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2019-09

宿禰凛一編 「HAPPY」 7 - 2010.06.21 Mon

おれさま的な…ww

7、
 慧一がここへ向かっていると知った俺は、急いで寝室に駆け戻った。
「宗二朗さん、やばいよ!俺の服頂戴!早く!」
「どうした?」
「慧一があと十分でここに来るっていうんだ。早く着替えてロビーに行かないと…」
 俺の服を持つ宗二朗さんの手からパンツを取って履こうとするが、慌てた所為か足が絡まってよろめく。
「うわっ!」
「おっと…」
 宗二朗さんが抱きとめてくれたから良かったけど、確実に床に突撃してた。
「ありがと、宗二朗さん」
「なんだよ。裸にされても動じないクセに、兄貴にはてんで弱いんだな」
「うん…」
「さっきから気になっていたが、珍しいペンダントだな」
 裸の俺を抱いた宗二朗さんは、胸のペンダントを手に取った。
「誕生日に慧から貰ったの。お守りみたいなもんかな」
「そうか」
 目を伏せた宗二朗さんは抱きとめた手をゆっくり離し、俺の服を渡した。
「俺は…兄貴のお荷物にはなりたくないんだ。宗二朗さんと反対だね。慧には企てなんて通じないよ…」
「…わかったよ。俺も一緒に行こう」
「変なこと言わないって約束してよね」
「いい歳の分別のある大人として出来るだけのことはする」
 嫌味なくニコリと笑う宗二朗さんは嶌谷さんに似ている。なんとなく他人じゃなく思えてしまうな。

 急いで着替え、二人揃って部屋を出る。
 エレベーターを待つ間、俺はしみじみと隣に経つ宗二朗さんを眺めた。
 「ついでに」と、服を着替えた宗二朗さんは、今度はネクタイを締め、ダブルのジャケットをエレガントに着こなしている。十分に貫禄もあるし、身のこなしも優雅だし、どっからみてもセレブリティに見える。社長業なんだからそれなりに見えなくちゃならないんだろうけど、俺には嶌谷さんの従弟の宗二朗さんってしか思えなくて、可笑しかった。
 くすくす笑う俺を見て、宗二朗さんは肩をこずく。
 エレベーターの中で俺は宗二朗さんに尋ねた。
「宗二朗さん、さっきの話なんだけど…裸にまでしたのにさ、なんで俺を抱かなかったの?」
「ん?…そうだな…ホントは裸のおまえに欲情したよ。俺もたいがい節操のない男だから頂こうって思ったんだ。だが、触れようとした時、おまえが寝言を言った。『梓、風船あげるよ』…だったかな」
「…」
「梓っておまえの亡くなった姉さんなんだろ?」
「うん」 
「誠から聞いていたんだ。凛一は…呼び捨てでも構わない?」
「勿論だよ」
「凛一を育てたのはお兄さんと亡くなった梓っていうお姉さんだってね…俺も、実親とは色々としこりがあってね。兄のように慕っていた誠だけが俺の味方だったから、おまえが姉を慕う気持ちがわかった。それに…」
「それに?」
「おまえさんの姉さんは現身でなくても必死で凛一を守っているんだって…感じたんでね」
「…」
 宗二朗の俺を見つめる表情は出会った頃とはまるで違う。俺を慈しんでくれる目だ。
「宗二朗さんは思ったとおりの優しい人だね。ありがとう」
 心からのお礼を言う俺の頬を掴んで「その綺麗な顔が曲者なんだよ」と、今度は憎態な言い方をする。

 エレベーターがロビーに到着する。扉が開くとフロントに慧一の後姿が見えた。
「慧!」
 振り返った慧一は少し青ざめてみえた。
 すぐに駆け寄って俺を上から下までつぶさに眺めた。
「凛一…」
 慧はそれ以上は何も言わず、口を噤んだままだった。
 怒っているのはわかっているから、俺はとりなしをしようと必死になる。
「慧、こちらは嶌谷さんの従弟の…」
「嶌谷宗二朗といいます。誠一郎からはおふたりの事を色々と伺っております。凛一くんがこちらに遊びに来ている事も誠一郎から聞いておりました。セントラルパークで凛一くんを偶然に見かけて、ランチを一緒にどうかと誘ったんです」
 宗二朗さんはランセルの名刺入れから名刺を出しながら、品のいいそれでいて他人に劣等感を抱かせないビジネスマンらしい対応で慧一に挨拶をする。
 見方によっちゃ、なんだか癪に触らないかなと、俺は心配になる。
「慧、あんね、食事をおごってもらってさ。とっても高級で美味しかったんだ」
 慧ににっこりと微笑んだが、睨み返されただけだった。
「携帯の電源はどうしたんだ」
「あ、それは…」
「食後のコーヒーに少しブランデーを入れたものを差し上げましてね。そしたら凛一くんが眠たいと言うもので…疲れているようだったのでベッドで休むように勧めました。すっかり寝入ってしまったので、携帯の電源は消しておいたんです。すいません。お騒がせいたしました」
 助太刀を買ってくれた宗二朗さんに感謝をしたが、丁寧に頭を下げる宗二朗さんに対して慧一は目を細めたまま何も言わなかった。
「慧…宗二朗さんの言うとおりなんだよ。俺、すっかり寛いで眠ってしまったの」
 怒らないでと縋るように言う俺の顔は見ず、慧一は宗二朗さんだけを真っ直ぐに見た。
「…あなたの話を信じていいのかはわかりませんが、凛一がそうして欲しいのなら…僕がこれ以上詮索する事ではないでしょう。弟がお世話になりました。さあ、凛一、帰るぞ」
「うん」
 これ以上話してもとても和やかな空気にはなれないと思ったから、踵を返す慧一の後を俺は素直に着いていった。

 ロビーを出る時、後ろを振り向いた。宗二朗さんはにこやかに手を振ってくれた。
「慧、ちょっと、挨拶してくる」
 そう言い残して、俺は宗二朗さんに駆け寄った。
「宗二朗さん」
「なんだ?忘れ物か?」
「うん、宗二朗さんに会えて良かったよ。今度は嶌谷さんも一緒に沢山話そうよ。なんなら嶌谷さんに焼きもち妬かせてもいいからさ」
「ああ、そうだな…おまえはいい子だな」
 身長差なんかそうないのに、俺の頭を撫でる宗二朗さんはかわいい。
「それ」
「ん?」
「俺の頭を撫でるの。嶌谷さんと同じだよ。やっぱりふたりは仲良しだね」くすっと笑うと、宗二朗さんは複雑な顔をした。

「さよなら、宗二朗さん。また会おうね」
 携帯のアドレスを交換した後、宗二朗さんの頬にキスをして離れた。
 宗二朗さんは苦笑いをする。
「ガキのクセになめた真似をしやがって…今度気を抜いたら本気で襲うからな」
「あはは、楽しみにしてる。じゃあね」

 急いで戻ったが慧一の姿は玄関にはなく、外へ出たら、すでに車に乗って俺を待っていた。
 運転席に座る慧一の顔は、とてもじゃないが、今から夕食でも…と、いう雰囲気ではないことぐらいは、能天気な俺でもわかるよ…






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リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ

次は慧一編「ペンテコステ」2の予定。

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