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2019-09

猫日  午前中、その五 - 2009.10.18 Sun

午前中 その五
「レイくん、ここに居たのかよぉ~」
 三十分ほど経って岬と眞人が俺を見つけてやって来た。
「ゴメン、ちょっと一服やってた。ミーティング終った?」
「うん、大丈夫だよ。スケジュール調整が主だったし…それよりさ」と、テーブルに横たわって頭をこっちに向けて俺達を見てる猫のユキを見て岬が口を開ける。
「この猫なんなの?」
「…人から預かった…」
「誰?」
「…お、まえの知らない奴」
「…嘘付くなよぉ。別に文句たれる気ないから、ホントの事言えって」
 …ホントの事言って、おまえ信じるのかよ。とも思ったが、こいつらには真実を話しておいた方がいいだろうと思い口を開く。

「…あの、な…」と、言いかけたところでガラスの向こうから人が入ってくるのが見えて、俺は由貴人を抱き上げた。
「話、ちょっと長くなるから、別の部屋行こう」
 ふたりは黙って付いて来た。

 空室を確認して会議室に入る。
「鍵掛けて」
「えっ?なんかすげぇ話?」
「ちょっと座って」
「…おい、何が始まるんだ?」
「…おまえらを信用して話すから、あの、驚かないで聞いてくれな」
「…なによ、気持ちワル…」
「どうしたんだ?麗乃。なんか悪いもんでも食ったのか?」
「実は…ユキが…」
「そういやユキはまだ来てねぇけど、また風邪かなんかか?」
「だから、俺の話聞けよっ!」
「…はい」
「あのな、こいつが由貴人なのっ!」
 俺は腕に抱くユキ猫を岬達に向けながら、二人の顔を見た。
 …完全に呆れている。
 わかる…

 にゃあとユキが鳴いた。
「…あの、こいつって言われても…コレ猫でしょ?」
「だっから、朝起きたら、ユキが…猫になってたんだってっ!」
「…」
「…」
「…」
「おまえ…仕事のし過ぎで…病院…い、家帰った方が良くねぇか?」
「つうかさぁ。もうちょっと真実味のある嘘つけよ。やりすぎていくらユキが寝込んでるからって」
「やってねぇよっ!」
「…じゃあなんで、ユキ来ないんだよ。昨日おまえユキと会ってたんだろ?」
「だから、こいつがユキだっつって言ってんじゃねぇかよ」
「…いくらおまえが真剣に言ってもな…あんまり非現実的だと、頭おかしいんじゃないかってマジで疑われるから、な。もう、いいんじゃねぇか?」
「いや、あのね、ホントの事で…はぁ…」
「…」
 にゃあ
「……マジで?」
「は?」
 にゃあ
「スマン」
「…何で?」
「知らん」
「うそ」
「いや、マジで」
「この猫がぁ?」
「そう…ユキ」
 にゃあ
「…はぁ~?」
「いやいやいや…困るだろ、それは」
「非常に困ってる」
「…」
「ふ~む…似てると言えば…似てる…か?」
「ユ、ユキ?」
 にゃあ、と、由貴人が岬に近づいて行く。

「ユキ?」
 にゃあ
「そうだよって言ってる」
「う、うっそ!」
 にゃあ
「おまえ…わかるの?この猫が言ってる事」
「猫じゃねぇ、由貴人だ。ついでに言うと今のは嘘だ」
「だっ!…お、おまえこんな時にふざけんなっ!」
「悪い。おまえの顔が面白かった。つうか、由貴人を頭に乗せたら、話せる」
「あ、たま?」
「うん、ユキの声で喋るから、やってみ?」
「…マジかよ…」
 目の前に居る由貴人をおそるおそる抱きながら、岬が自分の頭に乗せる。
 ブッ…笑える。
 猫を頭に乗せただけでこうも笑える形態になるんだ。
 くっくっと笑いを堪えていると、岬が露骨に不機嫌な顔をして俺を睨んでくる。
 頭上の由貴人はにゃあにゃあと鳴いている。

「ふざけんなよ、麗乃…なんも聞こえねぇじゃねぇかっ!」
「…なんか話せば?」
「…ユキ?」
 にゃあ
「…俺、岬だよ?おまえ…本当にユキなの?…って、わかるかよっ!…なっ!い、いってっ!」
 由貴人の前脚が岬の額を軽く引っ掻いた。
 「な、何すんだよっ!」
 頭を振って振り落とそうとする岬より一瞬早く、ユキが頭上からテーブルに飛び降りた。
 怒る岬を尻目に由貴人は走って俺の胸に飛びつく。

「な、なんだよ、こいつ」
「馬鹿にしてる態度が気にくわねぇんだよ、ユキは」
「バカにって…つーか、そいつニャアしかゆってねぇじゃんっ!どこがユキの声で喋るだと?いい加減なことゆうなよっ!」
「…ウソ」
 今度は俺が驚く番だった。
「何が?」
「おまえ本当に…ユキの声聞こえなかったの?」
「聞こえるかよ。どー見たってそいつは猫だろ?猫が喋るかよ。大体こいつがユキとかゆうおまえがおかしい、麗乃、ホントに頭大丈夫?」
「…」
 俺の頭の世話まで要らぬ心配だが、マジで由貴人の声が聞こえないって…どういう事なんだ?
「岬、本当に聞こえなかったのか?」
「…聞こえねーよ」
 真剣な顔だったので、信じる事にした。
 で、今度は抱いているユキに目を移してみると、ユキは俺を見て軽く首を傾ける。
 …何で?俺には聞こえるのに、岬にはわかんねぇの?





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