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2019-09

君の見た夢 2 - 2008.11.06 Thu

適当にレトルトのポタージュスープとバターを塗って焼いたロールパンを用意した。朝ごはんのメニューだな。もう昼はとっくに過ぎてるのに。
「ごめん、こんなのしか用意できなかった」
「全然いいよ、ありがとう。お腹けっこう空いてるみたい」
「そう?じゃあ、食べて」
良かった。俺のお気に入りのトレーナー、丁度いいし、ちゃんと似合ってる。
「おいしいよ、このスープ」
「唯の即席だよ」
「でもおいしいもん」
「そう、良かった」なんだろ、こいつ。喋り方がなんか、舌ったらずで辿々しくて、無茶苦茶かわいいじゃんか。
「パンもおいしいね」
「夜はちゃんとまともなもの作るからね」
「ありがと」
「ところでさ…名前とか…わかる?」
「うん…なんかさ、頭打ったみたいで…」
「えっ?どこ」
「ここ」頭の後ろを指す。そっと触ってみると、酷くは無いけれど、コブが出来てる。
「痛い?」
「うん、少し」
「冷やそ。確か、アイスノンあったと思うから」
一年中冷蔵庫に入れたままの、アイスノンを取り出し、タオルにくるんで、男の後頭部に当てる。
そういえばさっき頭を拭いた時、何も言わなかったけど、痛いのに我慢してたんだろうか…と、思い聞いてみた。
「いや、俺もまだボーッとしてたから、あんまり気づいてなかった」
「どう?」あんまり冷やしすぎてもいけないと思い、伺ってみる。
「うん、気持ちいい」
後ろから見る男の細いうなじや後ろななめに見える顔の輪郭が、なんだか凄く繊細でキレイだと感じた。それ以上に感じるのは親近感。なんだろ、家族にも似た近しい感情。

「名前」
「えっ?」
突然、言われてびっくりした。節目がちに何か考え込むように、頭を傾けるから、アイスノンを持った俺の手も合わせて傾いた。
「えっとねぇ…ユキ…って…」
「ユキ?」
「うん、そう呼ばれてた気がする」
「そうなんだ」それだけしか覚えてないのかな。
「住所とか?」
「…ごめん、わかんない」
その言い方が小さな迷い子みたいに途方にくれたみたいで、保護欲をそそる奴だと思った。
なんだか子犬拾ったみてぇだな。いやいや、こいつは人間だ。
ちゃんと警察とかに届けなきゃならないんだろうけど、そんな気には全くならなかった。

「もう大丈夫みたいだよ。ありがとう」
「そう?」
「うん。ソレ持って冷たかったでしょ、ゴメンね」
「別に、気にしなくていい」
俺はユキの頭のコブをもう一度確かめて、冷たくなったところをタオルで押さえた。
「ほら、しばらく押さえてろよ」
「うん」

コーヒーを差し出すと、ブラックで飲み始めた。俺は猫舌の為、適温になるまでしばらく待つ。
「あの…さ」目の前に座るユキが、上目遣いで俺に聞く。
「なに?」
「名前…聞いていい?」
「あ…」不安げな声に俺はハッとなった。
そういえば自分の名前どころか、何もゆってねぇよ。軽い誘拐犯みたいに思われた?
「ゴメン。自己紹介まだだったな。えーと、香月麗乃っていいます」
「れいの?」
「うん、麗しいにすなわちだね。ついでに、今日で26才になりました」
「えっ?今日が誕生日だったの?」
「うん」
「あ…ゴメンね。なんか俺みたいなの、迷惑かけてしまって」
「別に、迷惑とか思ってねーし…それにね、26にもなると誕生日が特別とか、あんまねーし」
「そう?」
「うん、だから気にしなくていいの」
「うん」
「でね、詩とか絵を描いて暮らしを建ててます」
「へぇ、詩人で絵描きさんなんだ…すごいね」
「別にすごくねぇよ」
「なんかわかんねぇケド、想像して形に出来る人って凄いような気がする」
「…」すごい不思議な回答をする子だ。
「あの…」
「はい」
「こうづきさん…って呼んでいいの?」
「いや、麗乃でいいけど」
「れいの…きれいな響きだよね…」
「そっかな~女と間違われるんだけどね。まあ仕方ねえか」
「そんなことないよ。きれいだけど…こう…芯があるってゆうか…かっこいいと思う」
「…」
なんか顔が熱くなる。なんだ?結構名前に突っ込まれるのは慣れているハズなのに…
「麗乃って呼んでいい?」
「勿論」
なんだかね、すごいかわいい言い方するのな。
おんなじ呼ばれ方でもこんなにニュアンスが違うのかね。不思議…
「あの、麗乃…くん」
「麗乃でいいからさ」
「ん、麗乃」
「はい」
「俺、ここにいてもいいの?」
「俺はかまわねーけど…け、警察とか届けた方がいいのかも知れないし…」
「そう…だよね。俺、自分が何者かもわかんねぇんだし…」
「もしかしたら、おまえを探している人が心配してるかもしんねーし…」
「うん…なんかさ、なんか、思い出せそうな気がするんだよね~なんだろ、すげぇ頭ン中モヤモヤするもん」
「まぁさ、焦らずゆっくり思い出せよ。好きなだけここにいても、俺は全然かまわないからね」
「ホント!…よかった~」
「なんで?」
「だってさ、警察とか行ったら怖そうだもん」
はぁ、やっぱかわいいわ。なんだろ、男にかわいいとか思ったことねーのに。なんか、こいつ見てると本能的に守ってやりたくなる。
「ここに居ろよ、ユキ」
俺の言葉にユキは嬉しそうに頷いた。



☆彡生活感ありまくり^_^;

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