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2019-09

水川青弥編 「焦点」 1 - 2009.12.16 Wed

リンミナ

焦点
1、
 リンと初めてセックスをしたおれはどことなく気分が浮かれっぱなしだった。
 長年のコンプレックスが解消されたからだろうか、今まで気を病んでいたことがつまらないものに見えた。
 リンがおれに教えてくれたのはセックスだけではなく、色んなものの味方だった。
 一つの方向ばかりに囚われないで角度を変えて眺めてみる。
 美しさは一遍どおりのものじゃなく常に色んな形に変わるものであるし、美しい面もあれば汚い面もある。固定概念に囚われるなということだろうが、中々上手くはいかない。
 だって、リンはどこから見ても綺麗だし、おれにとって嫌なところなんてひとつもないのだもの。
 こんな引っ込み思案のおれを沢山褒めてくれるのも本当なら信じがたく、薄ら寒い嘘に白けてもよさそうなのに、リンが言うとなんだかおれがとても立派な人間に聞こえてくるから不思議なんだ。
 単に口が巧いだけなら、おれだって歯牙にかけないのだが、リンの言葉はなんだかおれの心にひとつひとつ刻んでいくようで、いつまでも残り続ける。

 初めてお邪魔したにも関わらず、おれは宿禰の家に丸二日間居付き、その間、する事といったらセックスと勉強だけだった。
 何回かなんて数えるのも恥ずかしいぐらいリンとした。
 今まで知らないでいた自分の渇望だろうか、最初はリンの方から誘ってくれていたが二日目の夕方になるとリンと離れるのが寂しくておれから求めた。
 気持ち良いからしたいというだけじゃない。宿禰凛一という人間に惹き付けられてしまったという想いの方が強い気がしてきてならない。
 強いて言えばリンへの依存性が強まるのはとても怖い気がした。
 いつか自分が飽きられる、捨てられるという不安が始終おれの観念から取り付いてやまないからだ。
 だが、それ以上におれがリンを求めている。
 リンが欲しくてたまらない。誰にも渡したくないという欲求が遥かにしのぐ勢いでおれの中で成長している。それは簡単に抑えられるものではなく、「恋」というこの圧倒的、狂信的なものに自分自身太刀打ちできなくて為すがままに翻弄されている気がした。

 二日間をリンのマンションで過ごした後、寮に帰った俺は同室の根本先輩からの嫌味や冷やかしを案じていたが、先輩は「良かったね。これでみなっちも一人前の男の子だねえ」と、穏やかに笑い祝福してくれた。リンが言った根本先輩は信用していいという言葉は本当だったみたいだ。

 二年になっても俺は根本先輩と同室で、それを先輩は舎監である保井先生が勝手に決めているような言い方をする。
 保井先生と根本先輩がどういう関係かなんていうのは野暮で、この寮に住んでいる生徒は大概知っている。
 しかも公認であるにも関わらず先輩は他に気に入ったターゲットがあれば食いついていくのだから、保井先生も辛抱強いものである。
 おれだったら…おれが保井先生でリンが先輩の立場であったなら、おれは許せるだろうか…他の奴とセックスをするリンを許せるのだろうか…許せないと思ってもそれをリンに言えるのだろうか。
 言葉にすれば二人の関係は壊れる…そう思って先生は言わないのではないか。

 おれはそれを先輩に問いただした。恋人が居るのに何故他の男と寝たりするのか?と。
「単にぼくがセックスが好きと言うのもあるけど…そうだね、相手の愛情を試しているのかも知れないね」
「試す、んですか?」
 就寝すべくベッドに横になった根本先輩は学習机に張り付いているおれをいつも一言呆れた言葉を吐いて寝付く人だが、今夜は珍しくベッドの中で本を読んでいる。
「愛情ほど変わりやすいものはないよ。温度であれ形であれ、たった一つの言葉で浮かれたり沈んだりねえ~相手がぼくのことをいくら愛してるって口で言ってもさ、それが見えるわけでもないからね。それに恋人ってさ、すごくうつろな存在だと思うんだ。少なくとも…ぼくは三年生だろ?大学は関西の方を狙っているからね。恋人ごっこは卒業したら終わりだよ」
「ごっこ、って…」
 根本先輩の実家は三重の鳥羽の方だった。だから関西の大学にというのはわかるけれど…

「そんなに簡単に好きな人と別れられるものなんですか?」
「簡単じゃないよ。でも…恋人同士っていつかは別れるもんじゃないのかな。いつまでも愛してるという状態の気持ちを持続できるパッションは持ち得ない、と、ぼくは思うんだ。愛情を信じないっていうのとは違うよ。変わるのは普通だと言いたいだけさ」
「でも、本気で好きになった人を一生愛したいと思わないですか?だって…期限付きで人を好きになったわけではないでしょう」
「人間にはもともと期限がある。命っていうね。もっとゆうと賞味期限もある。だから、美味しく感じられる時に食べなきゃ損っていう理屈も成り立つ」
「…」
「その逆で、他の甘い蜜には目もくれず、そいつだけを一生味わい続けるっていう希少な動物も…たまにいるのかもね。みなっちはどっちかな?」
「おれは…リンだけでいい。だけど恋愛はひとりでするものじゃない。おれがいくらリンを好きでいてもリンがおれをずっと好きでいてくれるとは保証できない…」
「保証どころかさ、本当に相手が自分を好きなのか?自分は本当にこの相手を好きなのか?いつだって揺れ動いているものだよ、恋って」
「先輩は自分がどう思われているか、本当に愛されているのか…不安にならないんですか?」
「なるさ…不安で仕方がないさ。だからいつ捨てられてもいいようにね、自分が惨めにならない方法を考えるのさ」
「…」
「どっちみち人間っていう奴は独りで生きるしかないんだと思うよ。どんなに好きあっていてもね」
 先輩は読んでいた本と閉じると「おやすみ~」と、布顔が隠れるぐらいに布団を引き上げて眠ってしまった。
 暗くなった部屋の中、机のスタンドだけが煌々と明るい。おれは開いた数学の問題集を見つめた。
 今のおれは問題集より遥かに難しい問題に頭を抱えている。 

 先程の先輩の言葉は「恋」に浮かれている自分には理解しがたいものではあるが、もしリンを失ったらとても生きてはいけないとさえ思えるおれは、もう孤独な自分など見たくもないと思うのだった。







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● COMMENT ●

根本先輩

臆病なわたしは思わず同族意識……

それぞれのキャラで視点を変えつつ物語を語ってゆく試みは面白いと思います。。
ただ、時々いま自分が読んでいるところはこれまで語られたと箇所だったのか違うのかと考えてしまうときがある(^_^;)
これが難点かも……

私信ですが残業続きでゆっくり小説を書く時間がとれません。もう何日更新してないか。

七月さん

元々は朔田さんとやって別々の視点で書くという話だったんですよね~
でも、思うにコラボって凄く難しいと思う。
うちらは綿密な中身を考えていなくて成り行きでやっていたから特に大変だったろうと思いますよ、朔ちゃんの方が。
ミナは振り回される方だったからね~
自分がミナを請け負う時、同じ人間が書くのだから全く別の考え方をすることは難しいなあ~と思いつつ、しかもこの話は結構色んな人が出てくる。
何回も同じ場面をやるから同じ考えを並べ立てなきゃならないしね~
でも思うに…自分も人と話す時、何回も同じ事言ってるなあ~ってこともあるし…
なんかこのふたりの話も本当に必要なのか…わからん様になるよ。ただ…同じ事を言わせてるのはわざとだけど。
しばらくね、ミナが凛の固執する感情を書きたいんだよね。今まで何にも固執しなかったミナが始めてひとりの男に惚れて固執して欲望をむき出しになる。
それから…っていう話なんだよね、ミナ側から話は。

お仕事ご苦労様です。
私も絵に時間取られています。漫画も描きたいと思うけど、…むずかしい。才能があまりにもなさ過ぎる…(;´Д`)
私も更新は決めないでやっていこうと思います。
ランキングも来年からはやめようかと思う。
のんびりゆっくりやっていきたいので。

コラボ

ちょっとまえにふたりのブロガーさんが、やっぱりそんなコラボをやってたようです。
じっくり読んでいたわけではないけど……
あるカップルの、受け視点と攻め視点とをふたりのブロガーさんがバトンのようにして書きすすめていくというものでした。
ひとりのひとが話を攻め視点でどこそこまで進め、それをアップする、するとそれを読んだもうひとりのひとが、まったく同じ場面をこんどは受け視点で書く、というスタイルをとっていたような……
つまり話としては「表(攻め)と裏(受け)」という進め方でした。
斜め読みで申し訳なかったんだけどそんな感じだった。
しかしおもしろい試みだとは思った。
この場合は、さきにひとりのひとからストーリーを振られるので、きっとさほど齟齬をきたさなかったのかもしれない。
それにごく短期のコラボだったようだし……
でもサイアートさんと朔田さんは、またちがったんでしょ?
それはたしかに、よほどストーリーを細部まで顔をつきあわせて綿密に打合せでもしないとたいへんでしょう。
もしわたしだったら、ストーリーを書く以前に、どうやったら矛盾をきたさないかとかばっかりに気をとられて終わりそう。
過去に一度「リレー小説」を企画してみたことがあるんです。
これ、たいへんにしんどかった!!

わたしは筋の先をはやく知りたいと思ってしまうので、いまいったい筋のどこらあたりにきているのか、なんてせっかちについ思ってしまったりする。
わたしはことに小説に関してはせっかちな性分かもだから、「難点」なんていってしまってごめんね。
サイアートさんの思うとおりにやっていいんだと思います。
自分(わたしのこと)だってそうやっているくせに、ひとのことをああだこうだというのはずるいよね。

七月さん

いえいえ、人が自分のを読んで判りにくかったりしたら教えてもらったほうが自分の為になるので、どんどん言って欲しいです。と、いっても自分も全く下手なので、言われても改善できないとは思うのですが…
私は以前3次元で友人とリレー小説をやってまして、それは完全に自分らふたりの為だったのですが、なんせ3次元だから実際に居る人がモデルんだから、結果はTVで見れるんだから遊びに遊んでいいよね。楽だった。
同人誌での4人でのリレー漫画はね(20以上も前だが)~これは楽しかったよ~もうめっちゃくちゃで…で、結果、終らずに終ったというね~www
いや、やってたのしかったから良かったけど。

案外独りで書く別々の視点でのテキストってあるんですよ。私はある3次元のサイトのそれを見て、すごく面白かったんですよ。
ただ、それは短時間のHをお互いの視点で書いたものだったので、この話のような長い期間になるとやっぱりくり返しの場面はうざい気はするんだよなあ~

そのコラボは私もちらりと読んだ。おふたりとも上手い方だから安心して読めるよね。
でも自分が求めるものではないんだよね。だから難しい。描写の重点をどこに持っていくのかで描き方が変わるしさあ~
もう試行錯誤もいいとこよ。
正直七月さんのように語彙が豊かだと表現方法も広がるだろうなあ~と思うが…浮かんでこないよおお~(;へ:)
七月さん、まだボケてねえよ!えらいよ!やっぱ社会人と三食昼寝付きに違いかな~(;´Д`A ```

おおお、ミナ

オレミユス終わったわけじゃなかったんです(^_^;)失礼しました。
ヨカッタ。と、言うことは今後の慧一さんも読めるということ!!

ミナ編は、サイさんが書くことでまた違った切り口になりましたね。
根元先輩も、何やら示唆しているようだし。

7月さんとの掛け合い(?)が面白くってコメ欄までじっくり読んでいます。
インタビュアーとしての才能が7月さんにはありますね。
サイさんのいろんな考えが出てきて興味深いです。

アドさん

忙しいのにコメあんがとね~
アドさんは最初から読んでるから知ってるけど、初めはこんな展開になるとは思ってなかったよね。
りんみなの恋物語でハッピーエンドで終るつもりだったんだもん。
紫乃編からだよね、おかしくなったのは。
慧一の本性が出てき始めて違う道に行き始めた。
追想と慧一編で慧一よりの見方が多くなってきて、これはもう三角関係にしかならなくなったけど。
思うんだけど、割と多くの方が慧一×凛を望むのは、慧一の苦悩と報われない愛情を知っているからだと思うんだよ。
ミナはまだそこがない。たぶんさくちゃんはミナ自身が何故自分みたいな奴に凛はかまうのだろう、どうして好きとか言うのだろう…そういうミナ自身の葛藤を描きたかったんだと思う。さくちゃんの意思とは違ってしまって、申し訳なくおもうんだけどね。

私は正直ね。終わりをどうするか…決めかねる。
慧一編を書いている時は慧一と凛に、ミナ編を書いている時はりんみなで終らせる。凛編では兎に角悩む。
まだその状態になっている。
慧一と凛はそのうち寝るのは間違いない。それを含めてミナは凛を愛さなきゃならない。自分に自信があろうがなからろうが、全身全霊で凛を求めなければ、慧一に勝てないんだよね。
だから、これからはミナの凛への愛情の育ち方を書かなきゃならない気がするんだ。

こんなややこしい話、自分も初めてで大変ですよ~(;´▽`A``
こんなんですが来年もよろしくね~

きゃぁあああああああ

ちょっと! サイさん
いいんですか? そんな爆弾発言!!!
いや・・・慧一編を読んでて…あら?
コレは、このまま突っ走ってもいいかな?って何度も思ったけど。

リンミナが、素敵に完成された話になっているから難しいかな~って思ってました。

慧一と凛一、こちらは宿命
リンとミナ、こちらは運命

似ているケド、微妙にリンにとっては違う!
ミナには決して理解できないところだと思います。

や、ややこしい・・・(-_-;)ややこしい以上です~。

ものすごい宿題ですね~。
来年も宜しくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

アドさん

あの兄弟はいっぺんは寝ないことにはどうにも並んだろうと思うのですよ。特に慧一は凛と寝ないと病気になるwww
この兄弟は寝て、それから関係がどうなるか?
そこが重要な気がします。
兄弟と言う絆が寝てしまってどう変わるのかかわらないのか…そこら辺もよく考えて書きたい。
凛はHに関してそう深く考えてない。
でもここはじっくり考えないといけないところ。
だから話はどんどん暗くなるし、正直読んでいても楽しくない。
これは最後まで楽しくない話なんだよね。
誰かが傷つく話だから。
でもいつか無事目的地に(そこかどこかはまだわからないけれど)着陸できるように操縦していくつもりです。

こちらこそよろしくお願いします。
しかし…
歳を取るって…やだ~っうあ゙ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゙ぁあぁ゙ああぁぁうあ゙ぁあ゙ぁぁ


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