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2019-09

宿禰慧一編 「オレミユス」 18 - 2010.04.09 Fri

18、
 凛一の身体の重みとぬくもりをすべて受け止めた俺の身体は、俺の意思とは関係なく昂ぶりを感じたままだった。
 それは凛一も同じで、こんなに発情しているのに一線を越えることができないという意義など、感情に生きるヒトには有るまじき辛抱強さだと馬鹿げた思いにも晒される。
 別に貞節が清いとは一抹も考えていないものを、凛への欲望に対して自分の抑圧というものの定義に縛られている自分が悲しくも愛しく思えたりする。

 告白を続ける俺の身体を抱きしめた凛一は黙って顔を埋めたまま、話を聞いていた。
 時折顔を上げ無意識に頭を傾げる仕草がなんとも昔の凛の愛らしさを思い出させて愛おしくてたまらない。
 生まれてからずっと凛一だけを見つめ、性欲で満たしたいと願っていた事を白状すると、凛は思いもよらなかったと驚きながらも、否定する事も嫌悪感を抱く事もせず、抱いて欲しかったと言う。
 それは今の凛の感情であり、もしその時にそうしていたならば、今のふたりの関係は成り立たないと、俺はわかっている。

 凛一はまだ17であり、孤独に慣れてはいても信頼される者らが彼を見守らなきゃならない頼りない子供なのだ。俺が嶌谷さんに話したように、凛一を欲しいと思っても俺が今凛を抱いてしまったら、凛の保護者ではなく、凛を束縛する愛人になってしまう。
 そうなれば、凛の信頼する肉親はいなくなり、益々凛一は孤独になるのではないだろうか…凛の本当の幸福を守る為には、俺は凛の帰る家であり、守る者に徹していかなければならない気がする。
 これだけ無邪気にすべてを欲しがる凛一を、俺は説き聞かせられるだろうか。
 これだけ俺を強請る愛し子に…
 すべてを捧げても惜しくないと願う弟に…

 説得し続け、セックスをしたくない理由を説明しても駄々っ子のように凛一は俺にしがみ付く。
 決して意思は変えないと誓っていても、黒まなこが溢れんばかりの涙で濡れていくのを見ると、抑えが効かなくなっていく。

 凛一…おまえを抱きたくて入れたくて…
 おまえのすべての肌を俺の口唇で封印したくて堪らなくて…
 この身体はおまえを欲しがって、こんなにも奮えているんだ…

「…じゃあ、一生俺は慧を得られないのか?」
 頬を伝う凛の涙が、決して絶望の涙にならない為にも…
 俺は誓う。
「もうすでに…俺のすべては全部凛のものだよ。
おまえが生まれた時から、俺はおまえに取り憑かれるんだから。
おまえが大人になって…俺の保護を必要としなくなったなら、その時、対等な者同志本当に手を取り合いたいと願うのか…欲しいと望むべき相手なのか、考えて欲しいんだ。
俺も考えるよ。凛一を幸せにできるように…
光を目指すおまえの道標になりたい…
そういう人間になる為に俺は成長したい」
 
 心からの願いだった。
 心底愛するから、命を賭けて凛を守りたいから、俺はこれからも凛のためだけに生き続けるだろう。

「死ぬまで愛してるって誓ってくれるのか?」
「凛、言っただろ?おまえが生まれる前から、俺の愛情は凛にしか流れないように決まっているんだよ。一本の川の流れが海に注ぐようにね」

 俺の誓いを聞いた凛はクスンと鼻を啜って、俺の胸に突っ伏した。
 髪を撫でながら慰めようとすると、凛一はついと顔を上げ、俺を凄むように見つめた。
 そして、小さく呟いた言葉は俺の宝物になる。

「慧が言うとおりの慧からの一方的な宿命ならそれでもいいよ。でも俺は目の前に垂れた縄を必ず引き寄せる。手繰り寄せていつか全部俺のものにするから、待っててくれ」

 心臓を鷲掴みにされるほどに俺は歓喜した。
「いつまでも待つよ」と、短く応える声が震えていた。

 片道だけの愛では無いと知りえた俺には、これ以上の救いの言葉はなかった。
 欲しがるものは手に入れるまで決して諦めたりしない、凛一の高慢さも自分への尊厳を持ち続ける資質も、これ以上にないほどに尊いものに感じている。
 凛…おまえが俺に手を差し出すその時、俺はおまえに傅くだろう。
 聖なる御使いの衣を纏い、貧しき心に零れるほどの愛欲を湛え、すべてを注ぎ込む…


 やがて幼子のように寝息を立て、俺の胸で寝てしまった凛一を、自室まで抱えて運びベッドに寝かせた。
 あれだけ欲情していた高ぶりなど、まるで無かったような顔をして無心に睡眠を貪っている姿を眺めると、なんとも困惑してしまう。
 一体あれは夢だったのか、凛一の悪ふざけだったのか…明日になれば先程の誓い等、キレイさっぱり記憶から忘れ去られてしまうのではないか…

 もしそうなったとしても…俺は忘れない。
 凛の告白、俺を欲しいと心から望んでくれた事、未来への誓い…そして何より…
 俺は光を得た。
 虚ろに瞬く幻想ではなく、この手に凛の愛を得たのだから。






誓い


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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ

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