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2019-09

宿禰凛一編 「HAPPY」 9 - 2010.07.08 Thu

慧凛cp


9、
 慧一の肌は俺のより幾分冷たくて、焦った所為か少々ほてり気味の俺の肌を冷ましてくれた。
 俺の四肢も絡みつく指先も、慧一は丹念にひとつひとつ愛撫し続け、宝物のように扱ってくれる。
 慧一の口唇が触れるたび、欲が乱されていくのがわかるから、堪らなくて口唇を噛んだ。
 要するに…
 どう身構えようと、どんなに媚びようと、慧一には到底敵わない。
 大抵の相手には通じるはずの色仕掛けだって、見破られるに決まっているんだ。
 そりゃ、俺のDNAはすべて同じとは言えないが、慧一と同じようなもんで、そして俺は慧一に育ててきてもらったのだから、変な小細工なんか通用するはずもない。
 だから、
 俺に出来うる精一杯の誠実な愛でもてなそう。
 慧一をずっと愛してきた。
 求めてきた。
 それだけは誤魔化しようもない事実だ。

 BGMなんか無かった。
 お互いの名を呼ぶ声と、身体の中の音と、たまらなく啜りあげる俺の声が響いた。
 目を開けても閉じても映るのは慧の顔ばかりで、その表情が嬉しいのと切ないのがごっちゃになってて、どうしようもない。
 俺は慧の思いに応えられているのだろうかと、不安になる。だけどそれさえも快楽に流されてわからなくなる。
 
 もういいや…なにがなんだかわからんが、流されるのも悪くない。溺れるのもたまにはいい。
 肝心なことは、ただそこに「愛」があること。
 そうだろう?…慧。


 目が覚めた時には、慧一はとっくに仕事に出かけている時間で、俺ひとりベッドに寝ていた。
 裸のままだったが綺麗にシーツも取り替えられているから、慧が全部やっておいてくれたのだろう。
 俺は身体をゆっくり起こして具合を確かめた。
 全体がだるいし、なんか奥が痛いけど、まあこんなもんだろう。なんせ久しぶりだもんな。
 頭を掻いて、昨日の一切を思い出す。

 割と簡単に慧一がその気になってくれたのは良かったが、あれほど凄まじいとは予想してなくて、正直俺も動揺した。前に紫乃が慧一はベッドではSだと言っていたが、俺相手には気を使ってくれたのだろう。
 酷くはされてないが…俺とは比較にならんほどテクニックも容量も上等で、とても敵わない。
 あれが陶酔というのなら、今までのセックスは何だったのだろう。
 とにかく過去の奴らと比べても、慧とのセックスは引力が強すぎる。
「まいったな…誘惑するつもりがやぶ蛇だな。こっちが抜けられないや」と、舌を出す。

 シャワーを浴びて、一通りの家事をこなしていたら、隣の飯田さんの奥さんがやってきた。
 まさかあの声が五月蝿くて眠れなかったなどと、苦情じゃないだろうなあと苦笑しながら応対する。
 ここから30分ほど先の日本輸入専門のスーパーに行くから、一緒に行かないかという誘いだった。
 二つ返事でOKし、買い物に出かけた。

 夕食の支度をしていると、慧一が帰ってくる。
 いつもより帰りが早いのは、きっと昨晩の所為だろうと、思った。
 俺の顔を見た慧はちょっと気まずい表情で目を逸らし、照れていた。それが可笑して笑おうとするが、その気持ちがこちらに伝わってしまった。胸が熱くなって言葉が出ない。
 慧一の想いは俺よりもずっと深く、何重にも重なり続けている。
 今の俺にはそれが今まで以上に理解できる。
 俺は慧一の想いを充分我が身に刻み込まなければならないのだろう。

「ねえ、このカレーどう?」「…日本で食べる味に似てるね」「だろ?今日、お隣の飯田さんと一緒に日本専門店に行ったら、いつも使ってるルーがあったからね、買ってみた。やっぱりカレーはルーで決まるもんね」「おいしいよ」「良かった~」
 
 変わらぬ食卓での会話もどことなく、ふんわりとした空気が漂っていて、俺も兄貴も顔を見合わせては少し恥らいながら笑う。

「凛」「なに?」 「身体…大丈夫か?」「は?…なんともないってメールしたじゃん」「そうだけど…ちょっと無理しすぎたって思ってさ」「慧ってやっぱり大人だと感服した。すげー良かったからさ、今夜もやろう」「え?」「まあ、食べて食べて」「急がせるなよ」
 おざなりに返事を濁した慧一は残ったカレーを口に入れ、俺より上手いよと、カレーを褒めてくれた。

 その夜、俺は慧一の部屋に夜這いに出向き、呆気に取られる慧のベッドへさっさと潜り込んだ。
「おまえは…こんなことばかりして」
「だって、あと一週間も一緒にいられないんだよ。しばらく会えなくなるんだよ。ふたりで居る時は飯以外はセックスしていたいね。慧はそうじゃないの?」
 裸の冷たい肌を摺り寄せる俺を抱き寄せ、慧は「おまえが帰った後を考えると…俺が呼吸を続けられるか不安でしょうがない心持ちだよ」と、苦笑する。
「じゃあ、学校辞めて、ここに住もうかな~」
「出来ないことを言うんじゃない。おまえも俺もまだ沢山のものと触れ合わなきゃならないよ。ふたりだけで閉じこもっているわけにはいかないんだからね」
「わかってるよ。でも…だからいいでしょ?俺が帰るまではふたりきりで閉じこもっていようよ」
 慧一の手が俺の腰を掴まえる。それだけで取り込まれる。慧の口唇が俺の現実を封印する。
 慧は俺の前で容易く跪くけれど、その実、俺が慧に支配されているじゃないのか?
 こんなにも身体をバラバラにされ、きちんと元の形態に構築していくんだからな。
 だから建築家なのか…

 俺はクスリと笑う。何が可笑しい?と慧が聞く。なにも…ただ…慧は俺をうまく育てたもんだと思ってさ。元がいいからだろう。元は同じだ。母さんと父さんの遺伝子だもん。ああ、そうだな…同じ血を分かち合うんだ、俺達は。

 何度だってしたい。
 ずっと触れていたい。
 自分以外の誰かに自己を昇華させられたい。
 それは慧一でなければならない。

 そうでなければ、俺は生きる道を見失う気がする…

 ミナ…君はこんな俺をどう思うんだろうね…


 



凛一ベッド


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