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2019-09

宿禰凛一編 「Swingby」 26 - 2010.04.15 Thu

26、
「でも、なんか…」
 ベッドに寝たままのミナが、俺の胸に頭を擡げて俺を見る。
「なに?」
 何回やったか覚えてないけど、相当に時間は経っていた。疲れたら少し寝て、また元気が出たらミナを抱いて…まさに発情期の獣みたいに淫らになってしまった。
 少々混乱していた所為でもある。昨日の今日だから仕方あるまいと自分を正当化してみたが、上手くはいかない。
「病み上がりで見るからにやつれてるのわかるのに…リン、激しかった…」
 何もしらないミナは、恥じらいを見せて俯く。相変わらず純情で可憐だ。…俺と違って。
「ミナだってすげえ喜んでたじゃん」
「よ、喜んでないっ!リンがヤラしいからじゃないか」
「うん、ミナが可愛いからめちゃくちゃ可愛がりたかったの」
「…」
 手を取って、わざと音を鳴らして甲にキスをする。上目でミナの様子を伺えば、不信な顔をしている。こっちは心のどっかにやましさがあるから、笑おうにもどうにも引きつった具合になってしまう。
「なんかあったの?」

 …なにかあったかって?

 ああ、大有りだ!思ってもみない状況でありえないことが起きた。まさに聞いて驚くなよ。俺の大好きな慧一が実はずっと昔から俺を愛していてセックスしたくてたまらなかったと告白した。仰天するも何も。だって慧一は親代わりみたいなもんで、慧にとって俺はそういう性的な対象になるわけがないって思っていたからな。驚いたには驚いたが、こっちはこっちでもう随分前から慧一とはやりたかったからさ。飛んで火に入るじゃないが、大喜びで慧の胸に飛び込んでいったさ。そしたら慧の奴は俺とはセックスしたくないって言いやがる。なんじゃあそりゃ?抱きたくて抱きたくてたまらないって言ったじゃん。どういう事だ?ってなるだろ?こっちは抱いてくれって頼んでいるのにもかかわらずにだぜ?んで、俺は腹が立って他の奴とやるって反抗したら、あいつ、俺のモノを握って無理矢理イカせたんだぜ。信じられねえだろ?今でも慧が握った感触でソコが疼いてる気がする。そんなヤバイ状況になっても慧一は俺とやろうとしない。慧一にはややこしい自分の摂理があってさ、自分の保護下にある間は、抱きたくても俺と絶対セックスしないって断言しやがって。ベッドに裸で寝て待ってんのに据え膳食ってくれねえの。俺、可哀相すぎねえ?その癖、自分の全部の愛をやるからだとか、一生愛し続けるから…とか誓うんだぜ。なんつーかさあ、もう、俺、幸せなのか不幸なのかわかんねええっ!ってなるだろ?なあ、ミナ、どう思うよ。つかさ、別におまえのことをないがしろにする気は誓ってない。ミナはミナですげえ好きなんだよ。だけど、慧一と同じ次元で考えられないというかねえ~。違う。おまえを下に見ているつもりはないって。愛情が少ないとかそういう次元で比べてるんじゃないよ。そうじゃなくてさあ。慧一とは複雑に絡み合っていて、ミナへの愛情って奴はすごく真っ直ぐで純粋なわけだよ。だから、おまえはおまえですっげえ好きなの。なあ、わかるだろ?ミナ。

「…」
「なに?」
「なんでもない」
 なんだろうな、ミナの少し茶色い澄んだふたつのまなこを見ていると、自分の負の部分を容赦なく見透かされている気がしてならない。それでいて、俺はこの両目の中に自分を閉じ込めさせておきたくて仕方がないときてる。
どうしたらこの男を俺のものにしておけるのだろう。
 俺の計算高さを知ったら幻滅するかもしれないが、姑息と言われても切り離したくない絆だな。

 肩肘をついて横で寝ているミナの頬を撫でると、照れながらも嬉しそうな顔で甘える。
「俺、風邪引いて熱出てた時、うわ言でミナの名前を呼んだんだぜ」
「え?」
「ミナ、助けて…って」
「本当?」
「兄貴が言ってたからホントだろうね」
「…慧一さん?ご両親は一緒じゃなかったの?」
「親が帰った後に倒れたの。だから両親は知らない」
「じゃあ、慧一さんがリンの看病をしてたわけか…」
「…うん」
「慧一さんとずっと一緒でリン良かったんじゃない。一番安心していられるんだろ?」
「…なんだよ。嫌にそこに拘るんだな。兄貴にやきもち焼いてるの?」
「…そう…かもしれない…でもリンは病気だったんだから仕方ないよ…」
「仕方ないって…どういう意味?」
「…だから、リンの辛い時に傍におれが居られなかったのが悔しいって話だよ」
 サイドテーブルに置いてあった眼鏡を手に取り、少し辛そうな顔でベッドからゆっくり起き上がったミナが浴室へ向かう。

 八幡宮に着いた頃には、太陽は沈み辺りは暗闇に溶けかかっていた。
 初詣の参拝客も一段落したのか、辺りはまばらだった。
 長い階段を昇りながらミナの様子を伺う。
 ホテルを出てファミレスで食事をしていてもミナは機嫌が悪かった。
 その原因を問う必要はない。
 ミナが拘っているのは、俺と慧一の関係だろう。
 こういうことには極めて勘の鋭いミナのことだ。中身は知らなくてもなにかあったのは勘づいているってわけか…

 バカだね。疑う必要なんかひとつもねえのに…何も無かったんだよ、俺達は。
 慧は俺を抱かなかった。それだけが事実で…
 俺はそれが悲しかったんだ…

 参拝した後、少々距離があるけれど歩いて帰ることにした。
 ミナを寮へ送り届けて、俺は慧一の待つ自宅へ帰る。
 だけど、ミナとの距離は縮めておかなきゃならない。

「ミナは何を祈ったの?」
 坂道のトンネルをくぐりながら、敢えて殊更優しく尋ねてみた。
「うん…受験のことと…リンのこと…かな」
「そう。俺も同じだよ」
「…」
「俺、ミナと同じT大の工学部を受けようと思うんだけど…」
「え?ホント?」
 ミナの顔が暗い夜道でもわかるぐらいにぱっと輝いた。
「合格するかどうかは別にして、ミナと目標が同じなら、やる気も出るだろう?」
「本気で決心したの?リン…うん。工学部ならキャンパスも一緒だし…嬉しいよ、リン」
「喜ぶのは早すぎるよ、ミナ…でもまあ、励ましあって頑張ればなんとかなるかもしれない…そう思わねえ?」
「おれ、頑張るよ。がんばってリンに教えるから、絶対受かろうな」
「優秀な家庭教師が恋人で俺は幸せです」
「リン…ごめん」
「え?」
「せっかく今年初めて一緒にいられたのに、おれ、なんか…やっぱり拘っていた。嫉妬してた、リンと慧一さんに」
「…」
「リンを看病できなかったのはリンの所為でも慧一さんの所為でもないのに勝手に僻んでいるんだ。うわ言でおれの名前を呼んでくれてすごく嬉しい。嬉しくてたまらないのに…素直じゃなかった…ごめん」
「いや…俺の方こそ…」
 何をどう取り繕っても結局は自己嫌悪になりそうで、それ以上は何も言えない。

 俯いたミナの冷たくなった指に触れてみた。
 ミナは触れた指を握り返し、顔を上げ俺に微笑んでくれた。
 握りこんだ左手を自分の手と一緒にコートのポケットに忍び込ませると、ミナは「あったかいね」と、嬉しそうに呟く。
 その言葉が、嬉しいけれど切なくなるのは、この道が長い登り坂だからなのかな…





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