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2019-09

宿禰慧一 「イリュミナシオン」 24 - 2009.08.29 Sat

24.
その後、紫乃とは何度か街中で会った。誘われれば食事もしたりもした。
凛一の事を切り出し、俺のいない間、目を配って欲しいと頼むと、昔通りに付き合えと迫られ、凛一の為だと承知した。とはいえ、元の鞘に納まる気は、どっちにもないことはわかっている。
紫乃は凛一に対する俺の気持ちを糾弾したがっていることは目に見えていた。
「凛一とはもう寝たかい?」どこかで聞いたことある質問だと、ウンザリとなる。
「寝ないよ」
「まだ凛一と寝ることが怖いのか?汚す事になるって思ってんの?」
「…紫乃、拘っているのはおまえの方だろう。俺は凛一とは寝ない。それだけだよ」
「ふ~ん」
あからさまに疑う眼差しで俺を見つめると、目の前のコーヒーを啜った。

俺の凛一に対する気持ちを知っているのは、嶌谷さんと紫乃だけだ。
用心の為に口止めしておいた方がいいのか、正直迷った。だがそれを紫乃に言ってもまた条件を出されるだけだ。
紫乃と今更縒(よ)りを戻したところで何になる。俺はともかく紫乃にとって、俺はあまりにも見返りが無さ過ぎる男だ。
紫乃はバカじゃない。付き合いを承知した俺と本気でどうかなるとは思っていないだろう。
俺は紫乃には幸せになってもらいたかった。
だから本当なら、こんな風に会ったり、凛一のことを頼んだりするべきじゃないんだ。

「紫乃、おまえの方こそ、誰かいないのか?」「慧一が俺の心配してくれるなんて…随分変わったね」「おちょくるなよ。俺は本気で心配しているんだ」「本気で心配する奴が、元恋人に弟の世話を頼むかよ」「だからそれは…」
こうなると俺の負けだ。頭を下げるしかない。
「俺は俺で好きにやっているから慧一が気に病むことじゃないさ」
「…」
紫乃はいつだって結局最後には俺を甘やかしてしまうんだ。

夏休みも終わり、九月。俺が大学院に戻る日が近づいてくる。
凛一もどことなく寂しげな様子で、それを見る度心が痛くなる。
何度もお互いの気持ちを話し合って決めた進路ではあるが、別れが近づくと折角の決意も挫かれそうになる。
「寂しくなるなあ~」と、独り言のように言う凛一にたまらなく「一緒に来るか?」と、言うと首を横に振る。
俺もおまえ以上に寂しいんだよ、凛…

戻る二日前、俺は紫乃を呼びつけて、凛一の事をしかと頼み込んだ。
本当は嶌谷さんにもお願いしたいところだが、凛一が嶌谷さんを見て、また月村を思い出させても酷な気がした。

何度が来たことのある洋食屋で、紫乃を誘い昼飯を食っていた。
俺は相も変わらず、凛一の事を頼むと言うと、紫乃は不平不満な顔で俺を睨む。
「…いい加減、子ども扱いするのはやめにしたらどうだ。事件の事は俺もいささか情を汲むところではあるけど、おまえはあの子にうつつを抜かしすぎだ」
「…何とでも言うがいいさ。もうこればかりは自分でもどうしようもないんだよ」
「呆れた男だよ。そういう奴に惹かれている俺も同じようなバカの端くれかもしれんが…」
「紫乃が俺に対して色々思うところがあるのはわかるし、憎く思ってくれてもいい。だが、頼むから凛一には、辛く当たらないでくれよ」
「…正直に言えばだ。俺は凛一をかわいいと思うよ。こましゃくれていてもな。おまえの弟じゃなけりゃ、とっくに食ってら」
「…」
俺は無言で紫乃の顔をジロリと睨んだ。
「今の学生はな、こっちが誘わなくても向こうからお願いします、って頭下げてくる奴もいるんだぜ。凛一はどうやら簡単には乗っからせてはくれなさそうだがな」
「おい、それぐらいにしとけよ。ぶん殴るぞ」
「別に…おまえが俺を殴れるかい。それより凛一が狙ってる子を知ってるか?」
「ああ、頭のいい子だって聞いた」
「学年でトップの子だよ。容姿の整ったかわいい子だがね、あれは全くのノンケだ。それも相当に身持ちの固い純粋培養型。そういう奴を本気で落としたがるのが宿禰凛一だよ。兄貴よりよっぽど手強い」
「…悪かったな」
「俺はね、その子が哀れでならない。まるで狼に狙われたウサギだ。凛一が全力で襲いかかりゃあ、あの子だって無傷じゃいられまいよ。おまえが必死に守ってやろうとしている弟、宿禰凛一ってのはそういう性質(たち)の子だ。要するに俺が手を差し出したって、引っ叩かれるのがオチって事だ」
「…」
紫乃の言うことはわかる気がする。
俺が対凛一とその他への態度が違うという事と似たり寄ったりだろう。
それより、凛一はこの間、その子に振られたと言ってたが…
その後はどうなったんだろう…

「おい、慧一。おまえ人の話聞いてる?」
「…聞いてる」
と、顔を上げ、前を見ると…何故か、凛一が笑いながらこちらに歩いてくる。
一瞬、白昼夢なのかと目を疑った。

「慧も来てたの?丁度良かった。俺、奢ってもら…」言葉を切らした原因は俺ではなく、向かいの席に座る奴の存在を知ったからだ。
やぶ蛇もここまでくると笑うしかなかろうぜ。





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● COMMENT ●

キター

好きの行方の中でも印象的なシーンの慧一サイド、この時の慧一と紫乃って、こういう関係だったのね!
リンはかなり誤解して逃げちゃったのに…。
再会した、慧一に対する紫乃の気持ちを軽ーく扱うのに、リンの動揺には、こんなに取り乱す慧一お兄さん。

慧一と紫乃の会話は、色気混じりだけど大人で魅力的です。
サイさんと3人の会話とか読んでみたいです。どんなだろう?

アドさん

あの場面は慧一視点を描きたかったんで、やっと叶いました~
慧は凛一バカなので、凛一以外がどうでもいいんです。
人間としては不完全ですね。でも自分はそういう慧が大好きなんですね~
紫乃はやっぱり慧が好きなんですね~この一方通行の恋の行方は…どうなる?

…わかっているのは自分だけ~www


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