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2019-09

水川青弥編 「焦点」 6 - 2010.01.27 Wed

6、
 直ぐ近くのスタバに入り、おれはラテを、彼女は氷の入ったやつを頼んだ。窓際を避けて、一番奥の静かな席に向かい合わせて座った。
「先週、中学の同窓会があったのよ。青弥来なかったね」
「…学校の補習が忙しくて、こっちに帰っていなかった」
 同窓会の連絡はもらっていたけれど、その気が全くなかったので無視していた。大体中学を卒業して二年も経ってないのに懐かしむも何もないだろう。
「いくら進学校でも日曜は休みでしょ?鎌倉だったらすぐに帰ってこられる距離じゃない。私、青弥と会うの結構楽しみにしていたのに」
「…」
 どういう意味かさっぱりわからず、思わず顔を上げて原田の顔をまじまじと眺めた。
 顔かたちの変化はよく判らないが、髪が…
「髪、切ったんだね」
「あ…うん、うちの高校、規律が厳しいからね。おかしい?」
「え?別に…」
 なんだか髪型がリンに似ているって…そう思ったんだ。
 リンの方がもっと黒くて艶やかな気はするけれど…
 …え?なんでだ?原田は女でリンは男なのに、なんでおれ比べているんだろう…
 それに、リンの方が圧倒的に魅力的だって…はっきりと感じてしまう。
 …だから比べる意味がないだろうよ。バカじゃないのか、おれ。

「…あんまりジロジロ見ないでよ。恥ずかしいじゃない」
「…ゴメン」
 そんなに見ていたつもりじゃなかったが、前に座る原田は赤面しながらおれを睨みつけた。
「青弥って中学の時は、私の顔をまともに見ようとしなかったのに、高校になって随分と男らしくなったみたいだね」
「そうかな…」
「ね、好きな子できた?」
「え?」
「もし居なかったら…私ともう一回付き合ってみない?今度は…ちゃんと青弥を受け止めてあげるから」
「…」
 おれはゆっくりと目を閉じた。
 …何のときめきも高鳴りもない。彼女はもう過去の人でしかなかった。

「ごめん。おれ、付き合ってる相手がいるんだ」
「…そう、なの?」
「うん」
「青弥の高校って男子校だから…てっきり青弥はフリーなのかと思っちゃった」
「結構…多いよ。恋人がいる奴。近くに女子高もあるしね」
「青弥の彼女はその女子高の人?」
 相手が男だっていう事は黙っていよう。色々と説明するのも面倒だ。
「いや、違うけど…とても…」
 言いながらリンの笑った顔が、思いっきり目の前に浮かんだ。おれは思わず口元が緩んだ。
「大好きなんだ」
「…」
「あ、変な話しちゃったね。悪い」
「あ~あ、また振られちゃった~。私の顔をジロジロ見るから、まだ少しは好きでいてくれてるのかもって…期待しちゃった」
「…ごめん」
「いいよ。本当は悔しいけど…でもあの青弥をこんなに変えたのがその彼女なら…諦めるしかないわね」
 それまで負けん気の強さを漂わせていた原田の空気が一気に緩んだ気がした。もしかしたら彼女は彼女なりにおれに対して精一杯虚勢を張っていたのかもしれない。

 おれと原田は店の前で別れた。
「お別れの握手」と、原田が差し出した右手をおれはしっかり握り締めた。
 驚いた事にあの夏に味わった苦さ、惨めさ、自分に対する失望感は、おれの中で思い出として見つめる事が出来るようになっていた。
「元気でね、水川くん」
「うん、原田も」

 初恋の人、君を僕の中でひとつの形にする。
 小さく輝く硝子の欠片。


 お盆休みが終わり、学院に戻った。
 補習が終わると温室へ直行だ。
 リンはすでに温室に居て、植物にホースで水を撒いていた。
 虹色に輝く水しぶきの向こう側で、おれに笑いかけるリンの顔が見える。

「おかえり、ミナ」
「リン…」
 手を伸ばすとリンはホースを地面に落としておれを抱き締めた。
「会いたかった、リン…たった一週間会えないだけなのに、バカみたいに会いたくて仕方なかった」
「同じく俺も」
「嘘だ。リンは家族で温泉旅行を楽しんだんだろ?おれのことなんか忘れて」
「なんだよ、家族にやきもちか?本当は家族で行くよりミナと行きたかった。今度いつかふたりだけで温泉に行こう。露天風呂付きの部屋でしっぽりとさあ…」
「言う事が親父過ぎる。スケベ心丸出しだよ」
「ミナだって欲しくてたまんないって顔してるくせに…やる?」
「…」
 断れるわけがない。
 だって、おれの方が絶対に間違いなく…リンを欲しがっている。
 それを言うとリンは嫌味ったらしく
「ミナの絶対と間違いなくは信用ならない。何故ならば…ミナは肝心なところで降参してしまうからね、この天邪鬼」
 近づいたリンの口唇の熱さにおれは有頂天になる。
 その熱さをおれは「恋熱」と呼んだ。







5へ /7へ

リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


原田さんはもう出てこない…(;^ω^)
そして、どうでもいいらくがき…




ミナ挿絵2



● COMMENT ●

ああ、彼女あっさりスルーされた~(つд`)
歳のわりにはできた子だったのに……
登場のときにファーストネームを呼ばせ、別れるときに苗字を呼ばせるというのはうまいと思った。
自分としては、うまく書くのは難しいけど、BLに女性をからませるのは大賛成です。
つまり結果としてその小説はもうBLとは呼べなくなってしまうかもしれないけど。
わたし、いいかなあと思いつつもガシガシ女性を準主役級ぐらいに扱ってる……

個人的には、BLに女性が出るのは好きじゃないんですよね~漫画でも同じ。特に大人の肉感的な女性はNGでしょうね。
まだ少女なら許せるかも。
これは自分が女だからでしょうねえ~
女がいなきゃ子供は生まれないし、絶対的な存在である、からこそ、BLのような禁断の聖地には全く不必要なのだと思うんですがねえ~

原田さんは頭のいい人ですね。その後の原田さんを想像すると、オタクの妄想女なって、同人誌を作り出す。勿論そのBLには水川みたいな男が出てくる。
そして立派なBL小説家になる…(;´∀`)

ところで誕生日のリクは勝手に、描きますので、お楽しみに~ww

描いてくださるんならファンタジーっぽいのがいいかも……
わたしが書ければそれに掌篇をつけてみたい。

え?いや、グレとあのババ…おんにゃのこを描くつもりなので…別に書かなくても。
続編書くのでしょ?

いえ。あの~
掌編をつけたいなーと思ってるのは、まったくの新しいオリジナル……
スレートじゃないほうがいいんだけど。

ああ、じゃあ、私が想像したキャラで好きに描いていいってことね?

そうなの。
サイアートさんのオリジナルのつもりで描いてくれていい。
わたしはそこになんらかの自分なりのイメージを見出すのが楽しい。

おk!新しいキャラが思いつかんかったら、既存のキャラでなんとか描くわ(;´∀`)
いっぱい居るからなあ~www


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