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2019-09

ユーリとエルミザード  「黎明」 6 - 2009.09.14 Mon

6.
 次の朝、ふたりは最後の食事を取った。
 向かい合わせに座るライラスは、送り出す期待と幾ばくかの寂寥を漂わせて作った手料理を美味しそうに食べるエルミザードを見つめ続けた。
 時折、口元を綻ばせたり、への字にしたり、尖らせたりと、エルミザードの表情は豊かだ。
 ライラスはそれをいちいち確かめ、嬉しそうに微笑し、彼のコップにお茶を注いだ。
「昼前までに村に行けばいいんだね」
「そうなの。ユーリから手紙をもらった」
 ユーリの馬車が村まで迎えに来る手筈だ。
 ユーリの街からこのエヤまではイルミナスに行くには遠回りになるが、ユーリは世情に疎いエルミザードを心配して、一緒に行くことを申し出てくれたのだ。
「ユーリはライラス以上に心配性みたいだ」
 エルミザードは少し口唇を尖らせてみせた。
「エルミザードはおっちょこちょいなところがあるから、ユーリみたいなしっかり者がついていると安心だ」
「…」
「それと、エルミは少々人が良すぎるのも心配だ。おまえみたいに世間知らずな子を騙す輩はどこにでもいるから、変な奴に着いていったら駄目だよ。食べ物にも注意して。イルミナスは珍しい食べ物も豊富だが、口に合わないものは決して食べない事。それから、勉強だけじゃなく、身体も動かしなさい。いたずらは限度を知る事。何かあったらヴァレリアウスを頼りなさい、いいね」
「ライラス…前言撤回するよ。おもいっきり親バカだ」
 エルミザードはクスクスと笑う。
「そうだね。しかたがないと思ってくれていいよ。
…近頃良く、おまえがヴァレリアウスに連れられてここに来た時の事を思い出すよ。
6つにしては小さくて弱々しくて…正直やっかいな者を押し付けてくれるヴァルを恨んだもんだ」
「そうなの?」
「王宮からも暇払いをお願いして、やっとひとりで気ままな畑仕事をして楽しんでいた頃だったよ。ヴァレリアウスはおまえを置いてさっさと帰ってしまうし、おまえは何も喋らない。何の感情も顔に出さないし、何もしようとしないし…どうしていいのか私もお手上げだった」
「僕、よく覚えていない」
「エルミの意識がまだ混迷していたんだろうね。ここへ来てからもひと月半経っても一言も話してはくれなかった。私もどうしていいのかわからず、もう投げ出したかったさ。だが、ある時、楠の木の巣から落ちて死んでしまった椋鳥の雛を胸に抱いたまま、おまえは泣いていたんだ。ずっと…呆れるほど泣き続けていた…それを見て、私は決心した。私の持てるすべての愛情でこの子を育てていこうと…」
「ライラス…」
 エルミザードは立ち上がり、ライラスの背中から腕を回して、見られないように泣いた。
「ありがとう、仕方のない僕を受け止めてくれて…ライラスがいなかったら、僕は…こんなに幸せを感じる人間ではいられなかった。ありがとう…」
「おまえがいなくなると寂しくなるが、これからは帰ってくるたびに成長するおまえの姿を楽しみにしよう。…いつでもここで待っているからね」
「うん…手紙を書くよ」
「ああ、楽しみにしている」
「毎日書く」
「それは止めといた方がいい。学院の勉強は至極大変なものだ。手紙を毎日書く暇なんか無いと思っていい。一番にならなくてもいいが、エルミには十分期待しているよ」
「あなたの弟子として恥ずかしくない生徒になります」
「おまえは弟子なんかじゃない。私の息子だよ、エルミザード」
 ライラスの言葉にエルミザードはまた泣いてしまう。
 きっとユーリは目を腫らした自分を笑うだろうと、思った。






5へ


王立学院の簡単なキャラ紹介です。

世界は一緒。地上とは違った魔界のお話、「彼方の海にて…」はこちらから。
プロローグ

なんとなくだが、ここは大事な気がしてしっかり書いておきたい部分だった。
エルミザードとライラスの関係は後々、引き継がれる気がする。それとライラスとヴァレリアウスの違いを見せておかないといけない気がした。
ヴァレリアウスは正直エルミザードやユーリばかりに構っている暇はない人だからね。





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