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2019-09

宿禰慧一 「イリュミナシオン」 26 - 2009.08.31 Mon

26.
 自宅に帰っても、凛一の姿はなかった。
 あの後すぐに紫乃と別れ、帰宅した。もう二度と凛一と仲たがいをするのは絶対に嫌だった。
 凛一の部屋に行き、ベッドに腰掛けて弟を待つ。
 どう説明すべきなのかはわかっているつもりだが、なんだかそれも億劫になってしまう。
 本当のところはどうだっていいんだ。
 凛が俺を見捨てなけりゃ、俺のものでいてくれりゃ…それだけで…

 この独占的な支配欲は凛一にとって、不必要なのだとわかっている。
 俺は凛一を失うのが怖いだけなんだ。
 凛が他の奴に懸想をしていると思うと、兄としての部分は喜び、愛欲を持っている片方は嫉妬をしている。
 そういうことだ。プラマイゼロになりゃいいんだが…上手くいかないのも現状で、この有様…
 結局、俺という人間の性(さが)とはこういうものでしかないのか…

 部屋の窓から西日が差し込んでくる。ああ、もう夕刻になったのか…そう思い始めた頃、部屋のドアが開き、凛一の姿がおぼろげに見えた。
「慧…」
 凛は驚いた様子で俺に近づいてくる。
「…お帰り、凛」
「どうしたのさ。こんなところで、昼寝でもしてたのか?」
「寝れないよ。おまえをあんな気持ちにさせたままにして…すまなかったよ」
「もういいよ、気にしてないし…」
 俺の隣に座り込み、肩に凭れる凛一が無性にいとおしくなり、その頭を引き寄せた。

 愛している…愛している、凛一、おまえの存在だけが俺を生かしているんだ…

 俺を許すと言う凛一の言葉を聞きながら、俺はまだ天秤が釣り合ったままでいられると感じていた。
 キスが欲しいという凛一の誘惑にも、抑制が効く自分がいる。
 大丈夫、まだ理性は保てるさ。
 おまえを守るために、俺は存在するのだから。

 俺の膝に乗り、幼い頃のままに俺を抱きしめるこの存在を、この距離を、俺は失いたくない。
 凛、おまえは俺を守る城になると言ってくれたことがあるね。覚えているかい?
 俺はね、おまえと言う城の中に身を潜めているだけの脆弱な生き物なんだよ。
 おまえの城を出た時、俺は、きっと…

「暫く離れ離れになってしまうけど、いつもおまえのことを思っているからな。何かあったらすぐ連絡しろよ。一目散に凛の元に帰ってくるから」
「慧一こそ、他の男と遊び惚けて俺を忘れるなよ。俺を捨てたら承知しない」
 おまえを忘れるなんてこと…一生できまいよ、凛…


 なあ、凛…
 俺のすべてはおまえの為にある。
 遠くなく、おまえは大人になり、しっかりと自分の道を歩いていくのだろう。
 そして、その傍らにいるのは俺じゃない誰かだ。
 俺はひとり残される。
 だから、その前に、その日が来たら、どうか俺を裁いてくれ。
 兄貴なんかいらないと捨ててくれ。
 そしたら、俺は…消え去ろう。
 すべてをおまえに残して、跡形も無く…

 どの男よりも、強く、おまえの中に残る存在になるために…



「イリュミナシオン」第一部、完。





                                          


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● COMMENT ●

慧一編完結おめでとうございます!&お疲れ様でした!
本当に慧一は愛の人ですね。
そしてこの献身ぶりはまさにドM!
慧一を生み出し、ここまで育てたサイさん、さすがです。

それから、ミナをよろしくお願いします。
本当にすいません…。

さくちゃん

ありがとう。慧一をどこまで書くか、ちょっと悩んだ~
凛の最後と同じ空港で、とも思ったけど、ここらへんで一旦止めておこうと思った。
でも、二年後だからすぐ書ける気はする。
リンミナの蜜月をどれくらい書くかによるよね。
それこそ、修学旅行編やら体育祭編やら書こうと思えば書けるけど、たぶん自分が書きたいのはそういう日常じゃなくて、恋の行方なので、これからの二年はそう長くないと思うんだ。実はそこからの方が長いと思う。
さくちゃんと決めた結末へ持っていくため、これからミナになり、じっくりとその心に従って書けたらと思う。
見守っててね。

NoTitle

遅くなりましたが慧一兄ちゃん編最後まで読みました♪
慧一兄ちゃんの凛一くんに対する想いがぎっしり詰まっててじ~んときました。
こんないいお兄ちゃんに愛されて凛一くんは幸せ者だな~v-238



まりさん

ここまで読んでくれてありがとね~
重かったでしょう?
慧一になりきると完璧にマゾになれますwww
でもそういう慧が好きなんですね~
慧はしばらくこういう耐える感覚の人ですよ。
たぶん凛一からは離れないんだろうなあ~
でも凛一にしてみればこれが本当にしあわせかどうかはわかんないよね~

このあとも続きますので、またよろしくです。

凛一編を 続いて読もうと 思ってたんですが、慧一編を 読んだ方が この二人の関係も 良く理解出来、私の好きな梓の事も書かれていると 教えて下さったので 今日は 「イリュミナシオン」を!
それにしても 私の 思い違いでなかったら、サイアート様は 嬉々として この「イリュミナシオン」を 書かれてますね。
慧一が 好きなのも すっごく 伝わって来ましたよ~♪(勘違いでなければ)

慧一の心の描写には 素晴しくて 感動! 言葉、文字で表すには 慧一は すっごく単純で複雑な人だから 大変だったでしょ!?
でも 彼の気持ちが 良く分かったし 読み応えがあり 面白かったなぁ
時々 どうしようもなく 辛く暗く哀れでは ありましたが、それも 作品に 惹き付けられる魅力でした。

時候系列的には 次は 紫乃編かな? 模索しながら 次に読む作品を 決めようと思ってます。
また 長いコメになってしまい (;´・ω・`)ゞごめんなさい。。。byebye☆

けいったんさん>コメントありがとうございます。

そうですね~当時、ミナ編は私の担当ではなく、そしてふたりの関係があまり進展していなかった所為もあって、私の意識が別の方向へスライドしていた時期だったんですね。
最初は慧一編をここまで詳しく書く気はなかったのですが、ついつい力が入ってましたね~
凛一編の「追想」の部分を書いてて、常に慧一を意識していましたからね。
その裏を思いっきり書けて楽しかったです。
凛一は私に近い人格ですが、私に全くない慧一を書ける楽しさが溢れてしまいましたね~
慧一編はこちらが思うよりも沢山の皆さんの反響があったので、書いて良かったと思った当時でもありました。

こうして、また読んで頂けると、本当に書いて良かったな~と、また嬉しさが倍増してしまいます。

そうですね~紫乃編は比較的早く書いたものです。慧一編よりもずっと前です。
後はミナ編と凛編と慧一編を並行しながら読むのが一番なんですが…難しいですね。

長いコメ、大歓迎ですよ。
またどうぞ~楽しみにしておりますo(*^▽^*)o~♪


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