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2019-09

水川青弥編 「焦点」 2 - 2009.12.21 Mon

2.
 リンの誕生日は四月十四日。平日だったがどうしてもリンと過ごしたくて、リンのマンションでふたりだけのパーティを催す事にした。
 平日の外泊は禁止されている。
 根本先輩に相談すると彼はニヤリと笑い、
「じゃあ、今晩、みなっちがリンくんにめっちゃ熱いサービスするって約束するのなら、後はまかせてよ。ついでに、熱い一夜を僕にもれなく詳細に話して。参考にするからさ」
「…なにひとつ先輩の参考にはならないと思うけど…」
「いや、あのリンちゃんだよ?どんなワザを持っているのか知りたいじゃない。みなっちは初めてだからわかんないことだらけだけど、宿禰はねえ~。正直さあ、みなっちは宿禰みたいな経験を積み上げた奴を最初の男にしておいて良かったよ。ぼくなんかさあ…相手がウブ過ぎて、困る事いっぱいあるからね~」
「最初の男って…」
 そういうものなのか…まあ、そうかもなあ。おれのセックス恐怖症もリンのおかげで治ったようなものだし。
「おれにとってはリンが最初で最後の男にしたいですよ」
「そうなるといいけどね~でもね、人間って不思議なもので、ひとりだけを相手にしてても飽きちゃうんだよ。リンくんだってさあ、みなっちが新鮮なうちはいいけど、そのうち飽きるかもね~」
「…うるさい」
 それでなくても自信がないのに煽らないで欲しい。
 しかし、確かに根本先輩の性教育は役に立ってはいるし、相談や寮の融通もきいてくれるのだから、これ以上の強い味方はいない。
 それとは別に、両親がこういうおれの生活を知ったら何の為に高い金を出してココにやっているのかと怒髪天間違いないな、と、iポットを耳に嵌めて踊っている先輩を眺めながら笑いを堪えきれなかった。

 食事の用意はリンに任せて、夕方、おれはケーキを買ってリンのマンションへ向かった。
 玄関であの時の女の子と偶然出会い、ドアを一緒に潜り抜けてエレベーターに乗り込む。
「今日も凛一お兄ちゃんのところ?」
「…そうだよ」
「…本当に凛一お兄ちゃんのただのお友達?」 
 只って…
「親友…」
「ふ~ん。まあ、いいわ。でもお兄ちゃんのお嫁さんはあたしだからね」
「…」
「知ってる?男のひと同士は結婚できないのよ」
「…知ってます」
 彼女は勝ち誇った顔をしてエレベーターを降り、手を振って見送ってくれた。
 …なんだか疲れた。

 リンの自宅に伺い玄関に入ると、リンはおれを抱き締め歓迎してくれる。
 それだけで満ち足りた気持ちになれる。
 さっき、学校の温室で合ったばかりだというのに、なんでこんなに嬉しくなるんだろうか。おかしくて吹き出すと、リンも同じように思ったらしく顔を見合わせて笑いあう。
 こんな風にリンとふたりだけでずっといられたら…と、心底願っている自分に呆れたり胸が高鳴ったりと忙しい。

 食事の用意を手伝いながらエレベーターで出会った女の子の事を話すと、
「ああ、10階のミキちゃんだ。女の子はあのくらいが一番かわいいよね。純真さだけじゃなくてちょっとした媚態も備わっていてさ。俺を誘惑したりするんだぜ、小学一年でさあ。プロポーズもされたしなあ」
「すべからく色んな奴にモテて、さぞいい気分なんだろうね」
 面白くなくてつい嫌味たらっしい言葉が口をついた。
「…なんだよ、妬いてるのか?ミナ。相手は小学生だよ?」
「べっつに…妬いてないもん」
 強がりを言うおれを口端だけで笑い、リンはおれの頭をポンポンと撫でる。
「そんなに心配なら、今度ミキちゃんに言っておくよ。恋人ができたから将来の約束は反故にしますってさあ」
「そんなこと…言わなくていい」
 俯いたまま赤くなった顔を上げられないでいた。
 リンはおれを背中から抱き締め、「愛してるよ、ミナ」と囁く。
 おれは泣きそうになる。
 嬉しさと切なさと不安で…息が止まる。
 言葉なんていらないから、おれの傍にずっといて欲しい。
 
 手巻き寿司とすまし汁にポテトサラダ、それにおれが買ってきたケーキでリンの誕生日のお祝いをした。
「いつもは誰かにお祝いしてもらっているの?」
「うん。去年は兄貴がいたからね。食事に行ったかな。兄貴がいない時は、行きつけのジャズクラブで、お客さんやらなんやらで盛大にお祝いしてもらってた」
「ジャズ…」
 こういう時…
 おれの知らないリンの世界には、沢山のリンを好きな人がいるのだろうなあと思い知らされる。
 おれが知っているリンはまだ出会って一年、付き合うようになって半年程だ。
 何も知らないくせにリンを独り占めしようとするおれは貪欲な人間に思えて仕方がない。

「リン、誕生日のプレゼントだけど…」
 おれは自分で描いた絵をリンへの誕生日のプレゼントにした。
 クリスマスの時にリンから貰った色鉛筆を使って描いたものだ。
 温室の草花をコラージュ風に纏め描いたものだが、納得がいかなくて美術部の先生に指導を受けた。 先生は美術部への入部を盛んに勧めるが、おれは丁寧に断わり続けている。
 関心が向くと気が済むまでのめり込むのが自分の性質だろうと感じていた。だから、勉強以外に懸命になりそうな事は避けなきゃならない。
 と、言っても今のおれは目の前の奴に懸命になっているから、今までのおれ自身への忠告は恋愛には敵わなかった事になる。
 
 リンはおれのプレゼントを喜んでくれたが、「俺の肖像画を期待していたけどね…」と、言われ口篭ってしまった。
 本当にはリンを描いた絵をあげたくて、何度も試してみたのだが、何枚描いても少しも気に入った風には描けなくて、断念したのだ。
「この次は…頑張るよ」
 残念そうに口を尖らすリンに、おれは済まない気持ちで一杯になる。温室であれだけリンをモデルにデッサンしていたのだから仕方のない話だ。

 ケーキを切り分け、食べているとリンの携帯電話が鳴り、リンは「あ、慧だ」と言いつつ嬉しそうに電話を取った。
 慧というのは慧一、リンのお兄さんだってことは知っている。リンの誕生日にわざわざアメリカから電話してくるなんて、よっぽど弟がかわいいのだろう。
 そりゃそうだろう。リンは綺麗だし、そこに居るだけで陽が差し込むように際立った輝く者なのだもの。お兄さんだって、誇りに思うことだろう。

「誕生日のお祝い?」
 携帯を切ったリンに話しかける。
「うん、朝起きたばかりだって」
「リンは愛されているんだね、お兄さんに」
 目の前のケーキを突きながら、おれは羨ましげに言う。こういちいち嫉妬するのも自分自身癪に障る。

「実はさ…春休みに兄貴のところへ行っていただろ?」 
「うん」
「それで、ミナのことを聞いてもらっていたの」
「え?なにを?」
「ほら、俺たちうまく…セックスできなかったじゃん」
「…」
「だからさ、慧にどうしたら上手くいくかな~って相談してた」
「…マジで…」
 おれは羞恥心のあまり、青くなったり赤くなったりとぐるぐるしてしまう。
 なんでそんなことを平気な顔で言えるんだよ。

「おかげさまで上手くいきましたって言っといたから」
「よ、よく…そんなこと身内に話せるね。恥ずかしくないのか?」
「なんで?だって俺はマジで悩んだし、ミナだってネコ先輩に相談したって言ってたじゃん」
「おれは…身内じゃないもん。根本先輩はおれたちの事を心配してくれてたし、親兄弟とは全く別物だよ」
「そうかな…俺は俺の好きな奴のことは慧にも知って欲しいって思っているんだけどな…できるなら家族に、というか沢山の奴に理解してもらった方がいいと思わねえ?」
「そりゃ…」そうだけど…
 普通は喋らないもんだよ。付き合っている奴とのセックスの事なんか。
 リンは相変わらず普通とはどこか感覚が違い過ぎるところがある。

「リンには、お兄さんは特別なんだろうね」
 嫉妬も交え、少し呆れた風にぼやくと、リンは嬉しそうに、
「慧は俺にとって、なくてはならない自分の一部みたいなもんだろうね。遠く離れてても繋がっているような気がするよ」
「…そう」
 じゃあ、おれは…おれはリンにとってどういう存在?お兄さんとおれのどっちが大事?
 …まったく不毛な問いではあるが、喉元まで出掛かって飲み込んだ。
 どうせ答えは決まってる。
「慧は慧だし、ミナはミナでしかない」と…

 
 その夜のふたりの熱さときたら途轍もなかった。まだ外はこの季節、二番目の春の嵐に吹き荒れているっていうのに…
 お互いに求め与え合い、どこまで行けるのだろうと声にした。行けるところまでだよ、と、どちらかが言った。
 最後に叫んだのはおれの方だと思う。
 堪らない…いい…大好きだ…リン。

 どこまでリンを好きになれば気が済むのだろうと、おれは自身の感情の未熟さに怖れをなした。このままではリンがおれから離れていく時、おれの心臓は止まってしまうかもしれない…と。


リンミナ1-1




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リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


● COMMENT ●

いやそれは

永遠に脅威ではないかと思いますよ、きっと……
ホモセクシュアルの男性にとっては、女性は……
負い目みたいな……どうだろう??
あってほしいなーと。

7月さん

え?ミキちゃんに対してのコメ?
ミキちゃん大きくなっためっちゃ美人で、凛のお嫁さんになったりして…
違う話になる…www


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