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2019-11

水川青弥編 「焦点」 8 - 2010.02.02 Tue

8、
 リンのお兄さん、慧一さんには一言挨拶をしておきたかった。
 いつもリン宅へお邪魔しているし、箱根旅行券も貰っている。何よりリンとおれの関係を認めてくれているのだから、お礼を言うのは当たり前だろう。
 昼休みの空いた時間にでもと、昼飯を食べに学生食堂館へ向かう。
 おれの両親は来ていない。
 成績のことしか興味のない人たちだし、おれが体育祭で活躍するところなんて皆無だもの。わざわざ呼ぶ必要もない。
 学食に行くと、親と仲良く懇談しながら食べている生徒も大勢居る。勿論そうじゃない奴らも多数居るのだけれど。
 そちらのテーブルへ向かいひとりで定食を食う。
 こういう時は手前勝手だが寂しいものがある。
 友情なんて煩わしいし面倒だと思っているのに(事実そうだ)、独りだと寂しいだなんてさ、勝手すぎるよなあ…
 
 昼食後、リンを探しに行く。
 多分慧一さんも一緒に居るはずだ。
 教室ではないだろう、と、思い運動場へ出た。
 辺りをきょろきょろしていると、校舎の端に騒がしい一団がいた…彼らだ。
 さっきのオジサンやらオカマの人、慧一さんも居る。
 でかいビニールシートに座って、宴会さながらの賑わいで、飲んだり食ったりしている。
 しかし、何人いるんだ?…え?七、八…九…にん?
 よく見ると今年卒業した美間坂さんや桐生さんもいる。…一体なぜに?
 それに藤宮先生までも…
 そういや慧一さんとは大学時代の友人だったと、前にリンが言っていた様な気がする。

 しかし、なんとまあ騒々しくも楽しそうな賑わいだ。お花見の酔っ払いの方々みたい。
 その中心にいるのは、やはりリンだ。
 なんて無邪気に楽しそうに笑っているのだろう。
 おれは、リンにあんな笑顔を与えたことがあるのだろうか…

 校舎の影に隠れて様子を伺っていたおれは、彼らの前へ出て行く勇気はとても持てなかった。
 おれは黙って教室へ戻った。

 昼休み後、プログラムのメイン、応援合戦が始まった。
 半年かけて企画、構成を練りに練ってきただけあって、毎年どのクラスも面白いし、感心する。
 まず校歌を高らかに歌い上げ、その後一連の様式美を舞い、それから各々の創作ものを見せ合う。
 勿論おれが気になるのはリンの黒組で、息を呑んで見守った。

 なんか、黒の羽織袴のリンを見るだけで胸が高鳴って仕方が無い。
 かっこいいというか…モデルっぽいというか、ひとりだけ様になりすぎている…見ているだけなのに顔がにやけて仕方が無いから、タオルで顔を隠してガン見してしまった。
 周りの奴らの声が嫌でも聞こえてくる。
「やっぱり宿禰は目立つよなあ」そうだろ?あいつは本当にかっこいいんだ。
「同じ高校生なのに、なんでこうも輝きが違うんだよ」バカか。比較対象が悪すぎるだろ。リンは特別なんだよ。
「あそこまで決めてくれるともう、逆にファンになるしかなくね?」そうそう…え?
「あ!あの人!根本さんが出てきた。すげえ~ドレス着てる。しかも似合ってる。こわ…」ええっ?!
 …マジでかあ?
 なんかミュージカル風味になっている黒組の創作劇は、有名な海賊映画の曲に合わせ勇壮に踊っている中にドレス姿の根本先輩が現れて(どうも悪者の人質になっている姫を助けるという構成らしいが、そんなことはどうでもいい)、王子役?のリンと踊るという…たわいもない中身なのだが、リンと先輩がどこをどう見てもえらく様になってしまっていて、会場は笑いから溜息に変わっている始末。
 おれは…まあ、多少覚悟はしていたから驚きはしなかったが、最後に先輩がリンの口唇にキスをした時はさすがに憤慨した。

 応援合戦の成績はもちろん黒組が優勝した。
 その夜、同室の根本先輩を罵倒した。
「おれのリンに勝手にキスするな!」
「みなっちのリンくんは喜んでました~公開プレイでしっかり舌も入れたもんね~。彼、初心なミナばっかりじゃ飽きるって言ってたもん」
「リンは、そんなこと言わないしっ!」
 下らない挑発だったがあんまり腹が立ったので、即リンに電話を入れたが出なかった。
 完全に立ち直れなくなったおれに同情した先輩は、「宿禰はたぶん家に居ないんじゃないかな」と、気を使いながら言い出した。
「どうして?」
「ほら、彼の知り合いが沢山来てただろ?その人の店に集まるって言ってたから。美間坂さん達も行くって言ってたしね」
「…」
 リンは学校の中でも外でも、沢山の友情を分かち合う仲間がいる。味方がいる。
 おれには…おれにはリンしかいないのに…

 あまりに惨めで涙が溢れてしまった。
 おれはこんなにも独りなのに、今頃リンは沢山の仲間に囲まれて楽しく過ごしていると思うと、どうにもやりきれなかった。

 おれは心の貧しい人間だ。自分から手を広げないくせに、欲しがってばかりいる。
 リンは、こんなおれを本当に…
 必要としてくれるのだろうか…






7へ /9へ

リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


今日のミナはこんな感じ?
↑段々と壊れていくミナ…笑うとこ?

え?箱根?…次回こそは!(;´∀`)





● COMMENT ●

いや今回は笑ってばかりもいられなかった。
みながかわいそう。
同情っていうか、サイアートさんがりんタイプなら、わたしはみなタイプなんだもん。
それにしてもよく正反対のキャラクタの一人称が書けるなあと思う。
すごい!

書いてる時はなりきっているから、可哀相かってわからんけど、今読んだらミナ可哀相だった…(;^ω^)
7月さんミナタイプ…ってMじゃん。
じゃあ私Sだからちょうどいいよ。
どういうプレイがいいのさ。

いやいや文章書きに関しては、全くSにはなれない。まあMにもならんけど、自信は到底持てないね~


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