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2019-09

君の見た夢 11 - 2008.11.16 Sun

5. 思いの果てに


ユキがこの腕に抱かれて放つ瞬間に出す声は必ずといっていいほど同じ名前で、それは俺と同じ韻を持っていても、同じ顔形であっても、俺ではないことはわかりきっていた。
その「麗乃」と呼ぶ声は、余りにも甘く、切なく狂おしい程で、そいつを呼び寄せようと必死すぎて…
責めようにも俺にはその資格はない。

由貴人が向こうの住人である限り、こちらの世界に存在する意味などないと考える限り、その想いを解きほぐす術はない。
それでも俺の想いは尽きることなく、この人を守り、愛したいと祈る。

純粋なる狂気を持つこの人は、俺さえもその渦の中に引き込んで溺れさせる。俺はそれを最上の喜びと感じるんだ。誰にも邪魔はさせない。…向こう側の奴にも…


或る日、気分転換にと映画好きの木久地に誘われたユキは映画に出かけ、ふたりの帰りを岬ん宅で待つことにした。

「何時頃帰るって?」
「映画見終わったらすぐ帰ってくるって言ってたからな。昼過ぎにはここに来るだろ」
「じゃあさ、久しぶりに四人でご飯食べよ」
「うん」
「で?」
「えっ?なに?」
「どーなってんの?お二人は」
「…ああ」
「うまくいってるの?」
「いってるといえば、いってるんだろうケド…」
「俺さ、思うんだけど…」
「えっ?」
「おまえに前聞いたよな。向こうの香月麗乃とユキの関係の事」
「うん」
「おまえはそれでいいわけ?これって完全に…おまえの方が負けなんじゃねぇの?」
「…」
「ねぇ、ユキが求めてるのはおまえじゃないって事だろよ。そこんとこわかってる?…そんなんでおまえ、幸せとか感じてるわけ?」
「…幸せとか…望んでるんじゃねぇよ」
「じゃあ、なんで…ユキは、ユキはどうすんだよ。おまえの所為であいつ混乱してねぇの?普通なら悩んだりするでしょ?つーか俺にはもう目一杯打ち負かされてるように見えたよ、さっきのユキは…
おまえさ、あいつをどうする気なの?」
「ここに…居る限りは…俺は守ってやりたい。どんなに苦しかろうが、あいつが求めるなら…いや、俺も求めてるのは一緒だけど…苦しいのを癒せるのが、それが…繋がることなら、俺は…すべてを与えてやりたいと思ってる」
「このままで…ユキがこのままこの世界にいる保証なんてひとっつもないんだぜ?…それよりユキがこれからも居る保証の方が少ない。それでもおまえ、大丈夫なんか?ユキが帰ったら…おまえどうすんだよ」
「…」
「おまえだけじゃなくて、あいつも傷つくんじゃねえのか?その時おまえは何も出来ないんだぜ?」
「…わかってる」
…わかっていた…このまま静かに時間が流れるなんて思っちゃいない。ただどうしようもないんだよ。
あいつへの想いは先の事なんてどうでもいいって思えるくらい…
「麗乃…」
「ずっと…好きでいるよ。想いが消えない限りはね」
はあ~と深く溜息を付いた岬が見慣れた顔で仕方なさそうに笑う。
「…おまえがそこまで言うんなら、俺は何も言わねぇけど…つらくなったら聞き役ぐらいはできますから、遠慮なく言いなさい、レイくん」
「ありがとな」

昼過ぎ、木久地と由貴人が帰り、四人で遅い食事を取った。四人の会話は前と同じように陽気で他愛もなく、何の気兼ねも要らない幼馴染みの会話でしかなかった。いつも見せるユキの陰も心してか見せないようにしているのが俺には余計つらく思えたりするのだが、できるだけ見ないようにした。
帰り際、木久地が俺に耳打ちした。
「あいつ、必死で自分の居場所を探してる。大事にしてやれ」
「…」
自分の居場所?
それはどこにあるっていうんだ…
あいつの居る権利を奪ったこの世界に…


帰り道、例の土手を歩く。
夕焼けに少しだけオレンジ色に混じりあっている空との境界線の青さが美しく、あまりに心打たれて目を細める。隣で「黄昏の情景は胸がつまるね」と呟いた。そんなユキの顔を見つめ、その手を取る。掴んだ指先から感じるぬくもりに、今だけはこの上もない幸せを感じている俺が居る事を、知った。

あの桜の木の下まで来るとふたり手を繋いだまま、木に凭れた。
桜の花はもうない。かわりに新緑の若葉が全てを覆い尽くして、葉っぱが揺れるたびにキラキラと舞う光に照らされているユキの横顔を見つめた。


目を上げると輝く光の洪水
縮まる瞳孔の中に
ゆるぎない力と愛で
君を呼ぶ…


知らず知らずのうちに口から出た言葉にユキは驚き
「言葉は麗乃を導くんだね」と、笑った。
俺は唯おまえを見つめ続ける。
笑った顔が次第に翳り、口唇が微かに震え、光を受けた薄茶色の目が次第に潤むのを見とめ、そしてユキは俯いた。

泣かせているのは俺?それとも向こう側の俺なの?




● COMMENT ●

きれい

さすが絵描きさんの書く小説だなと思いました。
情景描写はやっぱ色が大事ですよね。
見えましたもん、夕焼けが。

それからブログ村登録&カスタマイズ、ご苦労さまです。
私にできることがあったら言ってくださいね~。

要領が判らなくて試行錯誤でやっております。
トップもこれでいいのか?まだ足りないものはないのか?って、不安になってます。
サクさんの方で気づいたことがあったら書き直したり、書き加えたりして下さい。
よろしくお願いします。

ブログ村も本当はランクはあまり気にしてないけど、観てくれる人が増えるなら、登録したほうがいいのかな?って思ったけど…結構葛藤はあるの。

私も

本宅のほうはランキングに参加してますけど、最近は抜けたいなぁと思います。
でも、そうすると訪問者が減っちゃうかも…と思って、今は仕方なく参加してるような状態です。
トラコミュをうまく利用すれば、ある程度は見にきてくれる人がいるかもしれないですけど。
とりあえずここはカウンターを設置して様子を見てみるとか。
それからTOPだけじゃなくて、プラグインにもブログ村のバナーを置いたほうがいいですよね。
そのへんはあとで私がやっときますね。

4649

おねがいします~8823~


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