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2019-09

「彼方の海より…」  10 - 2009.08.10 Mon

10.
部屋に戻ったリュウは、抱き上げていた私をゆっくりとベッドに降ろしてくれた。
裸のままでは恥ずかしくて、何か着るものをと手を伸ばすが、リュウはそれをさせなかった。
ベッドの端に腰を下ろし、私の腕を取る。

「辛かったか?」
「…はい」
「怒っているのか?オセに抱かせた事」
「…いえ、リュウは私の主人なのだから、私はあなたの命には従わなくてはならないのだと思っています」
「おまえは俺を憎んでいると思っていた。だから、これ以上俺の傍に仕えるのはつらかろうと思ったんだ。オセは人間好きだからな。ああ見えて情は厚い。俺よりもメトネには居心地がいいだろうとな」
リュウが私を思ってオセにやろうとしたのは、結局のところ、私に飽きたという意味ではないだろうか…

「私はもうリュウの傍には置いてもらえないのですか?…私に飽きてしまった?だからオセに私をあてがうの?」
泣きたくないが涙が溢れてしまう。リュウは溢れる涙を指で抑えた。
捨てる身ならばそんなに優しくしないで欲しい。
「…おまえはどうされたい?」
「私は…リュウの傍に居たい」
嘘はつけなかった。リュウの手の平の温かさが、何も纏うなと言っているから。
「ではそうしよう」
リュウの言葉に私は驚いて、リュウを見上げた。
「え?…だって私は役立たずなのでしょう?」
「なんだ、さっきの言葉を気にしていたのか?他の奴に役に立たなくてもいいさ。俺に役に立っていりゃ、それでいい。だろ?メトネは俺好みの身体だからな」
「嘘だ…だって…」あんなに酷い目に合わせて、私をいたぶって…

「俺のつけた傷はまだ残っているな。痛いか?」
「…はい」
リュウは私の両手首を持ち、赤い傷跡を見つめた。
そして、口で呪文を唱えながら唇でそこへ触れた。赤い傷跡は跡形も無く消え去った。同時にじりじりとした痛みも無くなっていく。
「メトネはかわいいからな、つい本気で苛めたくなるんだよ」
リュウは口端だけで笑って私を見る。
可愛いと言われて、私は顔から火が出るように熱くなった。
いい歳の男が、かわいいといわれて嬉しくなってしまうのが自分でもどうしてなのかわからない。でもリュウから言われると宝物みたいに思えて胸が鳴るのだ。

「おまえは俺に心を許していないと思っていた。まあ、おまえの大切なものをすべて奪ったのだから当たり前だ。それなのに、俺はおまえが欲しくて堪らなくなる…俺がおまえみたいなよわっちょろい人間に本気になるのが自分でも不思議で仕方ないがな。おまえのどこが俺を惹きつけるのか、俺にもわからないでいやがる…本当にメトネは変わり者だな」
「…」
夢見たいなリュウの言葉。
私のことを言っているとは思えなかった。
リュウは私をからかっているのだろうか。

リュウは言葉を紡ぎながらも、私の傷ついた身体をひとつひとつ癒していく。
傷ついた心も同じように癒されていくようだ。

rm3


「俺を好きか?メトネ」
「…はい。心から」
「愛していると誓うか?」
「私の命に賭けてリュウを愛していると誓う」
「では、メトネ・レヴィスは今よりリュウ・エリアードの最愛の恋人とする。この誓いはどちらかが生を全うするまで破られぬものだ。
そして、リュウ・エリアードの誓いは、誰にも破る事はできない。メトネにもな。
おまえが俺を裏切る事があったら、躊躇無く殺す。いいな」
「はい。リュウにならいつだって殺されても本望です。だけど、私を置いて死んだりしないで下さい」
「…はは…おまえ、俺にそれを言うのか?俺は心臓に剣を突き刺されても死なない破格の身体なんだよ。こればかりは自分でもどうしようもない…産んだやつを恨んでも今更仕方のない話だしな…」
そういうとリュウは眉を顰め、苦い笑いを浮かべた。

「これも運命だと思っている。そしてメトネを選んだのも俺の運命だ。人間は4,50年の寿命しかない。どう転んでもおまえは俺より早く死ぬ。だが生きている限りは俺がおまえを守ってやる。メトネが年老いて死ぬまでかわいがってやるよ」
「老人の私はみすぼらしくて、きっとリュウは見捨てると思うけど…」
「メトネはじじいになってもかわいいさ。髭を生やしたメトネじいさんと暮すのもまた楽しかろう」
「…ひどい…私は歳をとっても髭なんか生やさない」
口では責めても、情が伝わってくる。
私は嬉しくて幸せすぎて、このまま死んでもいいと思った。

「魔者は記憶を忘れることはない。良いことも嫌な事もすべてこの頭の中に残る。だから、メトネと過ごす時間は良い思い出ばかりにしたい。…メトネが死んでも、おまえの記憶は俺の一番大事な場所に刻み込んで置きたいからな」
「はい、リュウ。私はあなたの傍にいて、あなたを幸せにしたいと願っている。私は息を引き取るその時まで、あなたの傍に居ると誓います」
「では、誓いの証にこれをやろう」
リュウは左薬指の青い宝石の嵌め込まれた指輪を私に差し出した。
私はそれをじっと見つめたが、手を伸ばさなかった。

「これでは不服か?」リュウは訝しげに私を睨む。
「違う…私には似つかわしくない物です。それに…リュウがいれば私は何もいらないもの」
「…人間というのもはエゴばかりの強欲な者ばかりだと知っていたが、メトネは物には執着しないんだな。いや、おまえはそれ以上の欲深い者かもしれない。俺を捕まえて、貢がせているのだからな」
「貢がせてなんかいない。リュウは意地悪だ!」
「ムキになるところもかわいく思えるんじゃ、俺の方が分が悪いな。では、これを与えよう」と、言うとリュウは腰に差した短剣を取り出し、自分の手首を少し切った。
リュウの赤い血が指輪の上に零れ、青い宝石が血と混じり、美しい紫色になる。
リュウはその宝石だけを抜き出して、私の心臓の近くに当てた。
片方の指を唇に当て、暫く詠唱を唱えると、宝石は消え、私の胸に小さな百合の花を刻み込んだ。
「これでいい。離れていてもメトネが俺を強く念じれば、俺はすぐにでも駆けつける。おまえを危険な奴からも守れる。おまえに触れたものはすべからく俺がぶっ殺すからな」
リュウの言葉は嬉しくもあり、恐ろしくもあり、なんだか奇妙な感じがして複雑な顔になる。

「あの…リュウの恋人になるということは凄いことなの?」
私は胸に刻まれた紫の百合を指でなぞりながら、問うた。
「メトネは本当にアホだなあ~俺の恋人になるってことは、この世の誰よりも幸せになるってことなんだぜ。わかったかい?俺のかわいい子」
本当に?と問い返す前に、リュウは私を抱きしめ、口唇を奪った。
そのままベッドに押し付けられた私は、リュウを受け入れる。
私は抵抗などしない。もっとリュウを感じたい。もっとリュウを喜ばせてあげたい。
それが私の一番の望みだからだ。

私の一生がいかに短かろうが、そんな事はかまわない。
ただ、リュウと共に生きる事。
それが、私の望み。


    メトネ日記 第二章 完



                                       text by saiart


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