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2019-09

宿禰慧一編 「オレミユス」 17 - 2010.03.26 Fri

17、
 今まで生きてきた俺の人生において、これほどの歓喜を味わったことはなかった。
 考えもしなった。
 俺の命を賭してもいいと思える最愛の弟、凛一が俺を「愛している」と、声高らかに叫ぶのだ。
 何ひとつ混じりけもない純粋な愛を、彼は俺に誓うのだ。
 これ以上の喜びがあるだろうか…
 これまでの孤独な欲求、陰鬱としたまま浄化できる事のない独りよがりな慈愛でさえ俺には一欠けらの慰めにもならなかった。ただ、凛一の笑みが輝きが俺の生きる糧となっていた。
 今、凛は俺に真(まこと)の愛をくれた。
 これから先、凛が何を選ぼうとも、俺はもう…

 凛一の口唇がゆっくりと離れた。
 一旦おさまった情欲が再び燃え上がるのはわかっていた。
「慧…俺と寝てくれ。愛してくれるのなら、俺を抱いてくれよ」
 瞳を潤ませた凛一が、なにか大事なものを強請るように、すがるように呟く。
「凛…」
「ずっと愛していた。わからなかったんだ。いくら誘っても慧は俺にそういうそぶりも見せてはくれなかった。慧は昔から俺を欲しがっていたんだよね。だったら…」
 俺の背中に回された凛の両手の指が食い込むほどに力を込めているのが、服の上からでもわかった。
「凛」
「頼むから寝てくれ。慧が欲しいんだよ」
 凛が本気で俺を求めている…これほどの喜びを感じながら俺にはどうしても、その要求を行使することが出来ない。
「凛、聞いてくれ。俺はおまえを愛しているし、欲しいと思っているよ。でもセックスはしたくないんだ」
「なぜ?」
「…」
 何故?…いつもそこだ。なぜ俺は、凛一を抱けないんだ。これほどまでに執着し、その肉体を渇望しているはずなのに、何故手が出せない。
 それは…それは凛一にとって俺が…

「そう…どうしても慧が俺を抱きたくないって言うのなら…もういいよ」
 黙ったままの俺を見て答えを見出せないと思ったのか、凛一は俺の身体を押しやり、離れた。そのまま踵を回してリビングから出ようとする。
 俺は凛の腕を掴み、問いただす。
「凛、どこに行く気だ」
「慧が抱いてくれないのなら、他の奴に抱いてもらう」
「バカな…」
 くだらん事を言い出し始めた凛を俺は必死で止めにかかる。第一パジャマ姿で外に出る気か?病み上がりなのに。そう案じてもこいつは人の話なんか聞きやしない。

「凛、まだマトモな身体じゃないんだ。外出なんて許さない」
「勝手にするさ。誰でもいい。相手なんか関係ない。街に出て立ってりゃ、俺とセックスしたいっていう奴には事欠かないんだから。そしたら俺は相手を慧だと思って…慧とセックスしてると思ってやるだけだ。そうすりゃ、慧も俺を抱かなかったことを後悔するだろう」
「いいかげんにしろ!」
「どっちがだよっ!慧は、俺を愛してるって言ってるクセに…俺になにもくれない。こんなに欲しいって言ってるのに…どうして…」
「凛…」
 壁に凭れて嗚咽する凛一を見たとき、どうしようもないほどに俺はこれを俺のものにしたいという独占力、嗜虐的な欲望に溺れた。
 もとより…こいつが他の誰かに抱かれている様を浮かべた時点で、嫉妬と憎悪の感覚に俺自身が支配されつつあった。
 今ならこいつを抱くくらい簡単にやってのける。だが、他の奴に抱かれるというこいつを簡単に許す気にはなれなかった。

 俺は片腕と身体全体で凛一の両肩を壁に押さえ、両足を動かないように固定させた。
 残った右手で凛一の顎を引き、短いキスをする。凛は不可解な顔をして、俺を見上げた。
 構わずに、そのまま右手はシルク地のパジャマの上を這わせ、ズボンの中に滑り込ませた。
 凛一自身のすでにたかぶっているモノをやや乱暴にまさぐった。
「いやだ、慧…」
 見開いた目で俺を責めながら、凛は身体を捩って逃げようとする。
 無理だ。力も上背も俺のほうが勝っている。
 身体の節々を使って凛の肩や足の付け根を押さえ込むと、凛は観念したのか、壁に凭れたまま嗚咽を繰り返す。
 しばらくしゃくりあげていた声が呼吸が荒くなると共に次第に喘ぎに変わる。
 その凛の逐一様を俺は恍惚として見惚れていた。
 凛を文字通り俺の手でイカしてやるという行為が、俺を快楽の境地へいざなった。
 動きを緩めず、一層激しく擦りあげると、背中をしならせた凛は俺の名前を小さく呼び、そして身体を震わせ達した。

 解放された凛の弛んだ身体が俺に凭れた。俺は凛を抱きかかえるようにしてソファに運び、横に寝かしつけた。テーブルの上からティッシュを取り、凛の放ったものを拭き取った。
 凛はそっぽを向いて黙ったまま、されるがままになっている。

「寒くないか?凛」
 自分の着ていたパーカーを脱ぎ、凛に着せてやろうと上半身を起こす。
 俺の首に腕を回し、顔を近づけたと思ったら、額をぶつけていた。
「よくもやってくれたな、慧」
「…」
 怒りながら顔をしかめるが、その風情がどこか愛らしく思えて、俺はまじまじとその顔を見つめた。
「こんな風に自尊心を傷つけられたのは初めてだ。ムカついてる」
「腹が立って仕方がないのはこっちの方だ、凛。誰とでもいいから寝るなんて俺の前で二度と言うんじゃない。そんなことをしたら、本当に許さないからな」
「…わからないよ、慧の気持ちが。それだけ俺に固執するのに、なぜ自分は抱かないんだよ。そんなに俺が他に奴と寝るのが嫌なら、慧が抱けばいいことじゃないか。秘密にしてりゃ、兄弟同士が寝たって誰もわからないし、傷つくこともない。何が慧を縛っているの?」
「…それを簡単に一言で言い表すことはできないよ、凛。でも本当に聞きたいのなら…とても長い話になるよ…それに、凛には聞かせられないような酷い想いも俺の中にはあるんだよ」
「それでも…俺は聞きたい。慧の想いを全部受け止めたい」
 
 凛一の瞳は俺に少しの誤魔化しも許さないと告げていた。
 俺は今まで自分の中に溜め込んでいた汚泥のような(勿論美しく結晶したものもある)自分の欲望、感情を向けられた本人に晒す時が来たと、観念した。
 凛一の告白で俺はもう十分に救われていた。ならば、俺も凛一に余す事なく告白するべきだろう。
 それを聞いた凛一が俺に対する価値を下げようとも、告白した愛を取り下げようとも、一度与えてもらった言葉は俺の中では消えることはない。
 
 クッションを枕にしてソファに仰向けになった俺は、自分の身体の上に凛の身体をぴったりと沿わせ、その背中をゆっくりさすった。
 空調も床暖房も寒いとは感じさせないほどの温度ではあったが、凛一の体調だけが心配だった。
 ベッドに寝ても良かったのだが、凛一はこのままがいいと言う。俺の背中に回した腕がきつく絡まり、解かせるもの気が引けた。
「寒くないね」と、確認した。凛は俺の肩に顔を埋め、うんと頷いた。

「凛…俺にとって凛はすべてだよ。光であり、唯一信じる者でもある。だから、俺は凛に告解する。そして凛は俺を裁く権利がある」
「裁く?」
「ああ、これまで俺がおまえをどんな風に愛し育て…肉欲を持って求めてきたのかを、おまえに洗い浚い告白するから、それを聞いた後…おまえが俺を裁いてくれ」
「どんな話でも聞くよ。だって今の俺があるのは、慧が俺を育ててくれたからなんだ。それがどんな想いであっても、俺は慧を責めたりしないよ。」

 信頼という重い枷は、欲望を抑える辛く苦しいものだと感じてばかりいた。だが、凛はそのすべてをすっぽりと俺に委ね、何をしてもいいと赦している。
 その感情も肉体も、この世を生きる俺にとって、唯一絶対の聖域であることも知らずに…





告解する時間デス


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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
宿禰凛一編 「Swingby」 22へ
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


ここら辺は凛一編と行ったり来たりしています。
同時進行で楽しまれることをお奨めします。

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