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2019-12

green house ~ 水川青弥 「引力」 16 - 2009.10.01 Thu

16、
 リンに案内された先は、思っていたよりずっと広いリビングだった。一面のガラス張りの窓からは、遠くの海が白く淡く霞んで見える。夕暮れの色は曇り空に遮られ、夕焼けは拝めそうもない。
「座れば?」
 コーヒーのソーサーを丸い硝子のセンターテーブルに置いたリンは、黒のレザーのソファに座り、手招きする。
 部屋の中のどれもこれもがひどくオシャレで、どこかで見た外国のブランドであろうソファの座り心地は確かに高級感がある。
 …こういうインテリアに全く無関心の俺でさえそう思うんだから、気が付いていない価値のあるものも多いのだろう。と、金の取っ手の着いたアンティークなコーヒーカップをじっと見つめた。
「なに睨んでるの?変なもんは入っていないから安心して飲めば?」
「ちがうよ…なんか、粗相をして割ったら大変だなあって…」
「こういう茶器集めは死んだ母の趣味でね。なんか色々あるんだよ。引越しの時に処分したんだけど、思い出のものは使ってやらないとね」

 テーブルにはノートパソコンが付けっぱなしになっている。
 今度はそれを覗き込んだ。
 外国の街が映し出されている。
「ん?これはシカゴに行った時の写真をパソコンに取り込んでいたの」
「見ていい?」
「勿論」
 おれは初めて見るシカゴの街並みをリンの説明つきで次から次へと楽しんだ。
 ふと男の人の写真で手が止まった。
 リンに良く似た整った人…たぶん宿禰のお兄さんだろう。
 手が止まったおれを見て、リンが教えてくれた。
「兄貴の慧一だよ。シカゴの大学院に行っている。来年までは帰れないんだ」
「リンに良く似てすごくかっこいいね。けど…お兄さんの方がすごく大人だ」
「…当たり前だろ。9つも上だよ」
「リンが9つ歳を取ったらこうなるんだろうね」
「さあね。兄貴みたいに分別のある人間にはなれる自信はない。兄貴は俺の憧れではあるけどね」
「へえ~リンが誰かに憧れるっていうのはピンとこないな。いつも自信満々だから」
「尊敬すべき人は沢山いるよ。でも兄貴は特別。母親が早くに居ないだろ?親父は単身外国住まいだったし…今は奥さんがいるけどね。
俺は姉の梓と慧…兄貴のことね。の、ふたりに育てられたんだよ。姉が死んでからは、俺には家族といったら慧だけだ。慧は俺を大切にしてくれる。俺も慧の手だけは離したくないと思っている」
「でも…リンの家はお金持ちだろ?ここの家もすごく高そうだし…幸せじゃない」
「お金に困った事はないだろうね。でも豊かという点ではどうかな…。あまりに家族との縁が少ないんだよ。絆という点で、俺はどこか欠落したものがあると思う。兄貴は俺の一番大事な家族だけど、それだって一緒に居ない期間が長かったからね。ひとりで過すのは寂しいもんだよ。実は昨日も…アメリカから帰ってばかりで、ひとりきりの寂しさからワインで気を紛らわそうとねえ…まあ、俺、あんまり飲めない性質(たち)だからすぐに参ってしまって…それで二日酔いで学校に行けなかったんだよ」リンは苦笑しながら、舌を出した。

 おれはリンにそんな暗い面を感じた事はなかったから、リンの生い立ちをリン自身がどう感じているかを知って、同情してしまった。
 その思いがわかったからだろうか、リンは少し困った顔をした。
「哀れんでもらおうと言ってるんじゃないよ。これは一方の方向から見ているだけで、他方から見れば、俺はお金に困った事はないし、遊んでくれる大人は大概いい人だったし、価値ある経験も沢山してきた。恵まれている事には違いない。
ミナだって両親にかわいがられているだろ?でも、それが窮屈で寮暮らしをしている。俺から言わせて貰えば、ミナは両親の愛情に恵まれて幸せ者だと思うぜ。だが、ミナはそうは感じない。同じものを見ていても見る側面は違う。人を見た目から同情したりけなしたりするのはいい。だけど、本人にとっては人の思いなんかは関係ない。
俺は十分幸せだってことは確かだよ。少なくとも愛されているからね」
「…お兄さんに?」
「そう。それとミナにもね。それよりも俺はミナがいつおれとセックスする気になったか知りたいね」
「それ、話さなきゃならない事?」
「俺に取っちゃあ、ミナがここに来たというのは一大事。それも俺とやりたい気持ちで来たっていうんだから天地がひっくり返るぐらいの大ニュースだ。そのきっかけが何であるのかを知りたいって思うのは自然だろう?」
「…」
 わかるけど、それを逐一話すのは自分の欲望を晒すのと一緒で、先輩に話すのとは違い、躊躇われるだろう。だって、リンは俺の性の対象者だもの。

「まあ、いいさ。夜は長いし、時間はたっぷりある。泊まっていくんだろ?戦さの前に腹ごしらえな」
「い、戦さ?」
「それはそれは激しくも狂おしい戦いの夜になるでしょう…」
と、おれを面白がりながら色っぽい顔で誘うから、おれはリアクションに困ってしまった。

 ふたりで夕食を作り、食べた。作るといってもおれはサラダ担当で、野菜をちぎっただけ。リンはカルボナーラを上手に作った。
「何でも出来るんだね」と、褒めると「毎日外食するより、家で好きに作る方が有意義な時間のつぶし方なんだよ。話す相手がいないのは寂しいけどね」と、応える。
 同情を嫌うと言うが、俺はリンが今までどんなに多くの時間をひとりで過したかと思うと、可哀相で仕方がない。
 おれでよければずっと傍にいてやりたいと、心から思った。

 外泊することを根本先輩にメールで伝えると、「頑張れ」と、短く返してきてくれた。それをリンに報告すると、「あの人は信用していいよ。ミナの傍にいてもネコだから俺も安心していられる」と、わけのわからないことを言う。

 風呂に入るように下着とパジャマを渡され、浴室に案内される。
 「一緒に入って、洗いっこでもする?」と、からかわれた。
 …いや、一緒でも良かったかもしんない。

 風呂を交代して、ソファでぼーっとしていると段々眠たくなり、横になってしまった。
 軽く居眠りしていると、風呂から上がったリンに「緊張感が足りねえ!」と、怒られた。
 ごめん、このソファ、高いだけあって寝心地いいわ。
 
 ひとしきりリンのお小言を聞いた後、リンはおもむろに立っておれに手を差し出す。
「俺の部屋へ行こう」

 いよいよだと思うと、なんだか胸が高鳴って仕方がない。ん?いや、胸が高鳴るはおかしいだろう。まるでめちゃくちゃ期待しているみたいじゃないか。
 リンがどんな風におれを抱くのか、不安と緊張で、心拍数が高くなるのだ。

「どうしたの?入れよ」
 リンがおれの方を向いて、愛想良く「どうぞ」とドアを開け、エスコートする。
 何故か顔が緩んでくる。
 …やっぱり、胸が高鳴っているっていうのは正解だ。と、妙に納得した自分が、なんだか可笑しくて仕方がない。





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いよいよ始まりました。「ミナ初体験日記!」
もう、全然まったくエロくないH時間が始まりま~す!なんも期待はしないで頂きたい!
本当に…喋りっぱなしの初夜です。
…笑ってなんぼ(;・∀・)




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● COMMENT ●

わは。

「期待しないで」って。
そんな前フリされると、期待してしまいます!(笑)

メイさん

いや~全く色気のない話ですよ。これは挑戦でもあります。BLのHシーンで、どれだけ色気のない話が書けるか!これに挑戦したる!と、思って書きます。
でもコメディではない。
私のBLはこうだ!というところを見せなきゃ、面白くないからね~
…まあ、全く自信はないですが~(;^ω^)

NoTitle

ついに突入しましたね。
おしゃべりなえっちってどんなんだろう。
すごい楽しみです♪

さくちゃん

普通のしゃべくりタイムでしょうなあ~
だってさあ、いくら官能的に書こうとしても、絶対ムリじゃん!書ける人って本当に上手いからねえ~
そこをマネしても、絶対うまくいかない気がするもん。
自分はBLを読まないから、本当にわかんないし…
だから、もう自分なりに好きに書く事にします。
どっちにしても、自己満足のお話だもんね~
でも、ミナの気持ちだけは、しっかりと書いておきたい。
どんなにリンが好きか…これが大事なんだよね。


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