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2019-12

猫日  午前中、その四 - 2009.10.17 Sat

午前中、その四
 由貴人を抱いたまま、表通りに出て手を挙げてタクシーを止める。
 後ろの座席に乗るなり運転手がユキ…猫を見て「猫かぁ?」と嫌な顔。おまけに舌打ちまでされた。
「大人しいですから、大丈夫です」と、頭を下げると、渋々と発進した。
 由貴人を見ると納得いかない顔をしている。心なしか口唇尖ってるし…
 猫であっても中身は全く変わってない事に今更ながら感心しつつも自然と顔は綻んでしまう。
 そのまま抱っこしてると、話したいのか頭に乗りたがるけど、さすがにココじゃ変な人に思われるのがオチだろう。後でヘンな噂立てられても困る。
 小声で「後でね」って言って、でっかい目のすぐ上んとこにキスしたら、ニャーと言って叩かれた。
 …一応公衆ではあったな。ゴメン。

 事務所のビルに入ると、誰彼もが俺を見る。
 …ってゆーか、俺の腕の中の由貴人を見る。
 ユキを見ては一往に、皆微笑んだり、手を振ったり、「かわいい」と、声を上げたりしてる。

 すげぇな、猫一匹でこんなにも空気が和むんだ。
 戦争なんぞしてる状況でも、猫被っていたら、銃なんか向けなくなるんじゃないのか?
 なんて、くだらねぇ事まで考えちまったじゃねぇか。

 顔見知りの事務所の女の子が寄って来て「香月君、どしたの?かわいい猫ちゃん抱っこして」って、抱いてる由貴人の頭を撫でる。
「うん、ちょっとね」
「うわっ、近くで見ると…ホントすっごくかわいいよね。ちょっと抱っこさせて」
「えっ?」
 どうしようと思ったが、腕の中のユキがニャ~って鳴いて俺にしっかりとしがみついた。
「あら、猫ちゃん嫌がってる…」
「ごめん。あんまり人に懐かないみたいなんで」
「…香月君、なんか嬉しそうだよ」
「そう…かな」
「意外と…束縛するタイプと見た。恋人も絶対人に見せたくないタイプでしょ?」
「そんなことはないと、思うケド…」
「うーむ…そうやってるとさ、その猫恋人みたいよ、香月君の」と、意味深な顔をして笑う。
「…はあ」
「じゃあね」と、彼女には離れていった。

…恋人だって。束縛してるんだって…鋭いな、女って…怖いな、女って…
『おまえが露骨な顔してんだよ』と、由貴人の声が聞こえた気がした。
 案の定ユキが呆れ顔で俺を見上げていた。


「すいません。遅れました…」
 三十分以上も遅れた事を詫びながら会議室のドアを開けた。
「…」
 思ったよりも大人数。二十人近くの人達が一斉に俺の方を見た。
「おっそいよっ!レイくん」
 一番奥に座っている岬が大袈裟に手を振る。
「ゴメン、ちょっとゴタゴタしてて」
「えっ、何?その猫」
「あ、これは…」
「つーか、ユキがまだ来てねぇんだけど、レイくん、知らない?」
「えっ…と…」
「いっから、早くこっち来いよ」
「う、うん」
 何も言わせない気か、こいつは。と、思いながら岬が呼ぶ方に行こうと思ったら、「ハクション」と、ひとりのスタッフがくしゃみをした。そして、立て続けに何回か繰り返す。
 俺は立ち止まってその人の方を見る。

「…すいません。俺、猫アレルギーなんです…」
「えっ!…ああ、す、すいません…ごめんなさい」
「香月君、ちょっとその猫、誰かに見ててもらったらどうかな?」
「はい、そうします」
 俺はその猫アレルギーの人の止まらぬくしゃみを耳にしながら、由貴人を抱いたまま即効会議室から出た。

 マジか、猫アレルギーって…まあ、そあいう人も居るだろうけれど。
 しっかし、どうするかね。誰かにあずけるったって、そんな事できるわけねぇだろ、大事なユキを。

 仕方ないのでガラス張りの喫煙室へ向かう。

「はぁ~」
 由貴人を喫煙用のテーブルに載せて一服する。
「疲れた~」まだ何もしてないけどな。
 にゃー。ユキが俺を見て鳴く。
「ユキも疲れた?」
 にゃあ…
「ん?」
 由貴人は伸びをして手招きする。
 抱っこ?…ああ、話したいって事か。
 相互理解の為、ユキを抱っこして頭の上に乗せてやった。
 …一応周りに人が居ないか確認した上で。

『あの人大丈夫だったかなぁ』
「うん…」
『初めて見る人だった』
「新しいスタッフの人だろうね」
『若かったし…悪い事したね』
「別に、ユキが悪いわけじゃないし…おまえが気に病む事じゃねぇよ」
『…行かないの?』
「ん」
『俺ここで待ってるから、麗乃は行きなよ』
「いい。話は後で岬達に聞くから」
『…』
 由貴人はそのまま黙りこくって、俺の頭上から飛び降りた。

 …おまえの言いたい事判るけど、俺の気持ちも考えてくれ。
 おまえをひとりにして置いてなんか行ける訳ねえだろうが。







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