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2019-09

猫日  午前中、その参 - 2009.10.16 Fri

その参
 由貴人は…猫はさっきからリビングのテーブルの上に大の字になって寝そべっている。
 日も高くなってきて、サッシからの陽が当たっているから、日向ぼっこみたいで気持ちいいんだろう。
 俺はあんまり刺激しないよう、声を掛けるのも遠慮しがちになる。
 そりゃ、色々と聞きたい事はあるさ。
 猫になった気分はどうかとか、世界はどう見えてるだとか、身体とか…ど、どうなんだ?とか…
 まあ、この状況じゃどうしたってそんなポジティブにはなれねぇだろう。
 ユキだしな…それにどう考えても原因は俺にあるし…

 どうすっかな…これから仕事あるし…ん?仕事?…そうだよ。今日の仕事どうするよ。今日は…
 スケジュール表を見る。
 十時からミーティング、これは風邪だとか言って誤魔化せる。
 昼からは撮影…由貴人が居ないとまずくねぇか?
 …しょうがねぇ、日にちずらして貰うか、別撮りにでもするか。
 顔洗って、出かける支度をする。
 腹は減ってもいないけど、こいつには何か食べさせねぇと…と、思っても…牛乳も、一欠けらのパンすらなかった。パスタなら作ればあるけど、食べるかね、猫が。
 なんかレトルトのおかゆとかさ、買っときゃ良かったと思うけれど、無いものは無いので仕方ない。

「ユキ、お腹すいた?」
 仰向けに腹出して寝てる由貴人を見て、その格好は気持ちいいのか?とか、腹出して寒くねぇのか?とか思ったが、取りあえずナニを見て男だと確認した。デカイのかどうかは判らんけどな。
 しかし、腹も白い。
 白って言うより光に照らされると銀色がかって見える。耳の灰色も青みががってみえるし、尻尾の先…五センチほどのところも耳同様に灰色だ。
 毛並みはペルシャ猫みたくふわふわじゃなくて、光沢のあるスベッとした感じ。でも触ると中々柔らかくて気持ちいいんだ。
 なんだろ…由貴人は猫になっても俺の一番のツボを突いてくる。可愛くて綺麗で…いや待てよ。俺の願いが叶ってこの姿になったんだから、俺の気に入るのは当たり前か。と、思ったところで気がついた。

 …この極めて拙い状況で、こんな不謹慎な事を妄想する事態、全くもって良くねぇ事なんだよ。
 で、でもな…ちょっと…ちょっとはなんか嬉しい…って事は、由貴人には絶対知られてはならねぇ本心だ。


「ユキ…」
 返事の無さはご機嫌斜め、まだ不貞腐れてるってことなんかなぁ…そりゃね、現実こんな事になっちゃえばパニックになるか、はたまた引きこもるかのどっちかだろうけど…
「ユキ、俺、仕事に行くけど…」
 本当はここに一緒に居るのがいいんだろうけど、なんかね、部屋に居座ってても何も動かねぇんだよ、状況も空気も。だから、ユキ本人はともかく、俺だけでも由貴人が元に戻る手がかりでも探さなきゃ。
 すると、ユキは思いもよらず、俺の言葉に反応して顔を上げるとすっくと身体を起こして俺に近寄ってくる。
「…一緒に…来るか?」
 しっかりと頷くのを確認した俺は、テーブルに両腕を差し出した。
 尻尾をピンと立ててゆっくりと近づく。
 俺の腕に優雅に収まるのを見て、思わず小さく吹いた。
 全くこいつは…

 俺の大事な大事なお姫様だよ、猫になってもね。






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