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2019-09

ユーリとエルミザード  「黎明」 4 - 2009.09.03 Thu

4.
ヴァレリアウスとユーリが帰る日が来た。
ヴァレリアウスはエルミザードに右手を差しだした。
エルミザードは今までになくヴァレリアウスの手を強く握り締めた。少しだったが、笑う表情も以前とは違って自信のようなものが感じられた。それはユーリの影響だとヴァレリアウスは理解した。

「短い間だったけれど、楽しかったよ、エルミ。また会いたいね」
「ええ、ヴァル。実は僕、来季は王立学院の入学試験を受けようかと思っています。ユーリに誘われたんです。時間はあまり無いけど、一生懸命勉強します」

エルミザードが学院を受験するという話は、昨晩ユーリから聞いていた。ヴァレリアウスは心から喜び、安堵した。
エルミザードを、監視する…という言い方は悪いが…その点に置いても、魔族の血を持ったエルミザードを野放しにはできない。師と言えどもライラスひとりにその責を負わせるのは、エルミザードを拾い、ここへ連れて来たヴァレリアウスには、重すぎることに思えたのだ。

今後エルミザードに降りかかる災いは、相当なもの。彼の予知力はそう示している。
ならば、12神の恵みを最も受けるエイクアルドの首都イルミナスの地にエルミザードを匿う方が、まだ魔族の手から逃れられる手立てはある。そして、エルミザード自身が強く正しく生きるための力と精神を学び、育てねばならない。
それを導くのは自分の責任でもあると、感じていた。

「そう、よく決心したね。私も応援するよ。私は試験官のひとりだが、エルミに甘い点をやったりはできないからね。合格する為には自分自身の知恵と知識、体力を養う事だ。試験期間は十日間。学力も必要だが、何より身体と精神の強靭さを試されるんだ。しっかり準備をするといい。でもエルミ、君は幸運だね。ライラスはまたとない素晴らしい教師だよ。しっかり彼の教えを学びなさい。ライラスの教えをクリアできれば、君は間違いなく学院生徒となれるよ。保証する」
「ちょっと待って、ヴァル。エルミの心配ばかりで…私の受験に際して言うことはないの?」
ユーリは不服そうに口唇を尖らせた。

「ユーリ、君は言わずもがな…お歴々の高尚なご教授に囲まれているじゃないか。それで落ちたら…サラディス家は継げまいよ」
「別に…継がなくていいのなら、肩の荷が降ろせていいや」
「そんなことを言ったらお父上もお母上も悲しむよ。君に期待する大勢の者たちの落胆する顔は、君も見たくなかろう?それでなくてもユーリは二百年来の暁の魔道士だと、天文家のミダヤ婆様のお告げがあったんだ。間違いなくユーリは選ばれた魔術師さ。ユーリが合格しなくて、他の誰があの門を潜れると思う?私の太鼓判はこれ以上なく強く押すことは間違いないよ」

多少のゼスチャーもおべっかも交じりながら、すらすらと言葉を紡ぎだすヴァレリアウスに、慣れた事とはいえ、ユーリも開いた口が塞がらない。
「…聞いてて恥ずかしくなるから止めてくれよ、ヴァル」
「すごいじゃないか、ユーリ。僕も頑張って試験に合格するように頑張る。ユーリと机を並べてヴァルの授業を受ける日を、絶対夢で終わらせないよ」
エルミザードは自分の事のように満面の笑みで喜んでいる。それを見るとユーリは百倍の元気を貰った気になり、その笑みにつられる形で笑顔を浮かべた。
「わかった。私も頑張るよ。エルミだけ合格して私が落ちたら、それこそ、帰る家などなくなってしまいそうだからね」
「約束だよ、ユーリ」
「ああ、絶対だ」
ふたりは昨日から何度も交わし合った約束の誓いを力強く交わした。
ユーリは握る手の平に、呪文を忍び込ませるのを忘れなかった。即ち、「エルミが私との約束を忘れないように…」と。

その日からエルミザードは寝る間も惜しんで勉強に勤しんだ。
勿論家畜や畑の世話も手を抜きはしなかった。
ライラスの教え方は的を得ており、無駄な知識は出来るだけ省き、受験に必要な要点だけを教え込んだ。そしてエルミザードは時間の許す限り、今まで知らなかった書庫にある膨大な本を読み漁った。
ライラスは歴史、法律、摂理の意味を説いた。エルミザードはその中に深い真理があると感じていた。
また、魔術科を受けるに当たっての魔法力はエルミザードに十分備わっているとはいえ、その使い方は様々に異なるため、エルミザードは法に定められた方法でそれを身に付けなければならなかった。
潜在能力を如何に自在に操る事が可能か…ライラスは極めて厳しくその操り方をエルミザードに教え込む必要があった。

慌しく冬を過ごし、春風の中にいつもとは違う感傷的なものを感じながら、鮮やかに青空が眩しい夏を迎えた。
6つの頃から育った我が家を旅立つ日が近づくと、エルミザードはこれからの期待よりも寂しさが増し、ライラスの胸で時折泣くようになった。








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王立学院の簡単なキャラ紹介です。

世界は一緒。地上とは違った魔界のお話、「彼方の海にて…」はこちらから。
プロローグ

ぼちぼち始めていこうかと思います。
しかしボキャブラリーがなさ過ぎて…自滅しそうだ。
まあ、漫画を書いていると思いつつ、頑張ってみる。

あ、12神はオリキャラじゃなく、自分のオリジナル神の名前が今後じゃんじゃん出てくる…予定だがね…(;´∀`)



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● COMMENT ●

再開ですね~。

慌しく冬を過ごし、春風の中にいつもとは違う感傷的なものを感じながら、鮮やかに青空が眩しい夏を迎えた。
  ↑
うぉお、サイさん、素晴らしい季節の描き方…オマケにライラスの胸で泣くようになったって、エルミかわいい!
と、思ったら、サイさんボキャブラリーが無くて…なんて言って…充分です。この後の王立学院の生活も楽しみにしています。

アドさん

もう、歳だね~どんどん忘れていってるよ~Y(>_<、)Y ヒェェ!

ないモノ強請りは止めて、自分で書ける範囲で書いて行きますよ~
でも、フィットネスクラブに通い始めたから、お昼は運動三昧で書く時間は少なくなるの。健康第一!だもんね~


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