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2019-11

水川青弥編 「焦点」 9 - 2010.02.04 Thu

9、
 翌日は代休、次の日もリンには会えなかった。
 携帯で連絡を取れば簡単だが、一度取ってもらえないとその後、続けてこちらから掛けるのはなんだか気が引けた。
 金曜日になってリンから「週末においでよ」とメールを貰った。少し時間を置いて「実家に帰るつもりだったけど…行くよ」と返事をした。
 本当はすごく会いたくて、リンのぬくもりが欲しくて堪らないくせに、本当におれは素直じゃない。

 マンションへ行くまでは、リンに会うのは何だかひどく久しぶりで少し緊張した。
 体育祭までの3日ばかりはお互い忙しくてゆっくり会えなかった。

 リン宅へ行くといつものようにリンはおれを抱き締めて迎えてくれた。
 だけど何だか…少し元気が無い。

 一緒に昼飯を作りながら、おれは体育祭の日に携帯電話で連絡したのに返事が無かった事を責めた。
「あ、ごめん。俺、出かける時はバイブにしてるからわかりにくいんだよなあ」
「でもその後履歴見て…確認するだろ?」
「…あんまり、気にしてないから…見ないで消したかも」
「…ひどいよ」
「あの日は大変だったんだ。サテュロス、ああ、前に言ってたジャズクラブのね、連中が体育祭に来てくれてて、それで終わった後、お疲れ会があってさ。新橋の店まで連れて行かれてね。美間坂さんと桐生さんも一緒になって盛り上がったんだ」
「…すごく目立ってたよ、あの一団」
「俺が応援合戦に出るって教えたら、見たいって言い出してね。俺、親に運動会や学芸会って来てもらったことがないからさ。そういうのを気遣ってくれたのだと思う。あの人たち本当に優しいから」
 リンの過去の事を言われたら、おれは何も言えない。
 質素で平凡だが、おれは親の愛情は十分受けて育っている。
 もしかしたら、うちの両親も少しは見たいと思ったのかな…なんだかリンに感化されて良心が痛んだ。

 食事が終わった後、リンとリビングのソファで抱き合った。
 やっぱりリンはいつもより少し影が強いみたいだ。
 おれはリンとキスをしながら、なんとなく聞いてみた。
「体育祭、お兄さんも来てたね」
「うん」
「アメリカから?」
「予定は無かったんだけど、急に前日に帰ってきたの。びっくりしたよ。俺の応援合戦をどうしても見たかったって。そんで次の日帰っちゃった…」
「そう…挨拶ぐらいしたかったな」
「…うん」
「リンが元気ないの、その所為?」
「そう…かもしれない。色々、考えるよ。ミナに言う事じゃないかもしれないけどね。俺はどうしても慧に対して負い目がある」
「負い目?」
「そう。慧と梓の中学、高校時代は俺を育てる為にロクに学校行事に参加していない。慧一は特に…部活も修学旅行も行ってない…放課後すぐ帰宅するから応援団やら、そんなものは一切していなかった。一番楽しむことのできる青春時代を彼は俺の為に味わうことが出来なかった。どれだけの犠牲を払って俺を見てくれたのだろうと思うとね。俺はどうやって彼に返したらいいのか…考えるんだ」
「…慧一さんは、嫌でリンを育てていたわけじゃないんだろ?部活や学校の行事より、リンの世話をすることが大事だと思ったんだよ」
「…」
「それに返すっていってもさ。親が子供を育てるって、別に何かを返して貰いたいからじゃないだろ?ごく自然の母性愛みたいなもんだろ?リンのお兄さんだってリンに見返りを求めてなんかいないと思うよ」
 リンは目を伏せ苦渋の色を浮かべて僅かに呟いた。
「…慧は…親じゃない」
「リン…」
 リンはそれっきり何も言わなかった。

 その晩、おれ達はセックスをしなかった。
 マンションへ来る度に必ずするというわけではなかったけれど、疲れてもいないしケンカをしているわけでもない。 
 ただ…その夜、リンに情欲の気配はなかった。
 

 翌日、リンは昨夜の暗い影を引きずってはいなかった。
 箱根へ行く計画をおれに色々と説明しながら、楽しそうに笑ってくれた。
 おれはその笑顔に酷く安心してしまい思わず涙ぐむと、リンは「ごめんね」と、一言言い、おれを抱いてくれた。
 
 リンの腕も身体も細い。おれもそう。だから、お互い頼りないなあと笑う。
 だけどおれは…強くなりたい。
 自信なんて粒ほどもないけれど、おれはリンを守りたい。
 その為に強くなる。
 リンの胸の中でリンに揺さぶられながら、おれは強く祈り続ける。


 旅行は十一月の学院の創立記念の休日を使って、前日の夕方、学校が終わってから出発した。
 待ち合わせの駅でリンは革ジャンでかっこよく決めていた。
 リンはおれを見ると呆れたように呟いた。
「なんで一泊なのにその荷物なの?」
 おれは大き目のリュックを背中に抱えていた。
「だって…着替えと勉強道具にスケッチブック…と、お菓子みたいな…」
「お菓子まで?…はは」
 弾けたように笑うリンを見て、おれも一緒に笑った。


箱根旅行デス


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リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


ひとコマまんがは生きがい…(;´▽`A``
こういうリンもちゅき
意外とリンはどじっこ。そしてそれに萌えるミナ…要はバカップル

● COMMENT ●

えええ? ミナってこんな…

あははは (≧∀≦*)はは
スミマセン、まとめ読みなのに爆笑!
ミナサイドって、天然…。
ほんわか可愛らしい。

高校生らしいし。
最後のサイさんのイラストがまた笑いをさそうのです~。

忙しいのにコメあんがとね~
引越し落ち着いた?
高層マンションかあ~景色がいいと気分いいもんね~
がんばってくらはい。

この話はどんどん暗くなってくるので、せめてひとコマ漫画で明るくしとかなあかんな~と、思って描いてます。
どう考えてもこの話は暗くなるしかないんですよ。

弟の応援団姿を見るために帰国する男( ̄∀ ̄)
「親じゃない」
じゃなんなんだりんーーー!
でも答えはいまあんまり知りたくない。
ああ、みなに自己投影しそうで怖いわ。

弟の羽織袴姿を見るためだけに大枚はたいて帰ってきて…悪いんかっ!ヽ(`Д´)ノプンプン…by慧一

リンは今複雑に揺れているところだからねえ~
イラストは慧とリンがやってるとこばっか描いてるんだよ、実は…
これから温泉でしっぽりと…なのにさあ(;´∀`)
自己投影…これからもっとするかもよ~じめじめしてるからね、ミナは。
でもねえ~ミナの頑張りを応援してやって。凄い頑張るからあの子。


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