんでくれる方がひとりでもいらっしゃたらとっても幸せ。
たぶんこのスタンスは変わらないと思う。
要するにブログ小説であり、大勢を対象にしない個人的な世界での作品つくりだからね。

ファンタジーゲーム好きな方には違和感はないと思うんだけど。
でもこういう不思議な世界感をしっかりだしてくると、色々とキャラが生まれてくるんですね~百合のお話だって書けるでしょ?そういう妄想は楽しいですよ~


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