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2019-09

宿禰慧一 「イリュミナシオン」 14 - 2009.08.05 Wed

14.
俺は暫く考えた。
自分の凛一への想いを誰かに打ち明ける。そういう気持ちになった事は今までに一度も無い。
だがこの状況はどうだ。
大して面識の無いのない男に、俺は恐ろしい程真っ正直にぶちまけているじゃないか。
押し隠してきた俺の今までの凛一への恋慕は決して綺麗なものじゃない。
血の繋がった弟への肉欲というものは、同性愛よりも認められない。
だが血の繋がった弟だからと言って、愛することは許されないのだろうか…

インセスト・タブーについて俺は色々と考えてきた。
結局のところ、近親者に性欲があることを禁忌とするのは宗教的な大儀であり、自然の摂理としては容認される説もある。その逆で、交配で劣性遺伝子を生み出さないように生物学上、遺伝子の中に組み込まれているという説もある。
どっちにしても喜ばしいことでもないだろう。
それに同性同士で劣性遺伝子もクソもあるか。
単に俺は凛一を俺のもんにしたいだけ。単純な理由だ。
だけど、もしそれを押してしまったら俺の意識の中で、その想いは全く別の感覚になりえてしまうものなのかもしれない。それが怖いんだ。
それをどう理解してもらえるのか…くそっ、うまく言葉に出来ない…

黙り込んだ俺に痺れを切らしたのか、嶌谷さんは口を開いた。

「君と凛一は酷いケンカをしたことがあるよね。凛一がまだ俺と知り合う前だから、中一の夏ごろの話か…凛一の火遊びを君は怒った。そのことで凛は長い事自分を責めていて、兄貴に面と向かって顔を上げられやしないと悔やんでいた。快楽の誘惑に自分が弱い所為だと嘆いていたよ。思春期真っ只中だし、あれほどの容姿で本人は好奇心旺盛。そして孤独だ。その時だけのセックスを欲しがったのを俺は責めはしない」
「…」
あの時の俺はそんな凛一の孤独を理解できなかった。ただ不良行為をしていたことと、それ以上に俺が慈しんできた肉体を他人に委ねたと言う俗物的な意味合いでの凛一の行為が許せなかったんだ。

「俺はね、凛一がかわいそうで仕方なかった。なぜこんな…心も外見も綺麗な子を家族はほおっておくのか…特に慧一くん、君はわかっていたはずだ。凛一がお姉さんを亡くし、喪失した心に愛を欲しがっていたことを。お姉さんと君が赤ん坊のころから凛一を育ててきたと聞いた。凛一は君の愛情を疑ったことはない。俺に何度もそう言った。そんな君が何故凛一を支えられなかったのか…俺は不思議でならなかった」
「…」
嶌谷さん、あなたにはわからないんだ。俺があの時凛一の傍にいても、俺には凛一を救う事はできなかった。俺自身が凛一を食うかもしれない。そんな性欲塗れの俺が凛一の傍にいたっていい影響は与えない。俺は俺自身が恐ろしかったんだ。だから凛一から離れた。

俺はどういえばいいのか迷いながらも、言葉を選びながら話し始めた。
「嶌谷さん、凛一があなたを心から信頼し、頼っていたのはわかります。あなたがいたから今の凛一がいるのだと思います。だけど…俺の凛一への想いは、単純に口で言うことは出来ない気がするんです。
愛している、抱きたい、だけど、抱けない。罪だから?いや、もうそんな一般的な道徳の話じゃない。
俺が凛一を愛するのは弟だからではなく、ただ凛一という人間を愛してきたのだと思う。だけど凛一が俺の弟だからこそ、こうまでも愛してしまうものだともいえる。
俺と凛一は孤島に取り残されたたったふたりの人間のようだ。
愛する者はお互いでしかない。求めるのも慰めるのもお互いだけ。だけど、血の繋がった俺たちは兄弟という縁は切れない。切りたくないんだ。」
「セックスをしたら凛一とは兄弟ではいられなくなると思うのかい?」
「少なくともマトモな兄弟とはいえない。遊びで寝るなら別だ。だけど俺たちの間でそれは考えられない。そして、寝た時点で、凛一も俺もその後、未来の別れを予期しなければならなくなる。絆は色を違えてしまう。そう思いませんか?」
「絆の色合いか…難しいね」

「俺は凛一にとって絶対的な存在でいなきゃならない。親父がいても家族は俺と凛一だけと言っていい。家族なら凛一がこれから誰かを愛そうが、結婚しようが喜んでやれる。だけど、寝てしまったら…俺は凛一を手放せなくなる。誰にもやれなくなる。他人と寝る凛一を許せないだろう。俺は相手を憎むかも知れない。そういう俺を凛一は憎むかもしれない。
…俺たちの心は離れ離れになってしまう。
俺はそれが恐ろしいんだ。
今の凛一をほっておいて勝手な言い草だと思います。だけど、俺は大学院を出たら凛一と暮らしたいと思っています。凛一が許すかどうかはわからないけれど、できるなら一緒にいてやりたい。
俺は…自分を半分殺す事で、凛一の兄でいられる。凛一を孤独にはさせたくない。だから…兄として、彼を見守っていたい」
そう…俺はただ凛一を見守る役目として存在しようと、自分に言い聞かせている。それが一番正しいことだからだ。だけど、それを本当にできるかどうかは…俺にだってわからないんだ。

「もし、凛一が慧一くんと寝たいって言ったら?」
一番考えたくないことを、この人は抑揚も無く簡単に言ってくれる。俺は嶌谷さんが嫌いになりそうだ。
「…考えた事もない。凛はそんな気持ちを俺に対して一瞬でも考えたりはしていない。これは確信できる」
「今は無くてもいずれは…凛一は慧一くんにそういう思いを抱くかもしれない」
「あなたが言わなきゃ凛は気が付きはしない。そこのところの鈍感さは筋金入りだ」
「じゃあ…俺がゆったら?」
「…殺しますよ。俺の凛を不幸にしないで下さい。あの子は光り輝く子だ。俺は母親からあの子を、凛一の未来を預かったんだ。俺の手で光を翳らすわけにはいかない。勿論嶌谷さんにもです。あの子の信頼を裏切らないで欲しい」
「…わかった。どっちにしたって俺はオブザーバーでしかない人間だ。俺も凛一には幸せになってもらいたいと思う。だが、あいつが本当に君を欲しがったら、君にさえ止められないと思うよ」
「じゃあ、その時は兄弟の縁を切ってやりますよ。凛はそれを望まないだろう…だから俺たちが交わる事は永遠にない…」
そこまで言って俺は思わず苦笑した。なんという閉塞感だろう…
「…矛盾してますよね。凛が欲しくて堪らないのに、絶対に寝たくないなんて…」
「…」
「とても矛盾している。だけど、それが俺なりの真実の愛だと感じているんです」



                                              text by saiart

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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


どこまでも続くこのドライブ…いつになったら凛のところに着くのか…つか、ややこしい話を自分も考えたもんだな~と、地味に反省…


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