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2019-09

水川青弥 「引力」 21 - 2009.10.08 Thu

21、
 終わった後、おれ達はベッドに横になり、静かに向かい合っていた。
 ふたりとも何も着ていない。薄い毛布にくるまっているだけだ。

 おれはリンを見つめた。
 リンの伏せた長いまつげが濡れている。

 リンは泣いた。お互いにイッた後、彼はおれの身体に突っ伏したまま、身体を震わせてしばらく泣いていた。
 理由は聞かなかった。
 それはおれが触れてはいけないリンのプライドだと感じたからだ。

 リンは繊細だ。とても複雑で深いいくつもの層を持っている。
 その奥を押し開いても彼は喜ばない。
 リンの思いはリンのものだ。
 
 おれにとって一番大事なことはリンと繋がれたことだ。
 それだけで良かったはずだった。
 だけど…リンとのセックスは想像以上だった。
 リンが好きだ。愛している。はっきりとそう感じてしまった。
 おれはこの男を失いたくない。
 愛とは独占力なのかな。リンをおれだけのものに…ひとり占めしたいと思っている…
 おれの前でリンが他の奴のことを思うのは嫌だ…
 今まで感じた事なかったのに…
 きっとこんなことを考えているとリンが知ったら、おれを見損なうかもしれない。
 おれは姑息な男だ。リンに嫌われないためにはどうしたらいいかと、考え始めている。
 まだたった一度繋がっただけの関係なのに。

「ミナ…眠らないのか?」
 リンが目を開けておれを見る。慣れてしまっているはずなのに、その眼差しにドキリとする。
「あ…うん。なんか興奮しているからかな。眠たくならない」
「そう…じゃあ、少し話そうか?」
「うん」
 リンはいつもの顔に戻って、おれに腕枕を差し出し身体を寄せた。

「初エッチの気分はどう?」
「すごく…嬉しいよ。なんというか…初めての相手がリンで良かった」
「なんだよ、それ。他の奴ともやる気満々って言ってるみたいじゃないか」
「違うよ。そういう意味じゃない。今までのリンを好きな思いと、した後のリンへの想いが…なんか違う気がする。深くなった感じ。それを感じられたのはリンと繋がったからだ」
「そう、良かったよ。もうやりたくないって言われたらどうしようかと思った」
「リンこそどうなんだ?おれは、あの…良かった?」
「ん?なにが?」
「…」
 判っているのに言わせたがる。こういうところは相変わらず意地悪だ。
「おれで感じられたかって聞いてるんだよ。もう!本当に、リンは意地が悪い」
 軽く胸を叩くと、リンは参ったという風に顔をしかめ、そしてゆっくりとおれの顔に触れる。

「…俺はミナとの初めてのセックスを思い出にはしないよ。たぶん…思い出にはならないと、思う」
「どういうこと?」
「ただ想いが、残るんだ。いつまでも。ここにね…」リンは自分の胸を押さえ、目を伏せ言葉を続ける。
「その想いは、思い出にはならずに死ぬまで残っているんだ」
「リン…」
「つまりは…すごく良かったってことだ。安心しな。ミナの身体は俺とは相性がいい。気持ちよかった。いっぱい色んなワザを試して、どんどん開拓しよう。そんでミナの性感帯ってさあ…」
「もういい!もう、わかったから…」
 おれはリンの口を押さえた。どこまでが冗句でどこまでが本気なのか…
 そういうとこも嫌いじゃないのが癪に障るんだが。

「眠れないのなら、羊でも数えようか?そうだ、いいこと思いついた。羊の代わりに、お互いの好きなところを数えよう」
「…それ、けっこう難しいかもしれない」
「まあ、いいじゃん。じゃあ俺から始めるよ。…眼鏡美人のミナが好き」
「…」
「ほら、おまえの番だ」
「…これって恥ずかしくない?」
「恥ずかしいからいいんだよ。こういうなんてことのないことが、心にずっと残るのさ」

「…じゃあ、…リンは潔い。男らしい。すごくかっこいい」「ミナ、一個ずつだよ」「あ、ゴメン」「眼鏡も似合うが、眼鏡をはずしたミナも美人だ」「見かけばっかりだ。見かけならリンが上。非の打ち所のない容姿。光源氏だ」「それ、褒めてない。ミナはピュアだ。混じり気が少ない原石。加工するのがもったいないが、出来るなら俺が光り輝かせてやりたい」「加工って…なんか怖いな…リンは見目だけでなく、魂も美しいんだ。おれはそこに惹かれる」「…美しくなんか、ないけどね…ミナの方こそ…そうだね、ミナは素直に見えてひねくれてるからなあ」「褒めあいっこじゃなかったの?」「その天邪鬼が好きって話だよ」「やっぱり褒めていないじゃないか…」

 何かに急き立てられるように言葉を続けるおれ達。

 おれは気が付き始めている。
 リンの中に、急速に引き込まれる自分に。
 それは光の速さで突き進んでゆく…

 リンはまるでブラックホールだ。
 おれのすべてを吸収して、散り散りにする。
 そして僅かに残った塵のおれは、リンの心の核となる。
 ずっと…ずっとそこに居続けるようにおれは祈る。

 それは、いつまでも溶けない澱のようだ…

「リンの全部が…好き…だよ…」
 リンの胸に抱かれながら、
 夢の中でも君に会える様に、
 祈る…
 おれは、祈り続ける…







「引力」終わり。






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● COMMENT ●

恋を知り 恋を受け入れた ミナが どんどん 変わって行く。

ミナが、純粋なだけに 真っ直ぐに求める リンへの執着や独占欲、愛情が 日増しに 強くなって行くのが 見えますね。

それを 健気で可愛いと 微笑ましく感じるか  盲目的で寛容は許さない怖さと感じるか・・・

後者に感じる私は 捻くれてますね(^^:)ゞbyebye☆

いやいや、けいったんさんの感想はとっても正しいと思います。

ミナは受けなんですが、あくまでも男の子として描いてます。
だからできるだけ男性的な目をもたせようとしているわけです。と、言っても自分が女性だからホントの男の子の気持ちなんてわからないですけどね~(;´∀`)
凛一の方が女性的考えであり、アマテラスみたいなあっけらかんとした女神のような気がします。
気に入らなかったら天の岩戸に隠れて出てこない。でも私がいなかったら君達困るでしょ?俺、太陽だからさあ~って感じの子。
ミナは実直なオモイカネでしょうかねえ~


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