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2019-09

猫日  午前中、その壱 - 2009.10.15 Thu

午前中 その壱


 朝、起きたら、隣りに猫が居た。
 …おい、寝ぼけてんのかと思い、両手で目を擦り、もう一度同じ場所を見た。
 猫が…横向きに寝ている。真っ白の…いや、よく見てみると両耳が灰色がかっている。

 …よく考えろ…昨晩はここには…あいつが居たはずだよな。
 …間違いない。ギュッって抱きしめて、あいつのぬくもりを感じたまま寝付いた記憶ははっきりとある。
 じゃあなんで…あいつの寝ていた場所に猫がいるんだよっ!しかも…奴が着ていたパジャマの上に我が物顔で堂々とその長細い身体を気持ち良さそうに伸ばして…猫が…?なんで?…

「はぁ?」
 思わず間抜けた声を上げた。
 もういい。
 猫はいい。
 良かぁないが…それよりユキだ。
 あいつ何処消えやがった?例のひとり勝手散歩か?それとも俺に挨拶もしないで自宅に帰った?しかし待てよ。
 このパジャマは猫の下にある。
 脱いだ形跡じゃなくて…ほら、身体が消えてなくなって、そのまま服だけが残るみたいな…よくアニメや漫画で見かける…
 ちょっと待て…おい、まさかだろ?

 …落ち着け。
 ユキは…きっとふざけて…俺を驚かそうと思ってこんな手のかかった技仕込んで、そんでどっからか拾ってきた野良猫をベッドに置いて…
 いくらなんでも
 「…んな事するか?」
 とにかくふてぶてしく寝てる猫はほっといて、まずユキだ。

 ベッドから起き上がってリビングに行く。
 カーテンの締め切った薄暗い部屋は静かな朝の空気が漂っていて、人の気配など感じない。
「由貴人?」
 静かに、でも部屋の隅々まで行き渡るように呼んでみた。…返事は無い。
 トイレ、洗面所にも姿は無い。…そうだ、靴。と、玄関に急ぐ。
 昨日履いてたスニーカーはある。
 いや、俺の草履とか借りて行ったのかも…しかしそれもすぐ目に留めた。 
 普段あいつが掛ける事の無い玄関の鍵もちゃんと掛かっている。
 必然的にユキは外に出てはいないという結論に達した。

 …ぞわっと背中が総毛立った。
「消えた?」
 あはは…まさか…ね。
 
 リビングに戻ってみるとユキのバックがソファの横にあるのを確認して、悪いと思ったが中身を調べた。財布も携帯もある。
 …あいつ、一体全体何処に行ったんだよ…
 不安が募ってきた。と、同時に気になるのがあの猫だ。一体どこからどうやって入り込んだ?玄関も閉まっていたし、窓もどこも開いていない。

 …なんだか…物凄く…妙な妄想に囚われてくる…
 おいおい、そりゃ漫画の読みすぎだろう…
 とにかくこの疑問符を取り除くにはあの猫の正体を暴くしかねぇじゃん。と、思い、俺の足は寝室に向かった。

 ベッドを覗くと、さっきと変わらずに猫が居た。気持ち良さ気に寝ている。
 その姿がなんとも…綺麗だ。
 カーテンから僅かに入り込んだ太陽光が、丁度猫の背中辺りを照らして、白毛がキラキラ光って見える。
 …なんだか幻みたいに消えちゃうんじゃなかろうか…
 頭から背中をそっとひと撫でしてみた。あったかい。でも、動かない。
「起きないのかよ」
 脅さないようにゆっくり抱き上げた。痩せてはいるが大人の猫だ。それなりに重量はある。
 腕の中に抱いて、指で喉を擦ってみる。
「起きれよ~猫」
 頭をもそっと動かしはしたが、目は開けたくないらしい。
 ちょっとだけ舌を出して又腕に凭れた。

 …かわいい…

 世の中には猫好きも多かろうが、俺もそのひとりだ。
 それにこんな綺麗な猫は、あんまり見たことねぇしな。
 いやいや、人間も猫も外見で判断しちゃいけねぇんだけど、見た目は…やっぱ大事か…

 あんまり可愛くて、その狭い額にチュッとキスしてみた。
 …ユキが見てたら怒るかな?そんな了見狭くねぇよな…
 頭を撫でていると、大きなまなこがゆっくり開いた。それがまたなんとも…
「すっげかわい…」と、思わず呟いた。

 俺と目が合って驚いたのか、その猫は目を見開いたまま、ギャーッ!と、まさに猫を踏んづけたような声を上げると、俺の腕からベッドへと飛び降りた。
 が、敢え無く着地に失敗したらしく、ドテッと横に倒れてしばらく両足をばたつかせていた。

「おい、大丈夫か?」
 一連の動きが奴を思い浮かばせて、ちらっと気にしていた事がまた頭を支配しようとしたが、今は目の前に居るこいつで気を紛らわせたかった事は否めなかった。

「…おい」
 なんとか起き上がって態勢を整えた目の前の猫は、手を差し出す俺を睨んで威嚇するように唸った。
「別に苛めたりしねぇし…そんなに睨むなって」
 すると、今度は俺を見つめてニ、三回頭を傾げると、高いかわいらしい声でにゃあにゃあと鳴きだした。
「なんか…訳わかんねぇんだけど…何か言いたいんだろうけどな」
 にゃあ…
「俺の方も色々とおまえに聞きたいんだけどさ。ここに寝ていた人間…由貴人っていうんだけどね、そいつどこ行ったか知らねぇ?」
 にゃあにゃあと徐々に鳴き方がでかくなった。
「…ごめん…言ってる事わかんねぇの。ああ、もうっ!…猫語でも勉強しとくべきだったよっ!」
 頭を掻き毟って視線を落とした。

 ユキ…マジでさ、何処行っちゃったんだよ…
 俺には探偵とかスパイは絶対無理だ。何ひとつ…解決の糸口さえ掴めやしねぇよ…

 にゃあ…
 落ち込んで俯いている俺に同情したのか、俺の膝に前脚を乗せて、猫が俺を見上げて鳴いた。
「抱けってか?…本当はそれどころじゃねぇんだけどな」
 まあ猫に罪はねぇし…
「ほら、おいで」
 両手を差し出すと素直に身体を寄せてくる。
 抱き上げて撫でてやると、猫は俺をじっと見た。
「ユキ…どこに行っちゃったんだかね。こんなに心配してんのに…」
 にゃあにゃあ
「ん?何か言いたいのか?」
 にゃあ…『レイくん』
 と、聞こえた気がした。
「ユ、由貴人?」俺はキョロキョロと辺りを見回す。幻聴か?
 にゃあ…『麗乃』
 又、聞こえた。微かに…だけど確実に聞こえた。
「お、おまえどこに居んの?」
 にゃ…『ここだよ、ココ』
 「はぁ~どこ?」

 声は聞こえるんだけど、それが何処からかわからない。
 脳に直接響く感じがして、空気を伝わってる感触が無いんだよ。
 にゃあ…『おまえ…い…る…ネコ…って』
 消えそうな響きで頭に響く。
「…はぁっ?」
 俺は抱いてた猫を目の高さに持ち上げて、凝視した。
 にゃー…と又鳴いた。同時に『麗乃』と、 微かにだが頭に響く声がする。
「ま…さかっ…ホント…に、由貴人か?」
『うん』
「な、なんで?…おまえ猫っ?」
 俺の仰天した声に猫は、ちょっとだけ頭を右に傾げた。
 ドクンってした。
 駄目だ…可愛過ぎる…
 その時、これがあいつに持つ感情と…どことなくだが…おんなじって事に気づいた。





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データを眺めていたら、昔のが色々と出てきた。
2007年2月に書いたものをちょこっと修正。
しかし、これ…終ってなかったんだよね~www





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