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2019-11

宿禰慧一 「イリュミナシオン」 25 - 2009.08.31 Mon

25、
最悪だ…きっと今の俺は紫乃に言わせればピエロにしか見えてなかろう。
薄笑いを浮かべて凛一に笑いかけている紫乃に無性に腹が立ってきた。
「こんなところで家庭訪問かよ」
凛一は言葉に怒りを交えている。
「…三者面談でもって思ってね」
揶揄うように言う紫乃も紫乃だ。

躍起になって紫乃に挑みかかろうとする凛一を押さえ、俺は隣に座らせた。凛一は運ばれたランチにも手を出さずに紫乃の方を睨みつけている。
この様子じゃあ,凛一と紫乃は学校内で何かと揉めているのかも知れない。

出来るだけ穏便に済ませようと、声を落として凛一に説明する。
「俺が向こうに帰ったらおまえが一人になるだろう?だから…藤宮先生に頼んでいたんだよ」
「…」
凛一は何も言わない。俺は言葉を続ける。
「担任は当てにならないって凛一が言ってたから…誰かおまえを…守ってくれる人がいる方がいいと思ったんだよ…だから、凛…あんまり先生に迷惑かけるんじゃないよ…」
自分で言いつつ、あほらしさにシラけてくるが、とにかく取り繕わなければならないと必死になる。
どっちにしろ…かなり拙い状態だとはわかりきっていた。
俺が紫乃と知り合いで、凛一の副担任であるとわかっていて、しかもそのことを黙っていたのは、俺の方に非がある。

凛一はふと立ち上がると、向かいに座る紫乃の眼鏡を取り外し、何かを思い出すように言葉を綴った。
「…そうだ、あんたの顔、思い出した…姉貴の…梓の葬式の時来てたよな。それと…前の俺ン宅の前をウロウロしていたのもあんただ…梓の男?…違う…おまえ…」
「俺の大学の時の友人だよ」
これ以上隠すのは無理だと思い、俺は仕方なしに応えた。
「…友人…じゃなないだろう、慧…はっきり言えよ」
勘のいい凛一は紫乃との関係に気づき始めている。
「流石は慧一の弟だけあるじゃないか。察しがいいな。そうだよ、俺と慧は付き合っていた。恋人…だった」
また、余計なことを言いやがると、舌を打った。
「…今は只の友人だよ」
慌てて言い訳をしても滑稽でしかならない。もう俺は、さっさとこの場から立ち去りたい気分で一杯だ。
「昔…ずっと前に言ってた別れた彼って…こいつの事だったのか?…慧」
…そんな事を俺はおまえに喋ったのか?…いつの話だ?全く覚えてない…と、言うか俺はおまえの事以外はあまりにも手落ちが多いんだよ。
「そうだよ。でもその話は今度の相談とは関係ない。おまえの事を誰かに頼みたかったのは本当だ。紫乃が…藤宮がおまえの副担任って知って…おまえに黙っていたのは悪いと思ったけど、変に詮索されるのも嫌だったんだ。それで…」
「それで、こうやって学校以外で仲良く一緒に昼飯食ってるってわけ」
「…仲良くじゃないよ」
「そんなに突っ張って言うことじゃないだろう。…宿禰君は学校でもいい子にしているって言ってやってんだぜ?」
だから凛一を挑発するな、紫乃。こいつは顔に似合わず凶暴なところがあるんだから。
俺は内心凛が手を出さないかと、冷や汗もんだった。

「いつから…いつから知ってたんだよ」
凛一は今度は俺を責める。
こうなったら正直に言うしかない。どう取り繕ったって紫乃のことは事実だし、凛一と仲たがいをするのはもう御免だからな。
「6月ごろだ…言おうとは思ったんだけど…おまえが元気そうに高校に行ってるから、余計な事を言うのは止めておいたんだ。ゴメン」
「そうか…家では慧一が学校ではこの先生が俺を心配して、変な事をしないか監視してたってわけ…」
「凛、そうじゃない」
「もういい。…俺のことで色々心配かけて悪かったな。俺はもう独りでもいいから、ほっておいてくれていいよ。あんたらに…かまって欲しくない」
「凛」
「悪いけど、俺先に帰るよ。慧、ここのランチは兄貴が奢ってよ…じゃあな」

俺は店を出て行く凛一の背中を見送り、その姿が消えると俺は深くため息をついた。
「追わなくていいのか?」
「無駄だよ…ああなったら凛は気が済むまでは俺を許さないからな…多分、大丈夫だろう…あいつはああは言ってても、かなりの寂しがり屋なんだよ。昔から誰からも見られたくなくて、納戸に隠れてひとりでこっそり泣く子だった…」
自宅に帰って、許しを請うしか手立てはないなあと思いつつも、俺自身がどんどん落ち込むのを見かねたのだろうか。紫乃は哀れんだ顔で俺に言う。
「そんな顔するなよ、慧一…わかったよ。おまえがいない間は俺が寂しがらないように、凛一をかわいがってやるから、安心してアメリカへ行っちまえよ」
「…安心できない言い方をするな」
そう言いながら、俺は紫乃を心から信用している自分にも驚いている。









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