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2019-11

宿禰凛一編 「Swingby」 20 - 2010.03.03 Wed

20、
 慧一への想いは兄を慕う心、そう決めた俺は、少しずつ強固にするため、週2,3回はやり取りしていたメールを週一回に減らしたり、寂しくなったら即掛けていた電話も極力控えるようにした。
 そして、すべての恋慕をミナへ向けるようにした。
 ミナは箱根から帰った途端、あれほど薦めても頑なに断っていた美術部へ入部し、毎日通い続けている。
 聞くと箱根の風景を油彩で描いていると言う。
 「出来上がったらリンも是非見て欲しい」と、誇らしげに言うものだから、俺も楽しみにしていた。

 12月も半ば、慧一から久しぶりに電話が掛かってきた。少し緊張しながら携帯を耳に当てる。
「凛一、元気か?」
「うん…元気だよ」
「そう、か…」
「なに?」
「…実は…俺が助手をさせてもらっているブライアン教授は知っているよね」
「うん、知ってるよ」
「彼の研究に少し時間がかかりそうなんだ。クリスマスには間に合いそうにない…ゴメン、凛。帰れるのが年が明けるかもしれないけど、そしたらいつもより少し休日を貰えそうだから…」
「わかった。父さん達も帰ってくるし、俺は大丈夫だから、心配しなくていいよ」
「うん、クリスマスにはカードを贈るよ」
「楽しみにしてる」
「凛…」
「なに?」
「…迎えはいらないから、ね」
「…うん」
「じゃあ」

 電話の向こうの慧一の顔を思い浮かべないように努力した。
 声だけで慧一の匂いを感じていた。俺を抱いてくれる腕の強さを身体が覚えてしまっている。
 慧が恋しい。
 望んでは駄目だってわかっているのに。
 …大丈夫だ。5年前とは違う。
 仲違いするわけではない。
 慧一はずっと俺の兄貴でいてくれるんだから。

 翌日、ミナにクリスマスの予定を聞いた。
「寮祭にはリンも来てくれるんだろう?」
「勿論。それが終わったら俺ん宅へ来ないか?今年は兄貴も居ないし、ゆっくりふたりで過ごせるよ」
「お兄さん、帰ってこないの?」
「うん、仕事で帰国するのは正月になりそうなんだ」
「そう、じゃあ、俺も実家に帰るのをちょっと伸ばそう。リンとふたりでクリスマスなんて、すごくロマンチックだね」
「キャンドルの灯りだけで床の上でセックスしようぜ。床暖房だからあったかいし後の掃除も楽だし」
「な、んでそんなに具体的に言うんだよっ!リンのどスケベ」
「だって、ミナをめちゃくちゃ愛したいんだもん」
「う…」
 口をへの字にして顔を赤らめるミナを抱いて、聡明な額にキスをする。
「プレゼント忘れるなよ」
「…わかってる…けど…」
「どした?」
 いつもなら恥ずかしがりながらも甘えて身体を摺り寄せるミナが、よそよそしく体を躱した。
 何だか元気のないミナに原因を聞いた。
 熱心に描いていた箱根の風景の油絵が県の芸術展に入選したのは知っていた。
 喜んでいるのかと思えば、気が滅入っていると言う。
「リンを描きたかったのに…人目が気になって描けなかった自分が情けない」と、言う。
 そうやって何の非もないのに自分を責めているミナが、とても愛おしくなった。
 こいつの魂はどこまでも自分に真っ正直で誤魔化し方を知らない。
 俺の方がよっぽど…

 都合のいい事をさも偉そうに並び立て、俺はミナを思いどうりに動かしている。
 ミナの優しさや心根の美しさを利用して、俺の寂しさを紛らわす為に、俺は彼を利用している。
 …違う、そうじゃない。俺はミナを愛している。
 他の何にも変えようもないほどに、彼を愛し、守りたいと思っている。
 二人の歩く未来が同じ道であればいいと願っている。

「リン、好きだよ。おれ達ずっと一緒にいられるよね」
「勿論だよ、ミナ」
 ミナの疑うことを知らぬ澄み切った瞳に映る俺は、不実な顔をしてはいないだろうか…。


 24日、クリスマスイブ。
 ヨハネ寮での寮祭が終わり、ミナと一緒にマンションへ帰った。
 ミナからのクリスマスプレゼントは数枚のカテドラルの印画紙と、ミナが描いた俺の絵だった。
「去年、リンから貰った色鉛筆で、リンの顔を描いてみたかったんだ。あんまり似てなくて…自信はないけれど…貰ってくれる?」
 照れくさそうに上目遣いで見つめる目が不安げに揺れている。
「…なんか自分の絵って照れるし、俺ってこんなイイ男じゃないけど…ありがと。美形に描いてくれたんだな」
「いや、本人の方が数倍綺麗なのは判っているんだが…おれが巧く描けないだけなんだ…ゴメン」
「…」
 意味なんて深く考えずにさらっと恐ろしい事を言う奴。こっちが恥ずかしくなる。
 あわててこちらが矛先を変える。
「写真の方も…高かったろ?印画紙じゃん」
「うん、書店を何件も回ってみたよ。でもリンの好きな写真とおれの好みは似ているから迷わなかった。気に入った?」
「勿論だよ、ありがとう。俺の方は…コレ」
 俺は用意していたカバンをミナの前に出した。
「野外用のイーゼル。屋外でスケッチするのに持ち運びができる携帯用のかっこいい奴を画材屋で見つけたから、ミナにプレゼントしたかった。これなら、でかいリュックは要らないだろう?」
「…ありがとう、リン。でもこれで当分絵を描くことから逃れられなくなってしまうよ。来年は受験生なのに」
「勉強の合間にやればいいさ。ストレス解消は大事だろ?」
「別に…リンがいれば…ストレスなんてないもん」
「あ、今誘ったろ?すげえやりたい顔した」
「し、してない!」
 頬を膨らますミナを抱き寄せ、愛していると囁く。

 こわばった身体が柔らかく俺の身体に沿う頃、俺たちは聖夜の愛を誓った。




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リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ

 
rinniti
↑ミナの描いた絵。


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