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2019-09

猫日  午前中、その六 - 2009.10.18 Sun

午前中 その六
「んなこと言ったって、ホントにユキは喋るもん」
「どれ、俺に貸してみ?」横から眞人が由貴人を抱き上げて、躊躇無く頭に乗せる。
「ユキ、なんか喋ってみな?」
 にゃあ
「…」
 にゃあ、にゃあと続けざまに由貴人が鳴く。
 いや、懸命に喋っている。しかし、肝心の眞人は腕を組んでう~んと唸ったまま、何も言わない。

「…残念だが…俺にもニャアとしか聞こえねぇな」
「…マジで?」
「うん」
「…ユキ、おいで」両腕を差し出すと、力無くニャアと鳴いて素直に俺の中に戻ってくれた。
 …なんであいつらに聞こえねぇんだろ…
 俺は由貴人を頭に乗せた。
「ユキ」
 にゃあ…
『うん…あいつら聞こえないみたいだね』
 ほら、やっぱりユキの声、ちゃんと聞こえるじゃん。
「なんで、俺にしかわかんねぇんだろう」
『やっぱ…原因がおまえだからじゃねぇの?』
 …ご尤も…
『後さ、テレパシーとかね、波長が合うとか合わないとかさ、あるんじゃねぇの?』
「波長か…まあ、考えられるけど…」
『まあ、しょうがねぇよ』
「しょうがねぇな」

「あ、あのな、麗乃?…大丈夫か?」と、岬を見れば明らかに怪訝そうに俺を見る。
「そんな顔すんなよ」
「だってさ。なあ、マコちゃん」
「まあな、いくら香月が真剣にゆってもな。簡単にはハイ、ソウデスカっては言えない」
「よく考えろよ。おまえの頭の中で作り上げた妄想話と現実を見間違えてるとか、そういうのもあんだろ?」
「そうくるか…」
 そう…なのか?
 頭の上のこいつが本当は由貴人じゃなくて、普通の猫で、そんで俺がユキが喋ってるって思い込んで、頭の中で現実を摩り替えてる?…そういうことなのか?
 じゃあ、由貴人はどこにいんだよ。

「ユキ…」
 誰に言うでもなく力無く呼んでみた。
 ニャア…
『レイくんの言いたい事わかるよ。眞人達が言うのもわかるしさ。でもな、やっぱり俺はおまえの頭の上にいる猫だし、俺だってこんなになってんのが信じられないし、無茶苦茶ヘンなんだけど、現実に意識がここにあんだろ?なら、俺は猫なんだって認めるしかないし…それにちゃんとさ、おまえはわかってくれてるだろ?だから…別にいいよ』
 そう言うと、由貴人は前脚で、俺の額をポンポンと軽く叩いた。
「…ん」
 なんか胸が熱くなった。
 すべてを甘受してそんで許してくれてるんだな。ありがと、ユキ。

「…麗乃、そいつ何て言ってんの?」
「うん…信じてもらえなくても俺がわかってりゃいいって」
「…まあ、ユキが言いそうな事ではあるけどさぁ」
「…俺はなんとなくだが、こいつが由貴人なんじゃねぇかなって思えるだよな」
「おい、眞人」
「マジで?マコ、そう思ってくれる?」
「なんかな…似てんだよ、由貴人に。ユキが猫になったらって想像すると、こんなになります!みたいなもんが現物として存在してるみたいな、な。そう思えるちゃー思えるんだがな」
 腕を組んだまま左右に頭を振りながら、眞人が続ける。

「…俺も色々猫見てきたけど、こいつなんか相当人間臭いし…まあ、昔から死んだら人間は猫に化けやすいって言うしな」
「おい、由貴人を勝手に死亡させんな」
「つうか、この猫ユキ臭いんだよ」
 本当に信じてくれてるのか、眞人っ!。おまえはいい奴だ!男の中の男だ!
 感動しているとニャアと由貴人が頭の上で鳴いた。
「…」
「なんて言ってんだ?由貴人は」と、眞人が聞く。
「『また眞人は適当なことばっか言ってやがる』」まんま通訳した。
「ハハッ…ユキならそう言うに違いねぇ」と、岬が笑った。
「しかたねぇな。、まあ、こんなんなったなら早くユキが人間に戻る策でも考えようよ。どっちにしても猫のままじゃバンドも活動できませんから」
 殊更におどけながら言う岬が、どこまでこの事実を信じているか分からなかったが、理解しようとしてくれてる思いは嫌でも伝わったので、俺は友情の深さに改めて感謝しつつ、手を合わせて頭を深々と下げた。
 …ンニャア!
 予測できなかったのか、頭の上の由貴人が床に転げ落ちた。
 ……ゴメン。忘れてた…
 床に転がって両足をばたつかせている由貴人を見て、岬がため息を吐きながらひと言。
「こいつ、やっぱユキだわ」




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● COMMENT ●

ちょっとご無沙汰してる間に

軽妙なタッチで進む「猫」話。
いつものサイさんとカラーが違うかと思いきや、チラチラサイさんっぽさが漂ってますね。
どうやって終わるんだろう?
不思議なお話に引きここまれます~。

アドさん

まあ、2007年頃はこういう感じで書いていたのですね~
こいつらの性格はしっかり把握しているので、もうだいたい会話だけで遊ぶんですよ。
一部の方だけにわかってもらえればいいと思っていたので、普通に読んだら読みにくいかもなあ~

終り?

…午前中しか書いていないので…www
終らないんだね~これが。
頭では出来ているんだが…需要があるなら考える。

需要次第ですか~?(笑)

午後は?
サイさんの頭の中なんだ?
ユキちゃん、ずっとネコでも幸せそうだけど、会社が会議が…。
なんだか、このお話、ずっと私の頭の中にこびりつきそうですよ~。
読みにくく無かったです! 読みやすいぐらい。

コレも一種のファンタジー? 

アドさん

あと二回更新したら午前中は終わりなんですが…
午後を書くとなると…時間が…あああ~
面倒くさいなあ~www
そのうち気が向いたら書きます。
つか、結構うぜえ話になってくるので~(;^ω^)
ファンタジーですよん。
麗乃&ユキの話はこの頃、長短合わせて30作ぐらい書いてるの。
よっぽど暇だったんだね~www


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