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2019-09

宿禰慧一編 「オレミユス」 20 - 2010.05.31 Mon

20、
 夕方、内定した会社から連絡を貰い、クライアントへのプレゼンテーションに参加しろと言う。
 二日後に行うからと急遽明日アメリカに帰ることになった。

 ひとりで適当に夕食を済ませ、明日からひとりになる凛一の食事を用意する。
 困った時の夕食のカレーとは俺たちの間ではよく使う合言葉だが、失敗がない分、重宝している。
 鍋一杯に作り置きをするが、ひとりで食べる凛一のことを思うと、胸が痛む。
 俺はいつだって凛一をひとりにしてしまう。
 置いていかれる辛さはわかっているのに、慰めてやることも出来ない…凛一を愛する資格なんてあるのかと、自分を呪いたくなる。
 しかも就職したら、日本で一緒に暮らすと約束しておきながら、それさえ違えてしまう自分が情けない。

 遅くなる事もなく帰宅した凛一の顔をバツの悪さにまともに見れず、カレーの鍋に集中しているふりをしていたら、凛一が身体を寄せてきた。
 その身体を受け止め、優しく背を撫でた。
「…どうしたんだ?凛」
「あっちに…帰るんだろ?」
「…」
 俺の肩に頭を載せたまま、そっぽを向く凛一がいじらしい。
 髪に顔を近づけると家とは違うシャンプーの香りがした。
 俺をこれだけ縛り付けておいて、自分は好き勝手に遊んでくるのか…憎らしいにも程がある。だが、これがなによりも愛おしい凛一なのだ。そして俺はこれを置いて行かなきゃならないんだ。
 この子に俺以外を求めるなと咎めることが出来るわけもない…

 この子は残酷だ。 
 俺の恋焦がれる想いを知り、それを受け入れながらも俺に罰を与えるかのように、他の男と寝ることが出来る。
 しかもそれは遊びではなく本物の恋だと打ち明ける。

 俺が抱かない事へのあてつけのつもりもあるのだろう。
 自身が情けないな。
 一番欲しがっているのは俺なのに、おまえを抱くことが怖いなんて…さ。

 しばらく会えないこともわかっているのに、その夜は早々にお互いの部屋へ引きこもった。
 愛し合っていても求め合っていても、タイミングと言うのはいつでも難しいものだ。
 昨日の今日なのに、まるで振り出しに戻ったかのように、背中を向き合っている。
 振り向いて抱き合うのは簡単なはずなのに…


 翌日、見送りについてきた凛一と出発まで会員限定のラウンジで過ごす。
 凛は人目も気にする事無く、俺の肩に凭れ、手を絡ませた。
 俺は気になってついいらぬ事を口走ってしまう。
「おまえ、恋人とも人前でこんな風に甘えてるのか?」
「え?ミナと?」
「…ああ」
「しないよ。ミナはシャイだし、人の目を気にするタイプだ。人目があると手を握るのさえ躊躇うからね~。だから街中でミナと居る時はできるだけ普通の友人のフリをする。俺はどうでもいいんだが、相手が嫌がることをしないのが恋人としてのモラルだろ?」
 モラルって言葉が一番似合わない奴が何を言う、と、俺は可笑しくなった。
「じゃあ…俺にはそのモラルって奴は当てはまらないのか?」と、言うと、凛は目をぱちくりと驚かせ,
「慧が人目を気にするタマか?人前でセックスするのも平気な性質(たち)だろ?」
「おまえにだけは言われたくないよ、凛」
 乾いた笑いで応えると、凛は顔を近づけ、
「俺は慧とだったらどこでセックスしても構わないけどね。誰が見てようとも平気だよ」と、言う。
 呆れて「育て方を間違えた」と、嘆くと、
「勿論慧一限定だ。だって生まれた時から俺はオムツからお世話になったんだからさあ、慧に何されようが俺は信頼を捧げて愛を誓うね」
「…口ばかり達者になりやがって…」

 それから凛一は志望大学を決めた事を俺に伝え、大学に入学した後、留学すると言う。
 俺は心臓の鼓動が少しずつ奮えを増していくのを止められなかった。
 留学するって…その意味とは…凛…
 夢から覚めるなと俺は目を閉じる。
 夢ではないと耳元で凛一の声が響く。

「慧…今まで慧は俺を追い求めてくれたね。だけど、今度は俺が追いかける番だ。忘れないでくれ…」
  凛の顔が近づき、俺の口唇が新たな奮えに歓喜する。

 このくちづけの重みと熱さは一体なんなんだ…
 積み重なった過去の欲望の重荷なのか、未来への果てのない熱望なのか…

…慧と共に生きていく…

 くちづけの正体など、俺にはわからない。
 だが、我が腕(かいな)に抱くこの愛する者を、俺は離すことなどできはしない。
 永遠に…




oremiyusu


19へ
宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ
「ペンテコステ」1へ


凛一という呪いが囚われたまま生きるのが慧一。
だがその呪いはかくも高揚するものか、かくも味わっても味わっても飽きることのないしたたりなのか…
「オレミユス」終わり、次は…「ペンテコステ」
意味は…まあ適当に選んだが、そのうちに意味を為すであろう。
物語とはそういうものだ。

● COMMENT ●

この慧一編「オレミユス」を読んで浮かぶ言葉...苦悩、懐古、執着、猜疑、歓喜etc...

慧一の葛藤が 凄まじい。
凛一を神の様に崇め讃え 平伏しながらも 愛し欲情する信徒・慧一の 危うさは いつか 彼自身を根本から 崩壊させる気がする。
凛一が 対等な大人となり その関係が変わる時が来ても 彼はずっと 苛まれるのでは ないかと思えます。
彼自身が 亡くなるまで...

続けて凛一編の「swingby」を読んで コメを 書こうと思ったのですが、今は どっぷり慧一編「オレミユス」に浸ってしまっているので 読むのを中止して ここで 。

これから 読み進めて どんな風に 二人が変わって行くのを 知りたくて楽しくて仕方がないです。
でも その反面 次々と編を 読破して もう読む物が無くなるのが 淋しい。
あぁ いっきに 読み進めたいのに 読みたくない...何度も 言ってますが、それだけ ほんと素敵な作品!!
限が無いですね(笑) それでは お休みなさい(_ _)zzz 。o 0byebye☆

けいったんさん>いつも心のこもったコメントをありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ

慧一に嵌る方は、なかなか他のキャラにスライドしにくいかな~とは、私も感じていました。
書き手も結構そういうところあります。
慧一編を書くと、ぐったりくる…wwというか、なかなか他のキャラになりにくい。
でも「オレミユス」の最後の方は、慧一と凛一の掛け合いで更新していたので、楽しかったですね。
とにかく慧一がどうこう言おうが思おうが、凛一はどんどん我が道を歩き、引きずり込んでいくタイプです。
慧一の苦悩を知っても、俺が幸せにしてやる!と、豪語する奴です。
だから、慧一も救われる。
凛一からすりゃ、慧一のマゾ的葛藤なんか、俺がいりゃ解決するだろう~と、簡単に思ってしまう奴なんで。
そういう強さや軽さをもった凛を、読者が気に入るかどうかは、難しいんですが、商業誌じゃないから、私の好き勝手にやらせてもらってます。
それに、この物語の中心はリンミナなんですね~
書き手のわたしも時々忘れてましたけど(;´▽`A``
だから慧一に惹かれる人が多くても、リンミナの恋物語にしなければならないって、強く思った時期でもあったんですよね~

慧一への想いが落ち着いたら、また読んでくださいね~
ミナ編はとてもまともですが、ミナが普通にかわいいです。
周りが変なやつばっかだから、とても良い子ですよ~
途中からは私がすべてを書いているので、それもミナへの思いに集中できて良かったです。

コメントありがとうございました~(⌒∇⌒)


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