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2019-09

君の見た夢 9 - 2008.11.14 Fri

4. 刹那の優しさ


この世界に来て一週間が過ぎた。
香月に頼んで街を案内してもらった。
レコード店で俺達のCDを探してみた。勿論あるはずもない。バンド自体が存在していないんだから。
不思議な感覚だった。俺達の曲が存在しないこの世界は、何の変化もないままに現実としてここにあるんだ…
途中、岬の家に寄らせてもらった。もちろん向こうの世界の岬の家とは場所も家も全く違う。
それでもTVゲームに夢中になってる岬を見ていると、やっぱり俺の幼馴染みの岬でしかなく、なんでこんな面倒臭い事になってしまったんだろうって、言いたくなくてもつい愚痴が出る。

香月の家よりも大分おいしい飯をご馳走してもらって、休んでいると部屋の片隅にアコギのギターケースを見つけた。
「岬、弾くの?」と尋ねたら「もう随分弾いてないし…良かったらやるよ。安かったから、音はたいして良くないと思うけど…」そんなん気にしない。とにかく弾ければいい。
俺は早速ギターを取り出して音を合わせた。ああ、何日ぶりだろう、ギターを手にするのは…
弾き慣れたフレーズが気持ちいい…
「ねぇ、なんか弾いてみてよ。そうだ、ほら、おまえのバンドの曲とかさ」
「えっ?」それっていいのかな?だってこの世界じゃ存在しちゃいけない曲なんだろ?
俺達の曲には違いないけれど、こいつらに聞かせていいのかどうか、俺にはわかんねぇよ。
隣に座る作った本人の顔見たら、ポカーンとしてる。いや、おまえが作ったんだよ、って言ってもおまえじゃねーよな…
「ゴメンね、弾けねーわ」笑って誤魔化して、さっき耳にした流行の曲を弾いてやった。

家に戻って鼻歌まじりに弾いていると、麗乃が気持ち良さげに聞いている。
「ねぇ、レイくんは弾いた事ないの?」
「中学校の文化祭の時、やったけど…それからはさっぱりだな」
「なんで…やらなかったの?」
「なんでって…受験忙しかったし…高校入ってからも、ほら、進学校だったからさ、勉強が大変だったじゃん」
「…」それは分かるけど、それでも香月は音楽だけはやめなかった。いや、音楽に生きていた。
「ユキはなんでバンド始めたの?」
「それは…」それはおまえが俺を無理矢理誘ったからだよ。俺はバンドなんてやる気ゼロだったのに、おまえが一緒にやろうってあんまりゆうから…
「音楽が…好きだからだよ」

「ギター上手いね」麗乃が感心したように言う。
「そう?」
「びっくりだよ。ギタリストだからあたりまえか」
「…」
おまえの方がよっぽど上手なんだよ。俺はおまえにすべて教えてもらって、支えられて、手を繋いでここまでの音楽人間になることができたんじゃないか。おまえ無しでは決して今の俺は存在しない。

…でもこの目の前にいる麗乃は俺の手を繋いだ麗乃じゃないんだ…

この麗乃が俺を「好き」と言う言葉を疑ってはいない。だけどそれを認めるわけにはいかないだろう?だって、俺には向こう側の麗乃が居る。
勿論こちらの麗乃が俺を好きになっても何の罪があるわけでもないんだ。この世界では俺という存在は一人なんだし、元の世界に帰れる保証だってないんだし…
だけど俺にとっての麗乃は向こうの麗乃でしかないんだ。

それでも…
抱きしめられると抵抗すらする気がなくなるのは、俺が弱いんだろうか…
顔も身体も…その匂いさえ同じで、俺を呼ぶ声も甘くて痺れるほど熱い。
時々わからなくなる。
おまえはホントウに俺の麗乃じゃないの?



今日も秋晴れで気持ちいい朝です!…しかし今後のユキは曇りのち嵐の予感!

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