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2019-09

宿禰凛一編 「Swingby」 24 - 2010.04.06 Tue

24、
「寒くないかい?」
「うん…足が少し」
「冷たくなってる…こうした方がいいな」
 上に乗っかっている俺をソファの背に背中を凭れさせるように横抱きにして、慧一は足を絡ませる。
 慧の腕枕に頭を載せた俺は慧の背中に腕を回した。
「凛は昔からテレビを見ながらソファで寝てしまうから、良くこうして抱いていたね」
 慧の言葉に返事もせずに、ただしがみ付くように身体を寄せた。
 お互いの欲望は固くなっていて、それでも慧は俺を抱こうとはせずに、守り続けようとする。その想いに涙が出そうになるんだ。

「話が脱線してしまったかな…でもね、どんなささいな思い出でも凛に関わることなら難なく思い出されてしまう…大事な宝物みたいにその扉を開けたら鮮明に蘇るんだ…俺にとって凛は生きる糧と言うより…そうだな…生きる意味を持たせてくれる存在だよ。できるなら…ね、おまえに尊敬される兄として生きていたかった…でも無理なのもわかっていたよ」
「そんなこと…ないよ。兄貴としても人間としても慧を尊敬している」
 顔を上げて慧を見あげる俺の額に軽いキスをくれる。俺には兄としての慈しみを感じる行為にしか捉えられない…
 慧は寒くないようにと俺の腕や背中をゆっくりさすりながら、言葉を続けた。

「…俺の初体験は中一の春休みだった。年上の男だったけどね。おまえに対しての性欲を別なものに吐き出さないとどうしようもなかった…思春期だし、やれるなら誰だって良かった。
タチにしか興味が持てなかったのも自分が優位に立ちたかったからさ。子供ながら卑しくも勇ましいものだ。そのクセ自分の性欲さえコントロールできないんだからまさにオコサマ過ぎて話にならない。
それが怖くて俺はおまえから少しでも距離を取ろうと、大学になって独り暮らしを始めた」
「梓が反対してケンカしたよね。よく覚えている…ケンカなんて滅多にしないから俺は本気で怖かった」
「凛は泣いていたもんね。おまえの泣く姿を見て、後ろめたくて仕方なかったよ」
「だって…怖かったんだよ。慧も梓も本気で険悪だったじゃん…俺にとってふたりは絶対的な…者じゃん。だからどちらかがいなくなるのは考えられない事態だったし、ふたりがケンカするところなんて見たくなかった」
「おまえに泣かれて後ろ髪も引かれたりしたけれど、独り暮らしの快適さも知った。凛が恋しくても欲を吐き出す術はあるし、なにより俺は自分が恐ろしくてね…」
「何が?」
「おまえは育つにつれて魅惑的に綺麗になってしまうし…相変わらずすべてを投げ出して俺にしがみついてくるから、俺は耐えるのが辛くて…堪らなかった」
 慧の肉欲なんて子供の俺にはわかるわけもなかった。過度なスキンシップだって当たり前だと思い込んでいた。慧には…辛かったんだろうな…

「…俺は慧が大学になって別々に暮らすようになって…寂しくて…一度マンションにこっそり行ってみたんだ。そしたら慧は俺の知らない男の人と仲良さそうにマンションから出てきて、俺に気づかなくて…俺、ショックで寝込んだんだ」
「…あの時の事だね。梓に呼び出されて、凛の発熱はあんたの所為だからと怒られた。俺も自分を責めたけど…けれど、俺を慕ってくれる凛の想いも嬉しかった記憶がある。
俺は…色んな奴と付き合ったよ。おまえへの性欲を吐き出す為に他人の好意を悉く利用した。他人の気持ちをめちゃくちゃにしても、俺は自分の気が晴れるなら構いはしなかった…良心が咎めることもなかったね…俺は…おまえ以外の誰を傷つけようとも少しも悪いとは思わなかった。おまえの信頼、至純な愛情を保たれるなら…他の連中の思いなどどうでも良かったんだ…」
「藤宮…先生も?」
「紫乃か…そうだね。初めは遊びのつもりで付き合っていたよ。けれど、紫乃は純粋なんだ。とことん優しい男だ。俺を甘やかしてくれる。俺の凛への妄執を知っても紫乃は黙って見守っていた…俺は紫乃を何度も傷つけている。だけど今更彼の想いに報いる事はできない…俺はもう自分を取り繕うのをやめたのだからね」
「俺の為に?」
「結局は自分を庇っている気はするけどね…凛を好きなのに手を出さなかったのは自分が罰を受ける事を恐れてのことだろうだから」
「俺、慧がアメリカに行った時、物凄く慧を恨んだよ。それと同じくらい自分を責めた。なんで慧の望む人間になれないのだろう。慧が俺を捨てたのはどうしてなんだろう…って。
慧に嫌われた自分が情けなくて、でも寂しくて…誰でも良かった。俺を可愛がってくれるんなら。でもわかっていたんだ。慧ほど俺を愛してくれる人なんかいないって」
「…」
「…なんでこんなに好きあっていたのに、俺たち分かり合うことができなかったんだろう…梓は知っていたんだ…だって俺には慧の傍にいてあげなさいって、何度も繰り返し言ってたんだから」
「…それでも…その想いの半分は否定していたんだよ」
「…」
 そうなんだろうか…俺は梓はいつだって俺の味方だと思っていた。慧が家を出た後だって、梓の俺に対する態度は何ひとつ変わらなかった。当たり前に俺の勉強を見てくれたり、寂しくなると一緒に寝てくれたり…梓は慧と俺を近づけさせたくなかったんだろうか… 今となっては問いただす事もできないけど、俺は梓が慧と俺が愛し合うことになっても、怒ったりするだろうか…少しだけ寂しい顔をして「仕方がないわね。慧も凛も私みたいに強くないし…許してあげるわよ」…そんな風に言ってくれるんじゃないかな。

「梓は…俺の想いを尊重してくれると思う。もし、許してくれなかったら、天国に行った時、俺が釈明してやるから、慧は後ろめたい思いを持つ事ないよ」
「…そうだな。梓はおまえには甘いから、おまえが許しを請えば大丈夫かもな…」
「ねえ、慧…本当にしなくてもいいの?俺は慧に抱いてもらいたくてたまらないんだ」
「俺は…おまえが俺の凛である限り、おまえに手を出してはいけない…聖域であると感じているんだよ。
世の中って矛盾だらけのことばかりだろ?善人が必ず勝つわけでもないし、幸せになる権利なんか絶対にないっていう悪人が頂点に立ったりする。心の中だっていつも矛盾だらけだ。こうしたい、ああしたいと思いながら、常にそれを否定していたりね。
俺が凛を欲しいと思っていても、いつもその想いの裏側は凛を守らなきゃいけない。自分が凛を縛り付けてはいけないって叫んでいる。
それはどっちも本当の心なんだ。
…俺はもうこれ以上もないほど…自分でも信じられないほどに、おまえを愛してきた。おまえがまだ愛の意味さえ知らない時から、俺はお前を性的な対象にしてきたんだ。またあどけない何も知らないおまえを、俺は自分の性欲で満たしたいと思ってきた。それは罪だ」
「違う。思うだけなら罪じゃない。慧が俺に欲情したとしても、慧は俺を犯さなかった。だから罪を犯しているわけじゃないよ」
「もし、俺たちが世間によくある普通の家族のように、面倒見てくれる親達と一緒に暮らしていたとしても、俺はおまえに焦がれていただろうし、邪心を持っておまえを求めていたはずだ。
だが、血の繋がったおまえを愛したとしても、常に家族が俺たちの間にいたのなら、もっと単純におまえを欲しただろう。抱いていたかもしれない。だけど、俺と梓はおまえの親代わりで、母親役も父親役も兼ねて、おまえを育んできた。その想い…養育したという母性愛が、おまえを犯すことを引き止めている気がする。常にお前を求めてしまう俺の欲を縛る鎖であり、守らなくちゃならない歯止めだと感じているんだよ」
「…俺には…わからないよ。俺はいつだって慧を求めてきた。欲しいって思ってきた」
「それはセックスの対象という意味ではなかったはずだ。少なくとも、おまえが俺に対して抱かれたいと本気で感じていたのは最近の話だろう?」
「それはそうかもしれないけれど…でもずっと…」
「信用していた…俺が何もしないと。自分が望んだ時、初めて俺が手を出すと…思っていた。違うか?」
「…」
「それは正解だよ、凛。俺はおまえに絶対の服従を強いられているからね。おまえが求めれば、すべてを投げ捨てでも少しも惜しいとは思わない。命だってくれてやる。でも…今はセックスはできない」
「なぜ?」
「俺の中の半分がおまえに欲心しているとしても、もう半分の心が、おまえを守らなきゃと叫ぶからだよ」
「…じゃあ、俺は一生慧を得られないのか?」
「もうすでに…俺のすべては全部凛のものだよ。
おまえが生まれた時から、俺はおまえに取り憑かれるんだから。
おまえが大人になって…俺の保護を必要としなくなったなら、その時、対等な者同志本当に手を取り合いたいと願うのか…欲しいと望むべき相手なのか、考えて欲しいんだ。
俺も考えるよ。凛一を幸せにできるように…
光を目指すおまえの道標になりたい…
そういう人間になる為に俺は成長したい」
 
 慧一の言葉が胸の奥に折り重なっていく。
 慧一の俺への愛情の襞には数え切れない記憶の感情が刻み込まれている。
 その感情を俺はひとつひとつ解いて…螺旋の階段を昇って行きたい。

 いつか届く、登りつめた扉へ行き着く瞬間まで。
 扉の先の慧一の姿を目に映すまで。

「死ぬまで愛してるって誓ってくれるのか?」
「凛、言っただろ?おまえが生まれる前から、俺の愛情は凛にしか流れないように決まっているんだよ。一本の川の流れが海へ注ぐようにね」



        繋がる


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感情の流れを書く難しさに打ちのめされた…

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