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2019-09

宿禰慧一編 「ペンテコステ」 5 - 2010.07.05 Mon

5、
 陽が昇るまで一睡もせぬまま、夜を明かした。
 胸の中にぐっすりと眠る凛は、俺の腕を離そうとしない。
 凛の顔にかかるクセのない髪をそっと掬って、額にキスを落とした。
 ずっと…凛一が赤ん坊の頃から、こうして凛を胸に抱き寄せ、無心に眠るこの子の寝顔を見てきた。
 少しも変わりのない形なのに、俺たちの関係は百八十度違ったものになってしまったんだ。
 お互いに何も着ていない密接した裸の肌の温もりが、俺にはまだ半分信じられない感覚のままで、何度もその実態を確かめずにはいられなかった。
 
 凛を抱いた。
 凛の中に自分を注ぎ込んで、何度も高みへ追いつめ、舞い上がった。
 俺の名を呼ぶ凛一の声はこれまで聞いたこともないほどに、必死で、請い、求め、感じるままに震える叫びも愛おしく…エロティックで官能的な肌は吸い込まれるほどにしっとりと滑らかで、密接したまま離れがたくて仕方がなかった。
 俺を見る凛の濡れた瞳が狂おしい程に、欲情に駆られているのを感じた。それ以上に俺も求めていた。我を見失う程に凛を食い尽くしたかった。
 だが、そこには邪心はないと誓える。
 今までの溜め込んだ嫉妬心や独占欲の妄執、汚らしい猥雑なものすべてを取り払った欲望だけで、凛一を求めた。そうでなければ、俺達はすべての倫理から救われないからだ。

 …倫理…血の繋がった兄弟同士で愛し合うことは禁忌でしかない。それを怖れていた。
 怖れてはいたが、真実の愛である以上、そんなタブーなど下らないものだと自分自身に言い聞かせていた。
 だがどこかで畏れていたんだ。まっとうな恋愛ではないと…
 しかし、凛を抱いた今得られたものがある…凛とのセックスは決して後ろめたいものではなく、これは正々堂々とした『純愛』であると…
 血の繋がりがあるからこそ、凛一を選び、愛しぬいた。
 これから先、俺達兄弟の関係を世間がどう言おうと、微塵たりとも疚(いや)しい気持ちになる必要はないんじゃないか。少なくとも凛をくだらない邪推の目からは守らなくちゃならないにしても、この「愛」を否定する気持ちは微塵も沸き起こらない。

 …凛は満足してくれただろうか…
 どれだけ求めても少しも怯まなかった。
 慣れた娼婦のようでもなく、かといって無垢な天使でもなく、凛一は凛一でしかなかった。それが俺には嬉しくて…たまらなかったんだ。
 俺の欲望をすべて受け入れ、飲み込まれながらも懸命に俺に与えようとする。
 拙いとは言わないまでも、若さだけで味わおうとする身体だ。多少荒削りでもいいさ。こいつが俺を求める限りは、精根尽き果てるまで付き合うだけだ。
 
 俺の贈ったペンダントが朝日を受けて凛一の胸元で輝いている。
 俺は自分の首からペンダントを外し、凛のそれと重ね合わせた。
 太陽の光に当てたモザイクのペンダントは光を通し、シーツに赤い薔薇を描き出した。

「永遠の愛を誓うよ、凛。どんなことがあろうとも、おまえを幸せにするから…」
 俺はまだ眠りから当分覚めそうもない凛の口唇に誓いを立て、ゆっくりと抱きしめるのだ。


 眠る凛一をそのままに、俺は早朝仕事へ出かけた。
 凛の身体のことも心配だったが、仕事だから仕方がない。
 それも相当にきついスケジュールで、先方との打ち合わせから、請負会社の仲介人との連絡、プラン説明など、目が回るようだった。
 それでも合間合間に昨晩の凛との営みを思い出し、心に灯火が点る。
 やんわりと優しい気持ちになれる。
 …こんな柔らかな時間を今まで感じたことがあるのだろうか…と、不思議になる。
 自宅に帰っても凛一は居ないのではないだろうかと、忙殺する時間との競争の中、凛一との事だけが夢幻(ゆめまぼろし)ではないのかと…そんな感覚にさえ陥るのだ。
 
 夕方、猛スピードで自宅へ帰った。
 凛一が待っていると思うと、居ても立ってもいられない。
 口元が緩んでしまう。きっと新婚の夫はこういう気持ちなんだろうと思う自分が、滑稽で仕方ない。だが、その気持ちに偽りは露ほどもないものだから、それさえ愛おしく思えるのだ。
 「どうかしている」と、口に出して笑った。

 駐車場に愛車を片付け、小走りに玄関の戸を開けた。
 リビングの奥のキッチンから顔をのぞかせた凛一が「おかえり」と、笑った。

 目の奥が喜びで痛くなった。
 必死に声が上ずるのを抑え、「ただいま」と、俺は応えた。






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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ

大好きだよ


慧一至福の時…しかしまだ長い…春休み終わらんなあ~(;´Д`)

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