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2019-09

「彼方の海より…」  8 - 2009.08.03 Mon

8、
薬湯に浸かったおかげで、身体の痛みは和らいだ。
湯から上がると、リックが拭き布を手に持って私を待っていた。

「どうしたの?いつもの扱いと違うね」
私は私の身体を生真面目に拭くリックをからかうように言った。
「今日は特別。だってあの人が来ているんだもん」
「あの人って?」
私の質問にリックは答えず、代わりにきれいな着物を羽織らせてくれた。

「…凄い刺繍だ」私は着せられたチュニックの繊細な幾何学模様に見惚れた。
以前自分が公主であった頃は、絹や毛織物でこしらえた着物は珍しくなかったけれど、この邸に住むようになって、私の着るものは綿や麻のシンプルな服ばかりだ。
実はそっちの方が着心地が良く、私としては大いに気に入っているのだが。
「ミズキが自ら刺した刺繍だもん。凝ってるさ」
「どうしてこれを私に着せるの?」
「だから言ったでしょ?着飾って来いってリュウが言ったって」
「…」

普段しない装飾品で着飾られ、自分の似合わなさになんだか恥ずかしくなった。
「リック、おかしくない?」
「…良く似合ってる。さすがは地上では王様業していただけのことはあるね」
「それ皮肉にしか聞こえない。私が駄目な公主であることは知っているだろう。国を捨ててここへ来たんだから」
「国を守る為でしょ?上に立つものとしての責任は全うしたって言って良いんじゃない。今がリュウの色子でもさあ、メトネはちっとも卑屈になってないし、凛としている。僕はかっこいいと思うけど」
「…かっこ、いいなんて、生まれて初めて言われたかも」
リックの言葉に思わずおどけると、つられてリックも笑ってくれた。
なんだか少し気が晴れた。

客間までの回廊をリックと歩きながら、私は質問する。
「ねえ、リック。お客様って誰なの?」
「四天王のひとり、オセ・ゲーティアだよ。彼は7年ほど前に南星の地を治める王になったんだ」
「そう…」
四天王というぐらいなんだからリュウの他に3人の魔者の王がいるのは当たり前だ。今まで考えた事も無かったんだけど。
「すごい魔族なんだね」
「うん。彼の師匠っていうのが、サレオス・ラシュハていう四天王でね…、あ、王が次期の座を占める者を決めるのだけど、サレオスは次期王に推していた息子に殺されて、それでオセが四天王の座に就いたんだ」
「息子に?」
「そう」
親子で争うなんて、私には考えられないけど、魔界だからやはり血生臭いんだな。なんだか少し背中が寒くなって身震いする始末。

metone1


「どうしてそんなことになったの?」
「噂話によるとね…そのサレオスの息子っていうのは人間との間の子だったんだ。人間界で育ったっていうんだけど、とても魔力が強くてね。だからサレオスは息子に南星を統べる王になって欲しかった。けれど、そいつは固辞したんだ。怒ったサレオスは息子を殺そうとしたけど、逆に…殺されたって話。可哀相だろう?」
「…うん」
リックの言う可哀相がどちらにかかっているのかは明らかだが、私はその息子の方に同情してしまう。
なりたくないものに無理矢理やらそうとするなんて可哀相だ。それに人間界で育ったのだったらきっとそのままでいたかったはずだ。

「その息子さんはどうなったの?」
「知らない。元々半分は人間の血だったんだ。始めからそういう奴を王にしようだなんて思わなきゃ良かったんだ。人間の血が混じった者に魔界の地を統べて欲しくないもの」
「…」
「ごめん、メトネは人間でも好きだからね。怒らないでよ」
「怒ってないよ」私は微笑って答えた。
「私は地上で人間と魔族の混血なんて聞いた事がないけれど、居るんだね」
「殆どの魔族は能力の無い人間の子供など欲しがることは無いと思うんだけどね。人間と交わるのは恥だと思っている魔族も多いんだ…ああ、君は別だから」
「そんなに私のことを気にしなくてもいいけど…」
「いや、なんだかメトネを人間と思うより僕の友人と思ったほうが自然で、つい本音が出てしまう」
「私もリックとは本音で付き合いたいから、遠慮なく」
「とにかくそいつが殺されたって話は聞かないから、きっと生き延びていると思う。見つけたら僕が殺してやりたいくらいだね」
「…」
リックは比較的穏やかな魔者だと思うけど、こういう風な言い方をする時はさすがにちょっと怖い。


客間に辿り着くと、そこには20人ほどの魔者が寛いだ様子で談話している。その中心に設けられた円卓を向かい合ってリュウと…そのお客人が広いカウチに身を投げ出すようにしながら話していた。

明らかにリュウとその客と、回りの雰囲気が違う。
この者がオセ・ゲーティアという魔族なのだろう。
見事に赤く燃える色をした髪、それに相応しい浅黒い肌、秀麗な容貌だが、右目は瞑ったままで額から頬にかけて傷跡が見えた。隻眼の麗人だ。
なんだか見とれてしまって立ち止まっていると、その客人と目が合い、にこりと笑われた。
手で招かれ近づくと、その紅く輝くひとつの瞳が、私の頭から足元までをじっくりと見定めていく。
「これがリュウ・エリアードのお気に入りの色子か。公主様だっていうから、もっときらびやかな子をイメージしていたけど…結構地味…おまえこんなの趣味だった?」
オセのからかいにリュウは「まあな」と言い、苦笑した。

リュウはといえば、鮮やかに赤い短着の上に玉虫色の薄い着物を羽織っている。首元にはいつもの魔力を操る宝石を組み込んだネックレス。その上にある比類なき美貌に目をやった途端、私は俯いた。とても直視できない。
こんな綺麗な魔者に自分が抱かれているのが信じられない気がする。
心臓が鳴り、顔が熱くなった。
結局のところ、私はこの者に魅了されているのだ。



                                       text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
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エルミザードに関連する話を盛り込んでみた。




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● COMMENT ●

リック!!

リックのイラストをガン見です、メトネとの組み合わせが百合っぽい!
中身は50代でも、見かけがこのかわいらしさなら、メトネの「お友達」にぴったりです!

リュウの美しさを今回、再認識!!
オセも出てきてキャラ祭り~。
うれしいです~。

アドさん

こっちも読んでくれてありがと~
これもかなり個人的には面白いんですなあ~
まあ、自分だけで楽しんでりゃ世話ないんですがね。
この後…
次をお楽しみに。
リックは適当に作ったけど、だんだんと愛情沸いて来た~
メトネは5年したら死ぬって決めているから、もう目いっぱい幸せにしてあげます。
リュウとメトネの愛の日々を、アドさんはきっと喜んで読んでくれるよね~


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