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2019-11

宿禰凛一編 「HAPPY」 13 - 2010.08.17 Tue

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13、
 法要が終わり、家族四人で街から少し離れた旅館に泊まる。
 親父達とは部屋は別だが、食事は別室で一緒に取った。
 和やかに夕食を取りながらの最中、父は突然俺に今日の式を整えた労をねぎらい、畏まって礼を述べた。
 父にとって実家の敷居は高く、あまり近づきたくないそうだ。
 父の母親が早くに亡くなったことも関係があるらしい。
 俺は母親と梓の墓を慧一と一緒に作りたいと言うと、父は少し考え、わかったと賛成してくれた。
 賛成してくれただけではなく、建物は俺たちに任せるから、土地は自分がなんとか探し購入すると言う。
 俺と慧一は見晴らしが良く、星空が綺麗に見える場所を探してくれと頼んだ。
 和佳子さんが親父の隣りから、「私にも協力させてね。すごくステキな場所を見つけるからね」と、朗らかな笑みをみせてくれた。

 翌日、午前中は親戚への挨拶回りに費やし、午後からは和倉温泉まで足を延ばし、有名な宿に宿泊することになった。
 水入らずの家族ごっこも、大体2日が限度で、ここいらになると両親から逃げたくて仕方が無くなる。
 すると、ジャストタイミングで慧一が良い話を持ってくる。
 ユニオンシティの社宅でお世話になった飯田さん家族が夏の休暇に日本に帰国して、那須のペンションで過ごそうと予定したはずが、急に私用で行けなくなったらしいのだ。
 折角予約していたからもし良かったらとキャンセルする前に、慧一に連絡をしてくれたのだが、俺は喜んで二つ返事でOKを出した。
「慧とふたりきり?」
「うん、家族3人で三日間の予定だったんだが…飯田さんの奥さんが、是非凛ちゃんと一緒に楽しんでって言ってくれているらしいよ」
「マジで?超嬉しいじゃん。じゃあ、飯田さんには一杯お土産を買わなきゃならないね、慧」
「そうだな…親父達には悪いが、俺も凛とふたりになりたいのが本音だよ。あの人達の前でイイヒトでいるのも疲れるからな」
「俺は親父も和佳子さんも好きなんだけど…あのふたりって周りにお構い無しにいつも惚気てるんだもん。付き合うこっちの身にもなれって」

 親父たちには事の成り行きを説明し、翌日、朝早くに慧とふたり和倉を発った。
 鎌倉まで戻り、すぐに新幹線で那須まで直行。那須塩原駅からは車を借りて、目的地まで急ぐ。
 なんだか変な気がした。
 誰も知らない土地でないと、慧とふたり、睦み合うことは何かが咎める気がした。
「まるで逃避行みたいだ」と呟く俺に
「何から逃げるんだ?」と、意味深に慧は言う。
「…そうだね。俺たちを否定するものからかな…慧は?」
「俺は逆かな。凛を世間から隠して俺だけのものにしたい…独占欲のかたまりだからね」
「それ、嬉しいよ。独占欲って自分のものだけにしたいってことだからなあ。恋人的関係において根源の感情だろ?俺も慧を独り占めしたいって思うしね」

 白樺の木立に囲まれた川のせせらぎが聞こえる静かなペンションだった。
 俺たちの部屋は母屋とは別に立つ別館のメゾネットで、二階はベッド、長期ステイ用にか、一階はキッチンやダイニングテーブルまで設備されている。
「ステキな部屋だね」
「飯田さんに感謝しないといけないな」

 食事は本館で取るのだが、本格的なフランス料理で野菜のテリーヌやコンフィなど、オリジナルの自然食が多い。雄大な自然の中で貸切の露天風呂も格別だ。だが、最大の目的は慧と営むことであり、それさえ出来れば、後は背景を彩るものでしかなかった。



りんけい


 求め合う行動は、イコール肌を重ねるという事以外あるのだろうか。
 とにかく渇望しあっていたのは間違いない。
 コテージであることも、蝉や虫達の大合唱であることも俺たちには幸いした。
 食事以外はお互いの身体から離れようとしなかった。貪りあうとはこの状況を指すのだろう。
 他人の介入は勿論、あらゆる世間の情報など一切切り離して過ごした。
 携帯もTVも音楽すら、必要なかった。
 慧は俺に最大限の快楽を与えてくれる。勿論俺も慧に与えようと努力する。
 しかし、経験や歳の違いというものだろう。与えてもらう割合は俺の方が遥かに多い。
 ミナとやる時、俺はここまで快楽や安心というものを与えてやれているのか少し不安になる。
 受けと攻めの立場が違うといっても、俺にとっては「愛する者」と「セックス」をするという意味に違いはないのだから。
 慧は「俺の立場から言うなら、おまえが他の奴と寝るのは嫉妬もするし、許しがたい話だよ。普通なら浮気をされた奴となんのわだかまりも無く付き合い続けられるだろうか。無理に決まっている。だけど、凛への想いはただの愛や恋ではないからね。数え切れないくらいの感情が折り重なって『凛への愛』という形を作っているんだ。結局、幸か不幸か、おまえが何をしても、手放すよりマシだと思わせてくれる」
「…兄貴はトンだ選択をしてしまったね。俺はきっと貧乏クジだよ」
「いいさ。どんな貧乏クジでも凛は俺の弟だから…切れることのない絆であり、こうして愛し合うことができる…これ以上求めたら運命に申し訳ないよ。凛が何をしても俺は凛に背かない。約束するよ」
 
 絶対的な愛を捧げる慧一に、甘えている俺はやはりロクな人間であるはずもない。
 そう言うと、慧一は凛は人間ではないのだろうと笑う。まだ俺の背に羽は見えるのかと問うと、勿論、だが昔は6枚の羽だったのが近頃は透明なより大きい二翼になった気がする。これは何を意味するのだろうかねえ…俺にわかるわけもねえな…。本人に見えないとは残念な話だ。慧、人に言うんじゃないよ。兄貴が狂人だと思われるのは嫌だからね。すでに弟に狂っている時点で常人ではあるまい?しかし、ない物の証明など誰にもできないものだから凛の羽だって無いとは言えないはずだろう。…悪魔が証明しない限りはね…

 蜜月とも言える濃厚なバカンスはあっという間に過ぎた。
 慧を成田へ送り出す頃には、離れがたくて泣きそうになる。
「このまま付いていきたい…」などと泣き言を言う俺を、慧一は人目もはばからずしっかりと抱き締めてくれた。
「欲しがって、もてあましてしまう時間があるから、お互いの愛が見極められるのかもしれない。俺も寂しいよ、凛。体育祭には来られないけれど、頑張れよ」
「ああ、今年は応援団には出ないけれど、ひとりで剣舞をやるんだ。前の学長直々に指導を受けるんだよ。楽しみだ。嶌谷さんにビデオを撮ってもらうよ」
「前の学長って…たしか嶌谷さんの父親が友人だと伺った気がするよ。聞いてごらん」
「へえ~そうなの?今度、聞いてみるよ」

 彼方へ消える慧の飛行機を見送って、その足で嶌谷さんに会いに行く。
 慧と別れた後は、いつだって独りで居るのが耐えられない。
 とことん俺は堪え性のない人間だ。
 それを言うと嶌谷さんは「凛だけじゃない。誰だって好きな奴と別れた後は寂しさが募るもんだよ。きっと慧一くんも空の上で泣いているのさ」
 そうは言っても、嶌谷さんの腕に抱かれて、慰めてもらう俺はやはり甘ったれと罵られても反論はできないね。




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凛一1




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