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2019-09

水川青弥編 「フラクタル」 1 - 2010.05.24 Mon

雨フリミナちゃん


フラクタル(全体と一部分は実は自己相似である)

1、
 新学期が始まった。
 最終学年、高校最後の年、そして受験の年。
 おれとリンは同じT大を志望している。
 リンは建築学科を受けると決めているのに、理系を選ばないでそのまま文系のクラスを志望した為、おれと同じクラスになる機会はゼロだ。そのわけを聞くと、今まで作った友人関係を崩したくないという事らしい。
 理系でも沢山友人は作れるのにと思うけれど、おれがとやかく口を挿むことでもない。
 リンのクラスの担任は2年に引き続き、藤宮先生だ。
 先生はリンの兄である慧一さんに、留守の間は自分の代わりにリンを見守ってやって欲しいと頼まれているそうで、リンもその事を承知している。
 慧一さんは大手のゼネコンに就職したが、日本にはおらず、拠点はニューヨークらしい。
 春休みにリンは慧一さんに会いに行っていた。帰ってきてもリンの様子に別段変わったところはなかった気がする。気がするだけで本当のことなんかおれがわかるわけがない。
 あの兄弟ならなにがあってもおかしくない。怪しめばそれが真実になる。なにがあってもなくてもリンが口を割らなきゃおれはなにも知らなくて済む。…そう考えることにしている。
 おれにしてみれば、これだって精一杯ポジティブな姿勢だと思うのだが…
 こんなに気を揉むのも、原因はリンにある。
 あいつの貞操観念は緩い。
 だとしても、恋人への守操義務は感じているらしく、おれ以外とはしてないと胸の前でさらっと十字を切ったりするけれど…あんまり信用してない。
 リンは傾国の麗人的な気色があるから、彼が誘わなくても向こうがほってはおかないんだろうなあ。
 だからリンが変な道に行かないようにおれはリンの重石にならなくちゃいけない。

 しかし、考えたらバカらしい話で、リンの方が上背もあるし(ここのところ益々身長差がついてしまった)、腕っ節もあの細身からと信じられないほどあるし(実際ふたりで夜街をうろついてて何回か絡まれたことがあるが、口でかわせない時はリンはあっという間に武道で相手を投げ飛ばした)おれがリンの心配をするのは全くの筋違いなんだが、とにかくリンが心配でならなくなるんだ。
 それと同時に寄り添ってくるリンが愛おしくてたまらなく、どう考えても立場は逆なのにリンを守らなきゃならないという気になってしまう。
 だから思うんだ。
 たぶん慧一さんはおれ以上にリンを守り愛してきた。そしてそれは今もこれからもずっと変わらないのだろうと…

 おれはおれに対するリンの愛情を疑ってはいない。というより、リンはおれに対して誠実だ。
 いつだっておれを笑わせ、喜ばせ、快楽を与えてくれる。
 おれが貰った分と同じだけ返しているとは思えないが、リンはいつだって「ミナが一番だよ」と、言ってくれる。
 勿体無い気もするけど、心底嬉しいのも事実だ。

 おれの身の回りの話をするならば、同室の根本先輩は卒業し、第一志望だった関西のD大学へ進学した。残された保井先生は健気にもその後を追い、今は京都の私立高校の先生をしている。
 たまに根本先輩からメールがくるが、「保井がしつこくて困る」と言いながらもまんざらでもなさそうだ。
 リンは「ネコには飼い主が必要さ。だが鈴を付けたって遊びまわるのを止めさせることは無理だろうね。去勢しない限り」などと笑っている。
 保井先生にしてみれば、笑い事じゃないだろうと思うけど、リンが先輩みたいじゃなくて良かったと思うのは、誰にも言えない本音だ。

 三年になってヨハネ寮のふたり部屋のルームメイトは三上になった。
 三上は宿禰の親友だし、おれとリンを応援してくれるからおれには都合がいい。
 お互いに恋人の愚痴を言い合ったりしている。

 おれとリンが恋人同士であることは、大部分の学生達が知るところとなってしまっている。
 ひとりで廊下を歩いていて知らない生徒から指を指されることもよくある。
 影で噂されていることも問い詰めなくてもわかる。
 内容はだいたい…リンにはおれみたいな奴は相応しくないということらしい。
 リンは特に下級生には圧倒的に人気がある。
 入学式や卒業式のたびに、リンは部の代表として詩を朗読するわけだが、それがいつも好評を博しているんだ。その所為か、リンが部長をする「詩人の会」の部員は例年より大幅に増えている。
 クラブの中で「宿禰凛一愛好会」なるものが非公式に作られ、日毎リンを崇拝する詩を作っているとかいないとか…どうでもいい噂が後をたたない。
 リンは「そんなに人気があるなら夜道には気をつけなきゃならないな。マジでストーカーに合いそうじゃん」と、本気とも冗談ともつかないことを言って笑っている。
「だけどみんな俺の前ではおとなしいもんだぜ。一応、俺のミナに手を出したらただじゃ済まないからな、とは脅しといた」
「いや…それは…大丈夫だろう。ここは進学校だし、結構みんな真面目だからさ」と、言うと、リンは腹を抱えて笑い出した。
「一番真面目な奴はミナだけどな。ついでに言うとお前は知らないだろうが、ミナを狙っている奴は結構いるぜ。注意しろよ」
「…まさか」
 こんな平凡なおれに誰が興味を持つと言うんだろうか。ありがたくない冗談だ。

 おれの担任は生物の藤内先生だ。
 おれは化学と物理を選択しているので直接教えてもらうことは少ないが、たまに生物準備室へ行き、自慢のコーヒーを頂いている。
 おれがリンと付き合っていることは知っている様子だが、それについては一切触れてこない。おれにとっても都合のいいことだし、そういう話題をしなくていい空間が居心地良く、つい長いをしてしまう。
 リンには散々「藤内先生には気をつけろよ。おまえに気があるのがみえみえだ」と、言う。

 3年になっても時間があればおれ達は陽が落ちるまで温室で過ごす。

 温室の管理担当の藤内先生からは、表向きは温室の植物の世話役という名目を貰っている。先生はおれ達がここで何をしているのかも知っているのかもしれない。
 …想像通り、ロクな事はしていないけれど…
「そんな言い方失礼だよ。先生は生徒としてしかおれを見てないよ」
「俺はあの先生は苦手だ」
「どこが?」
「なんて言うか…敵意を感じるね。というか、嫉妬だな」
「え?」
「ミナをものにしちまったからさ。嫌われてるんだよ」
「…」
「俺はこう見えて案外敵が多いんだぜ?見てくれがいいとそれだけでやっかむ奴も出てくるしな」
「そういう態度が無駄に敵を作るんじゃないか。それにリンは外見だけじゃないし…中身も綺麗だもん」
「…それ甘えてるの?」
「違うよ」
「あんまりかわいい顔するなよ。特に、藤内の奴にはそんな顔見せるな。襲われるぞ」
 背中からぎゅっと抱きすくめられ、首筋にキス。一瞬息が止まる。
 温室の窓を開け放っているから、外から覗かれないようにおれ達は温室の隅でそっと抱き合う。
 植物の青臭さなのかおれ達の臭いなのかわからなくなるほどに、お互いを求めては絡みついて離さない。
「ミナ、愛してる…」
 吐息まじりに耳元で囁かれると、未来なんてどうでもよくなる。
 身体を回して今度はおれがリンを求める番だ。
「おれも…リンが…好きだよ…愛してる…」

 3年になってもおれ達は温室と言う閉じられた空間で甘い蜜を味わっている。

 まるでとり残された巣窟だ。せめて秘密の楽園と言えよ。この温室は砂漠の幻の都だ。選ばれた者しか見えないし、入る事もできない。千夜一だ。懐かしいね。最初の頃を思い出す。リンの作り話はどれも胸が躍ったよ。格別だった。姫がお望みならいつだって語り聞かせますよ。…ねえ、リン。なに?千夜たってしまったら、その先はどうなるの?知らないのか?ミナ。王様と姫は仲むつまじく幸せに暮らすのさ。話が尽きても?勿論。その先は自分達で話を作るんだよ。千夜一夜の一夜っていうのはその先を意味すると俺は思っているんだ。それは、おれに語らせてくれないか?リン。…ああ、どんな話でもミナが語ってくれるなら…俺は傍にいるよ。

 アラビアンナイトが作り話だという事ぐらい、おれは知っている。



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リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ



時間の経過がどんどん早くなる~
そしてニューヨークに行った凛にとんでもないことが…起きる?(;^ω^)

…期待せずに待て!




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