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2019-11

宿禰慧一編 「オレミユス」 1 - 2009.11.24 Tue

慧凛クリスマス

宿禰慧一編 「オレミユス」

1.
わが飢餓よ 心の飢餓よ
天の哀れを 請うがいい
さらば 祈らん
与えよ、と…


 天候の所為で飛行機が遅れた。
 携帯でメールは送ったが、あいつは気がつかないことが多い。
 空港で待っていると言っていたから、遅れたらきっと心配するだろう。
 十二時間の飛行時間が、たまらなく長い。
 本を読んでも映画を見ても、凛一の顔がちらついて仕方がない。
 九月に別れてまだ三ヶ月も経っていないというのに…と、自分で呆れ返った。
 本を閉じライトを消して、目を閉じた。

 何故だか近頃は、あの子の幼い頃の夢ばかり見る。
 母や梓の所為なのかな…
 あの子をひとりにしてしまったことを責めて、俺を恨んでいるのかな。
 もしかしたら、俺が凛を愛さずにはいられなくなってしまったのは、あんたらの所為かも知れない。
 呪い?
 …呪いでもなんでもいいさ。
 俺は凛一に縛られている。
 赤く温い血の鎖は誰も切れない。だが、あいつが俺を必要としなくなったら…
 その時は、その鎖を俺自身が断ち切ってやる。
 その覚悟は出来ている。
 だから今は…
 あいつが手を離すまでは、騎士でも下僕でも何にでもなってやる。

 人気のない静かなターミナルで凛一は待っていた。
 俺を見た途端に鮮やかな笑顔を見せ、走り寄る。
 一年半前のよそよそしさなど微塵もない。
 真っ向に見つめてくる瞳は眩しい程に輝きを放っている。
 だが少しだけ潤んでいるのを認め、問うと、昔の事を思い出していたと言う。
 俺と同じだと密かに笑い、俺たちは抱擁した。
 凛一の身体は思ったよりも冷たく、ひとりで待たせた時間を俺は恨めしく思った。

 成り行きで高級ホテルのスイートに一泊する羽目になった。
 全く持って、思いも寄らぬ話だ。
 部屋も眺めも最高だが、クリスマスにこのシチュは…俺には酷な気がしてきた。
 しかもベッドはゴージャスだろうがいかにでかかろうが、ひとつしかない。
 これに凛とふたりで寝るのか?
 …俺は頭を抱えたくなる。

 俺の憂鬱を全く気に病むはずもなく、凛一はガキのようにはしゃぎ回っている。
 風呂に入れば、部屋が見渡せるガラス張りの窓に裸のまま這いつくばって動かない。
 真正面の俺はマトモに凛の裸と真向かうことになる。
 別に凛は俺を見つめているわけじゃない。俺の後ろの窓の向こうに見える夜景に見惚れているだけなのだ。
 それなのに…俺は凛一の身体を眺めて欲情している。
 俺の唯一の逃げ道は目を瞑るだけだ。

 風呂を交代して上がった後も、凛一は俺に一切やすらぎなど与えてくれない。
 俺の思惑など見事に無視してセックスしようと抱きついて離れない。
 これは凛の悪巧みのひとつなのか?俺は疑念を抱きたくなる。
 それなのに…
 寝ついてしまえば、先程の小悪魔な姿態は微塵もなく、ただ無心に眠りに貪りついている。
 俺は大きくひとつ溜息を吐いた。
 どうしてこうも自分は情けないのだろう。
 いっその事、凛一を抱き、俺のものにしてしまえば、こんなに苦しむ必要はないはずだ。
 凛一だって俺とセックスしたところで、それを否定するとは思えない。
 だが、こいつはセックス自体を「愛する」という行為とは認識していない。
 もし俺が凛一と寝てしまったとして、凛は自分を抱いた俺を今まで寝てきた男と同列に並べてしまう気がする。
 そんな事は我慢がならないし、凛にとって特別の男でいなければ俺の存在する価値など無いに等しい。
 それに、
 もうすでに凛一には恋人が居る。「愛してる」と、断言するクセにセックスはしていないと言う。
 凛一が本気でそいつと恋愛してるなら、見守ってやるのが兄としてのが努めなのだろう。
 そして凛一はそれを望んでいる。


 パジャマに着替えた俺は、凛一の眠るベッドの隣に静かに横になり、凛一の様子を伺った。
 凛は昔から寝つきがいい。幼い頃は良く夜泣きをして俺たちを困らせたが、育つにつれて、「おやすみなさい」と、言うが早く、すぐに俺の胸でスヤスヤと寝入ったものだった。
 安らかな寝息を立てる凛一の頭を撫でてみた。ビクともしない。
 肩肘を立て、深く眠る凛の頬を撫でながら、俺は呟く。
「なあ、凛。恋人を愛してると言っておいて、その舌の根も乾かぬ先に俺とセックスしたいって言うのかい?俺の本当の心を知ったらおまえは俺に、同じ事を言えるのだろうか…」
 頬を撫でた手の平を凛の首筋に移動させる。
 前空きのパジャマのボタンもキチンと留めないままでいるから、鎖骨から胸、乳首まではだけてしまっている。
 俺は指先だけでゆっくりと凛の身体を撫でた。
 首筋、喉仏、鎖骨、少し浮き出ている肋骨、ピンク色の突起、規則正しく響く心臓…

 俺は凛一の耳元に秘密の囁きを繰り返す。
 「凛…誰も好きになるな。誰のものにもなるな。自由に身を任せ、他人の縁など切り捨てろ。おまえは俺に繋がっていればいい。おまえは俺が守る。だから…俺のものでいろ…」

 呪文は呪いであり、魔法であり、願いになる。
 言い換えればまさに、希望だ。
 俺はなんという場所に来ている。
 肉体的見地と精神世界の狭間とはこんなに虚ろなものなのか。
 白く浮かぶ凛の身体を、誰にも、神にも(もし、存在するならば、だ)晒せたくない。
 俺は凛一を抱きしめた。
 凛は眠ったまま、甘えるように頭を擡げた。
 昔のままに…






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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


● COMMENT ●

ルーク(-o-;

あんな大空あゆむなんかほっときなさいよ(※大空あゆむといったのは作家の小林信彦です)。
けい、そのうち体壊すわよ。
しの篇とけい篇を連休中に読みました。
しの篇でしのに同情し、けい篇でりんに同情した(笑)
やっぱりけいは豆腐の角行き(・∀・)
作者のサイアートさんを怒らせるのを承知でいってしまうと、「寝れば?」です(´・ω・`)
この膠着状態、ほかにいったいどうしろと?
寝ても寝なくてもどちらにせよ変化はある。
必ずある。
暴言でしょうか?

七月さん

うちの実家の犬はルーク・スカイウォーカー言いました。
バカ犬でいつも人を噛んでいましたwww

いやん、怒んないよ~だって慧は悪役だもん~
寝たい。だけど今の凛との繋がりを変えたくない。慧はそれしか考えてない。
慧も凛もHに重要性を求めていない。
Hをして変わることが怖いだけだと思う。
私は実の兄弟ならば、普通に考えて物凄く葛藤すると思うんだがね。しかも慧は親代わりでオシメも代えていたんだよ。
そういう兄弟をまぐわせるっていうことは、自分ではかなり躊躇するんだがね。
実際のBLではよくあることなの?自分は読まないからわからんが、もしそれが当たり前であるなら、それはおかしいと言わざるおえないね。禁忌というのは、常識的に考えていちゃいけないことをどうしようもなくて冒してしまうことだろう。
この二人が寝る時はね、覚悟を決めた時だと思う。
それはまだ全然今じゃないんだよ。

でも、真面目な意見うれしかったぜ!ィェ‐ィ v(´▽`v))))))
そして、読んでくれてあんがとな。もう下手でごめん~(;´▽`A``
勉強してないのが丸わかりだね。
ボケて頭に入らんわ

サイさんの7月さまへのリコメを読んで

実際のBL小説でも血の繋がった兄弟で…というのは
あまり見かけないです。(まったくないとは言いませんが…)
実は血が繋がってなかったとか、片親が違ってたとか、
なんかしら逃げ道がないと、嫌悪感を覚える読者は少なくないでしょうね。
とはいえ、近親相姦もののアンソロジーとかもありますから
一部に愛好家が存在するのも確かなことです。
ただし、そういうなんでもアリな読者は若年層に多いと思われます。
年をとって子どもを持ったりすると考え方が保守的になってくるものでしょうから。
その点、サイさんは考え方が柔軟でお若いな~と感心してしまいます。
近親相姦を禁忌として書いているのだとしても、
その禁忌に挑む攻めの姿勢は尊敬に値します。

さくちゃん

この設定はさくちゃんは初めから嫌がってたもんね~
私はね、読んだ事もなければ、自分も近親相姦に興味もなかったけど、ボルジア兄妹でも織田兄妹でもそういうのがあったし、なにより私の大好きな漫画「夢見る惑星」っていうんだけど、あの主人公イリスは父王と血の繋がった妹との間の息子として生まれて、凄く葛藤するんだよね。それをすごく考えた時期があったから、この物語を考えた時、(慧一を産んだ時)この禁忌をやろうと思ったんだよね。
男同士では子供は出来ない。これは大きなことだよね。H自体の重要性は薄れる。じゃあ、何が一番冒してはならないかと言うと、兄弟という血の繋がりだよね。
それがあるから慧一だってあれほど苦しんで悩む。
わたしゃ、こんだけ悩ませるのはかたくな過ぎて読んでる人は七月さんのように呆れているんじゃないかと思っているんだよ。
さっさと寝たらいいのに…と、いう感想が一番多いと思ってねえ~
だから柔軟で若いと言われると…アレ_(・・?..)?アレェと思う。

褒めてくれてるんだよね~(;´∀`)www

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褒めてますー。
それにやっぱりサイさんは若いと思いますよ。
アンテナの感度がいいというか…。

内緒さん

コメあんがとね~

慧は凛が生まれるまではマザコンじゃないかと思ったりする。
梓や父親がいるから慧は母親に甘えきれない(自分のものにできない)と、いう抑圧された愛情を凛に注いだ…。とも、考えられるし、あとひとつ、慧にとって凛は「宿命の人」であったってこと。
慧の一方的な想いではあるけど、これも純愛だと思う。
慧がそれを認識している限り、凛にたいする執着は消えようもないね。
肉親の愛情から肉欲の愛情へ変わる様っていうのは、どうなんだろうねえ~
慧にもっと聞かなきゃならんわ(;・∀・)

さくちゃん

アンテナの感度は良く受信できるようには向けている。
たぶん子供たちとの会話が非常に多いので、これがすごく役立っている。
色んな事、とくに下のぬこはオタク的であり、情報量が半端ないからね~こっちがウカウカしているとバカにされるから、ぬこと競争で色んな情報を仕入れることにしているんだよね~
今日はこんなこと仕入れましたよ~って自慢話に花が咲く毎日です。

ああ、待ってました!

何か論争がでないかなぁって思って「こそっ」っと読んでいましたが
「近親相姦」で出ましたか?
すごいなぁ。

次のイラストにレイ、アルスそしてヴァルっていう血は繋がっていないけど「育てた」って経緯のある人たちの性愛があって、それも大きく分けると近親愛?

慧一の気持ちがお話の最後でどうなるのか?
かぶりつきになってしまいます。

サイさんのアンテナはぬこさんからなのかぁ。
若いはずよね~。

本編とコメントを読み終わって頭がよくなったような気分です。
気分だけね(-_-;)

アドさん

どんな論争を待っていたんだよ~www(;´∀`)

なんか書いてて地味な話だなあ~って、自分で呆れるんだけどね~
慧一の気持ちがこの物語を左右していきますよ。
勿論凛に選ばせるけどね。
その時凛がどんな感情で決断するのかが、自分は見ものだと思う。
まあ、自分がどこまで凛になりきるかが問題なんだけどね~

この話読んで頭が良くなるのは…アドさんだけだと思うよ~www
書いてる自分が一番アホだから~www


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