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2019-09

R-a-guardian-sprite 2 その2 - 2010.02.09 Tue

「R-a guardian sprite」は 「悩まない男」の7月さんとのコラボです。

ルカなる小説2


喉の渇きと空腹をおぼえ猫は覚醒する。
ナルヴィに使いだとたのまれたはずの行先にみずからがたどりついてもおらず預りものはポシェットにおさまったきり、気づけばいつものやわらかい寝台にくるんとまるまって朝を迎えたのだった。
人型たるルカの記憶をいっさいおのれのうちに留めないルカには、一晩まるごと精神を鑿で削りとられたと思しい。
ぱたりと飛び起き、すぐ横に主人であるナルヴィの死んだように寝入っている小柄なすがたを血の気の引く思いでみとめた。


惑乱のなかたどりついた結論が、たのまれた大事な使いを果たしもせず、放擲したままひとり自分は帰宅してしまったらしいという事実だった。
あれほどいいふくめられていたのに。
渡されていた預りものは時代のついた一冊の厚い本と書簡だった。
かけがえのない品なのだ。
たのむね、とルカの目をのぞきこんだナルヴィの双眸がいつにもまして深い翠色をたたえてきらめいていたから、約束をたがえまいと、ルカはおおきく首肯した。
いってくる、ちゃんと渡してくる、待っててね、ナルヴィ、ちゃんと渡してくるから待っててね。
それがかくも反古になった。
自分のせいで。あれほどいいふくめられていたのに。
大事な約束をたがえてしまったのだ。
うちのめされたルカはよろよろと寝台から抜け出し、扉をすりぬけ蹌踉と我が家をあとにした。


じきそのすがたの見えなくなったことに気づいたナルヴィがこれを追う。
毛という毛をのこらず逆立ててうずくまるちいさな猫を、小高い丘の槐の根元で見つけ、ルカ、としずかに声をかけた。
いつもならぴんと立った耳もいまは伏せたなり、おもむろに尻尾を振り振りいらえも返さない。
いまひとたび「ルカ」と呼びかけ、おそろしく獣じみて映るぶっそうな瞳をのぞきこむ。
ごめんなさい。とうとうルカがぽつり低声でつぶやいた。
「なにが?」
「約束守れなかった。ナルヴィにたのむねっていわれたのに」
吐息をつき、そんなことはかまわないとナルヴィは首をふった。
ルカは承知しない。いつ家にもどったのかまったくおぼえてないんだとつらそうにいいつのった。


「ちゃんと届けるつもりだったんだ。でも気がついたらもうここにもどってた。どうして覚えてないのかぜんぜんわからないんだ」
「もういいよ」
まるい頭のうえにのせられたナルヴィのやさしい手を拒み、いっそう毛を逆立て身をすくめた。
「よくない。ナルヴィのためだったらぼくはなんだってするんだから。しなくちゃならないんだから。ナルヴィのためにしたいことがぼくにはあるんだもの。なのにできなかった、嘘をついた」
涙にかすれてうまくことばがつづかない。「ナルヴィのために……ぼくが……」
いいよといって地べたにはいつくばり香箱をつくっていた守護番人を強引に抱きあげた。
くすんくすんと泣きだしたルカを両のかいなに抱きしめ、「ごめん」とひとこと引き裂かれる心持で吐き出した。


ほかでもないナルヴィ自身がルカを遠ざけようとして、使いにいってほしいなどとありもしない用事をでっちあげたのだ。
なのにその約束をたがえまいとこの守護番人は必死になり、あげく身におぼえのない理由がためにそれを破ってしまったとこうも傷つく。
畜生とナルヴィはうめいた、ついでだしぬけにいきりたち、
「聞こえてるんだろう。あんた、ちゃんと聞こえてるんだろう。これ以上ルカを傷つけるな。もうかってな真似はやめろ。聞こえてるんだろう、ルカ!」
名指しされたと思ったルカがきょとんと濡れた双眸をあげる。
なんでもないよと守護番人を抱きしめるナルヴィの腕に、いっそうやさしい力がこめられた。

(「R-a-guardian-sprite 2 その3/完結」につづく)
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泣くルカ

文章…7月
イラスト…サイアート

● COMMENT ●

この記事の冒頭のイラストはほんとにすごい!
リアルにダラダラの解剖学的18禁絵なんかまったくあいてになりません。
こういった絵が描けるサイアートさんの精神的な部分にすごく惹かれる。

ありがとう~
でもこれは7月さんがラフの段階で水の中にいるみたいって言ってくれたじゃん。
それがきっかけでこんな感じにしたのよ。あれを言ってもらってなきゃ水のイメージは自分はなかったかもしれん。初めは暗闇の世界へルカがナルヴィを引き込むってイメージだったからねえ~
ルカがナルヴィをどうしたいのか、どこへ連れて行きたいのか…そういう渦巻くもの…はこれから大事になってくると思うんだよね~この話。


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